中高年の方のめまいは脳梗塞が原因の場合があり注意が必要です。めまいが起こったら、安易にメニエール病だろうなどと考えて様子をみていると、大変なことになることがあります。
めまいには大きく分けて2つのタイプあります。ひとつは「回転性めまい」で、目の前や自分自身がぐるぐる回っているように感じるものです。もうひとつは「浮動性めまい」で、フラフラして真っ直ぐ歩けない、雲の上を歩いているような感じがするというものです。
めまいの原因には大きく分けて2つのタイプがあり、平衡感覚を司る三半規管や前庭の病気で起こる「耳が原因」のタイプと、体のバランスを制御する「脳が原因」のタイプとがあります。そのため、病気が耳にあるのか、脳にあるのかを十分に検査して調べる必要があります。
一般に「耳からのめまい」は回転性であることが多く、「脳からのめまい」は浮動性であることが多いのですが、脳の異常でも、急激に起こった場合、それに伴って起こるめまいは回転性であることもしばしばです。
結局、心配なめまいとは?もちろん脳が原因で起こるもので、突然に起こった中高年の方のめまいでは、脳幹部や小脳へ血液を送る椎骨動脈や脳底動脈の血液の流れが悪くなって起こる場合がしばしばです。特に、脳梗塞の起こりやすい時間帯、すなわち朝起床時に起こっためまいでが脳梗塞の場合がありますので、注意が必要です。
もちろん、めまいと同時に「手足に力が入らない」、「手足がしびれる」、「ろれつが回らない」、「頭痛がする」、「意識を失う」などの症状がある時は、恐い脳卒中からくるめまい、なかでも脳梗塞を強く疑う必要があります。しかし脳梗塞によるめまいでも、めまい以外に他の症状を伴わないこともしばしばで、めまいだけの場合でも油断はできません。
慢性のフラフラ感に悩んでおられるお年寄りの方はとても多く、40%近くの方が常時、めまい感を自覚しておられるという報告があります。あるいは65歳以上の人の30%がフラフラ感を訴えていた(米国での調査)とも言います。頭がフラフラすると言う訴えの中には、めまい、立ちくらみ、歩く時のふらふら感、眼の前が暗くなる感じ、頭がフーとする、あるいは頭がボーとするような感じなどの症状が含まれます。
もともと、年齢とともに、視力が低下してきますし、下肢の筋力なども落ちてきます。さらに耳の奥にあって平衡感覚の維持に関係している前庭(ぜんてい)、あるいは平衡感覚の情報を伝える脊髄の機能なども弱くなり、年をとると体のバランスがどうしても悪くなってきます。そんなことで、ちょっとしたことでもフラツキやすいのです。
年配の方のめまい感には、複数の原因が関係していることもしばしばで、体のバランスが悪くなってきていることに加えて、脳の血液の流れが悪くなっている場合、首の筋肉の緊張異常、血圧の薬を飲んでいる方で血圧の下がりすぎた場合、うつ状態などが原因となっている場合などがあります。
脳の血液の流れが悪くなると、ふらついたり、めまいが起こったりします。
年配の方のふらつき感の多くは、脳の動脈に動脈硬化が起こって、動脈が細くなってきたことによって、脳の血液の流れが悪くなって起こる場合が多く、こういった病態を慢性脳循環不全と言います。脳の血液の流れが悪くなってくると、最初のころは、頭を動かしたり、急に立った時などにフーとするような症状が起こるようになってきます。こういった方に、脳のCTやMRIなどの検査を行ってみますと小さな脳梗塞などの異常が見つかることが多く、そんなことからも、脳の動脈硬化による血液循環の悪化がふらつきの原因であろうと考えられています。
もともと脳には血液の流れを常に一定に保つための脳血流の自動調節能と呼ばれる安全装置が備わっています。その働きがありますので、少しぐらい血圧が上がったり、下がったりしても脳へ流れる血流の量が増えたり、減ったりしないようになっているのです。お年寄りの脳では、この脳血流の自動調節能の力が低下していることが多く、わずかに血圧が下がっただけでも脳血流の減少をきたすことになり、そのせいでフラツキ感を生じます。さらに動脈硬化をきたして細くなった脳の動脈では、いっそう血液の流れが悪くなりやすいのです。
なお、血圧が高いのを心配される方は多いのですが、血圧の下がりすぎを心配する人は案外少ないようです。しかし、血圧の薬を飲んでいる方では、時々、血圧を測ってチエックしておきませんと、知らないうちに血圧が下りすぎている場合があります。血圧が下がりすぎた時、最初に出る症状はフラフラ感です。
実は、首の筋肉には、体のバランスを保つうえで大切な平衡感覚に関する情報を調べて、それを脳へ伝えるという機能が備わっています。「肩こり」、「首こり」のひどい方では、首の回りの筋肉の緊張が強くなっているせいで、異常な情報が脳に伝わることになります。そのため「めまい」や「フラフラ感」が起こることがあります。
首の筋肉は肩や頭とつながっていますから、首の筋肉が緊張しているということは、肩や頭の筋肉も緊張していることになります。肩の筋肉の緊張は「肩こり」、頭の筋肉の緊張は「頭痛」「頭が重い」という症状になって現れます。
このタイプの頭痛を緊張型頭痛と言い、あらゆる頭痛の90%を占め、頭がしめつけられるように痛むのが特徴です。この緊張型頭痛に伴うめまい感はとても多いようで、フラッとする、あるいはフラフラするようなめまい感が主に動いた時に起こります。
現代社会では、うつ状態の方が増えています。そのうち、精神面でのうつ症状はほとんど目立たないのに、身体症状が前面に現れる仮面うつ病に注意が必要です。めまいは、不眠、頭重感とならんで、仮面うつ病の三大症状です。その際に起こるめまいはフラフラ感が多いようです。
頭の位置を変える、すなわち 横になる、起き上がる、寝返りを打つ、見上げるために頭を後ろに反らすなどの動作で起こるめまいを、頭位変換性めまいと言います。
このタイプのめまいで有名なものが耳が原因で起こる「良性発作性頭位変換性めまい」です。このタイプの回転性めまいが起こると驚きますが、害はありません。一方、注意しておかなければならないのが頭が原因で起こる頭位変換性めまいです。
まず良性発作性頭位変換性めまいについて説明します。この病気は、頭の位置を変える動作によって回転性めまいが起こりますが、めまいは5?10秒、長くても十数秒で消失し、1分間も続くことはありません。また、何回か同じ動作を繰り返していると、だんだん軽くなるのが特徴です。また耳鳴りや、聴力が失われること(蝸牛症状)はまったくありません。めまいは頭を動かさないと起こりませんし、めまいの発作とめまいの発作の間にふらつき感などの浮動性めまいが起こることもありません。
この病気は、普通、数週間で自然に治まります。耳の中にある内耳の前庭器官(ぜんていきかん)は、頭が地面に対してどのような位置にあるかを感じるための機能(平衡機能)をもっています。良性発作性頭位めまいは、この前庭器官に異常が生じたために起こる病気と考えられています。
めまいに関係する前庭神経核(ぜんていしんけいかく)は、脳の中の脳幹部(のうかんぶ)というところにあります。心臓から脳への血管には、2本の内頸動脈(ないけいどうみゃく)と2本の椎骨動脈(ついこつどうみゃく)とがありますが、この前庭神経核への血流は椎骨動脈からきているのです。そこでこの椎骨動脈の血流が悪くなるとめまいが起こります。これを「椎骨脳底動脈血行不全症 ついこつのうていどうみゃくけっこうふぜん」と言います。
この椎骨動脈の血流が悪くなる原因には、いくつかの原因があります。椎骨動脈は頭の中に入ってから脳底動脈という動脈につながっていますが、ひとつの原因としては、この椎骨動脈から脳底動脈にかけてのどこかに、動脈硬化のせいで狭いところが出来ますと、それが原因で、時々、脳への血液の流れが悪くなって「めまい」が起こることがあります。これは一過性脳虚血発作のひとつと考えられ、「脳梗塞の前ぶれ」の可能性もありますので注意が必要です。
もうひとつの原因ですが、この椎骨動脈は、心臓から出て脳に行くまでの間に、頸椎の横突起孔というところを通っています。首を回転したり、過伸展した場合に、老化現象のせいで頸椎にできた骨の飛び出しなどがこの椎骨動脈を圧迫し、そのせいで血流が悪くなってめまいが起こることがあります。
最後に、これは椎骨動脈にかぎりませんが、年配の方では、頭の血管が動脈硬化を起こし全体に狭く細くなってきます。一般に、脳の血液の流れが悪くなってきますと、ふらついたり、めまいが起こったりします。脳の血液の流れが悪くなった状態では、振り向いたり、うつむいたりする頭の動作、あるいは急に立った時などに、フーとなったり、ふらついたり、めまいが起こったりします。このような状態が続いているうちに脳梗塞を起こす方があり、これも「脳梗塞の前ぶれ」の症状と考えた方がよいでしょう。
ゴルフのあと起こった頭痛のうちには、脳動脈解離による場合がありますので注意が必要です。これはスイングの際に、首を急にひねったことにより頸椎の中を走る椎骨動脈が解離(血管が裂ける)することによります。
この椎骨動脈解離は、ほかに、「急に振り向いた拍子」、「カイロプラクティックで施術者にひねられた」場合にも起こることがあります。動脈解離とはどんな病気なのでしょうか。動脈の壁は内膜、中膜、外膜の三層構造から成り立っています。この動脈の壁が層と層の間や、層内で裂けて、血流が動脈の壁の中に入る状態を動脈解離と呼びます。動脈壁に入り込んだ血流が、裂けた動脈壁の内腔側を内腔に向かって、あるいは外腔側を外側に向かって押すため解離した部分の動脈の外観は膨らみますが、これを解離性脳動脈瘤と呼びます。一方、解離を起こした動脈の内腔は狭くなって、この狭窄が高度になれば一過性脳虚血発作を起こしたり、詰まって脳梗塞を引き起こしてしまうことがあります。
また薄くなった動脈の外側壁が破綻すれば、出血(多くはくも膜下出血)を起こすことになります。動脈解離を起こした場合、たいてい急に項部(うなじ)や後頭部の痛みが起こりますので、こういった動作の後に、後頭部の痛みが起こった際には注意が必要です。
頭を打った後、何カ月かして忘れた頃に、頭の中に出血してくることがあります。この出血のことを慢性硬膜下血腫と言います。
慢性硬膜下血腫とは、脳の表面を被う硬膜とクモ膜との間に出血してできた血腫(血の袋)が脳を圧迫して起こる病気です。頭を打ったことが原因になって、しばらく時間が経ってから起こることが多いのです。ひどく打った時はもちろんですが、頭を「机のかどでコッンと打っただけ」などの軽い打撲、「しりもちをついただけ」などの軽い衝撃で脳が揺さぶられて起こったりすることもあります。
脳と脳の表面にあるクモ膜との間を硬膜下腔と言いますが、年配の方では、脳が萎縮してきていて、ここに元々隙間ができていることが多く、それで、ちょっと頭を打っただけといった外傷でも、出血が起こりやすいのです。またアルコール多飲者に多いのですが、これは長年の飲酒により脳が萎縮していること、アルコールにより肝臓が悪くなって、そのせいで出血が止まりにくくなっていること、酩酊状態でひっくりかえって頭を打つ機会が多いことなどがその原因と言われています。
症状としては「頭痛」が多いのですが、「物忘れ」などボケ症状だけのことや、脳卒中に似た半身麻痺で起こる方もあります。年配の方、特にアルコールをたしなむ方では、ちょっとした衝撃による「慢性硬膜下血腫」に注意したほうがよさそうです。
大腿骨頚部骨折とは、太ももの骨(大腿骨) の脚の付け根、股関節に近い部分の骨折です。骨粗鬆症と関連し、高齢者の骨折のなかでは最も頻度の高いものです。日本では年間約10万人の人がこの骨折を起こし、骨粗鬆症にかかりやすい女性は男性の3倍の発生率となっており、高齢化が進むにつれて今後もさらに増えていくものと予想されています。
この骨折の95%は転倒により起こります。転倒によることが多いといっても、若い人では起こりえないような軽い力(つまずく、ベッドから落ちるなど)で起こることがほとんどです。特に原因が思い当たらず、いつの間にか骨折していたということも3%から5%の方に見られます。
大腿骨頚部骨折を起こすと、骨折した直後から脚の付け根の痛みがあり、歩くことができなくなります。しかし骨折のタイプや程度によっては、骨折直後は痛くなかったり、立ち上がったり歩いたりできてしまう場合もあります。また脚の付け根ではなく膝が痛くなることもあります。また認知症のある方の場合、骨折にしばらく気づかれないこともあるので注意が必要です。
この骨折は、放っておいても骨が再生されるということが無いため、手術をしないかぎり元の機能を取り戻せないというやっかいな性質を持っています。一旦、大腿骨頚部骨折になると寝たきりになる可能性が非常に高くなり、長期間のベッド生活を続けると、肺炎や膀胱炎などの余病を併発し、治療が遅れると、生命にも危険が及ぶので注意が必要です。
高齢化社会を迎え、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にかかる方が増えています。骨粗鬆症とは、骨からカルシウムが抜けて、鬆(す)が入ったように骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなる病気です。骨がスカスカになると、わずかな衝撃でも骨折しやすくなり、しりもちをついた程度で骨折することがあります。特に高齢の女性は骨粗鬆症にかかりやすいので、注意が必要です。
骨折という言葉からは我慢できないような激しい痛みを想像しますが、「転んだ後、腰や足の痛みが続く」「腰痛が続いて腰が曲がってきた」、高齢者でこんな症状がある時は、腰椎圧迫骨折が知らない間に起こっていることがあります。腰椎圧迫骨折とは腰椎の骨が圧迫されて、つぶれるような形で折れることをいい、第11〜12胸椎と第1腰椎の胸腰椎移行部によく起こります。骨折というと枯れ枝が折れるように、ぽっきりと折れるのを思い浮かべると思いますが,骨折にはいろいろな形があります.圧迫骨折は,背骨(脊椎)に垂直方向の力が加わることで起こり、ケーキの入った箱を上からつぶすと変形することを想像してもらうとわかりやすいと思います。
ヘルペス(帯状包疹 たいじょうほうしん)とは、年配の方に多い病気で、水泡をともなった発疹を生じ、それが、ひどく痛む病気です。
片側の胸や腰、あるいは背中や額(ひたい)などによく起こります。原因は、水痘帯状疱疹ウイルスによるもので、実は、このウイルスは子供さんがかかる水痘(水ボウソウ)と同じウイルスです。ヘルペスウイルスに大人がかかった場合、これが何年もの間、神経に隠れていて、体の抵抗力が弱った時をねらって活動を始めます。すると、ウイルスが潜んでいた神経の領域に沿って、鋭い痛みが走るようになり、2〜3日してから、その部分に発疹が現われます。
発疹を生じる前は痛みしかありませんので、例えば、胸なら、肋間神経痛、額なら頭痛などと間違えられたりします。何日かして、痛んだ場所に、いくつもの赤い斑点状の発疹が出現し、続いて、それぞれの発疹の上に小さな水泡が現われます。しばらくの間は、痛みが激しく、しばしば夜も眠れないほどです。
ヘルペスにかかった場合、一刻も早く治療を始めないといけません、なぜなら、治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛と言う後遺症のせいで、激しい痛みが何年も続くからです。
注意が必要な点は、1、痛みが出てから通常3〜5日してから発疹が出現しますので、痛みが出た時点では、なかなかこの病気かどうか分からず、他の病気間違えられやすいことです。ヒタイ(額)はヘルペス(帯状疱疹)がよく起こる場所ですが、治療が遅れると、角膜のヘルペスを併発して失明したり、ひどい痛みに一生苦しめられることになりかねませんので注意が必要です。
腰の痛み:腰痛のほとんどは腰の筋肉からくる痛みが原因です。まれに内臓の病気で起こるもの、腰椎に原因があって起こるものがあります。内臓の病気では、腎臓結石や尿管結石、婦人科の病気、腹部大動脈瘤などの場合があります。 また、腰椎の病気には椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎スベリ症、腰椎の圧迫骨折、悪性腫瘍の腰椎への転移などがあります。
背中の痛み:右側の場合
胆嚢炎:胆石や細菌感染などが原因で起こる胆嚢の炎症のことです。右上腹部の激痛、吐き気や嘔吐、38度を超える発熱が起こります。この際に右側の背中の痛みを伴う場合があります。
胆石では、右脇腹の痛みやみぞおちの痛み、その他、背中の痛みや張り、腰痛、肩凝り、大量の汗。他にも吐き気や嘔吐、胸部の痛みなど起こします。
背中の痛み:左側の場合
胃潰瘍:胃から分泌されている自身の胃酸によって胃壁に穴(潰瘍)を空いて、痛みや出血を起こす病気です。症状としては上腹部痛が代表的ですが、背部痛、特に左側の背中の痛みを訴えたり、食欲不振、体重減少、吐血、下血、胸焼け、もたれなどの症状があります。
急性膵炎:突然に激しい腹痛が突然起こります。左側の背中が痛む場合もあります。アルコールの飲過ぎが原因となることが多く、特に慢性膵炎の原因の半数以上はアルコールによるものです。
胸の痛み(胸痛)
狭心症:胸の奥が痛い、胸がしめつけられる・押さえつけられる、胸が焼けつくような感じなどの症状が起こります。それ以外に上腹部(胃のあたり)や背中の痛み、のどの痛み、歯が浮くような感じ、左肩から腕にかけてのしびれ・痛みが起こることもあります。狭心症の方の多くは左肩の肩こりを訴える方が多く、一見、関係のない症状と思われがちですが、急に左肩がこりだした時などは注意が必要です。
心筋梗塞:突然生じる前胸部の痛みで、痛みは30分以上持続します。痛みの性状としては圧迫感、しめつけられる感じ、焼けるような感じなどで、前胸部、左上腕や咽頭部に放散する激烈な痛みです。死ぬのではないかというような恐怖感を伴うことが多く、すぐに病院へ行かねばなりません。
胸部大動脈解離:前胸部から背部へ放散する激烈な痛みが特徴的で、動脈の解離とともに痛みが移動していきます。ショックになることが多く心筋梗塞とともに緊急性が高い病気です。
肺塞栓:突然の急激な頻脈、呼吸困難、胸痛が特徴ですが胸痛は認めないことも有ります。長期に臥床していた方が、急に起き上がった際などに起こりやすく、そのひとつがエコノミークラス症候群で、ショックになることもあり、やはり緊急性が高い病気です。
気胸:突然の胸痛、呼吸困難、動悸、咳などが特徴で、特発性気胸は20歳台の若い男性に多いといわれています。なかでも、緊張性気胸の場合は緊急性が高くただちに救急処置が必要です。
肋骨骨折打撲していなくても、ひどく咳をしただけで、骨折をきたす方もあります。一般に骨折部の肋骨に圧痛がみられます。
帯状疱疹(いわゆるヘルペス) 痛みが出て、数日遅れて皮疹が出現してきます。この皮膚の発疹が出ていない段階では診断が困難です。
ホッペタや口唇、マブタ、額にある顔面の筋肉は、脳から出た顔面神経の指令で動いています。この顔面神経が何らかの障害を受け、そのせいで顔面の筋肉の動きが悪くなった状態を顔面神経麻痺と言います。
この顔面神経麻痺はその原因によって、中枢性(ちゅうすうせい)と末梢性(まっしょうせい)との二つに分けられます。すなわち中枢神経である脳の病気で起こる場合と、そこから出ている末梢神経に障害が起こったことによる場合とがあります。
中枢性の顔面神経麻痺の多くは 脳梗塞などの病気によって起こりますが、一般に顔面だけの麻痺ということは稀で、同時に半身の手足の麻痺やしびれ、あるいは眼球運動の麻痺のせいで物が二重に見える複視などの症状を伴うことがほとんどです。
顔面神経麻痺でおいでになる方のほとんどは末梢性顔面神経麻痺ですので、それについて説明します。末梢性顔面神経麻痺の大部分は、原因不明の特発性のものです。この特発性の末梢性顔面神経麻痺は、イギリスの医師の名前からベル麻痺とよばれます。
ほとんどの場合、何の前ぶれもなく、突然に顔面の片側の顔面の麻痺が起こります。麻痺が起こりますと、マブタを閉じる筋肉が麻痺し、マブタを閉じようとしても上マブタが十分に下がりません。そこで、目をしっかりと閉じることが困難になります。瞬(マバタキ)きがうまくゆかなくなって、角膜が乾燥し、角膜炎を併発して失明にいたることもあります。
また、上を見たとき額(ヒタイ)に「しわ」ができますが、麻痺している側では、この額の「しわ」が出来にくくなります。麻痺側では口を閉じる力が弱くなり、パ行やマ行の発音が、息がもれてしまってうまくできなくなりますし、口笛が吹きにくくなったり、ふくれっつらが出来にくくなります。麻痺した側の口角が下がるために、そこから、よだれが出たり、食べ物や飲み物がこぼれやすくなります。
多くはありませんが、麻痺した側の舌に味覚障害が起こり味が分かりにくくなることもあります。また、聴覚敏感(音が大きく、あるいは割れてやかましく感じる)、唾液分泌の減少、涙腺分泌の低下などの症状を伴うこともあります。
ベル麻痺では通常、麻痺がでてから1週間ぐらいの間は症状が悪くなることがあります。そこで一番ひどい麻痺の状態がどの程度なのかは、1週間ぐらいたたないと分かりません。一般に、麻痺が重度なほど治るまでに時間がかかり、また治り方も不十分で後遺症が残ることが多いと言えます。
一般に、ベル麻痺の80〜90%の患者さんは目立たない程度ぐらいまでには回復します。麻痺が軽度であれば1〜2か月で完全に治ります。麻痺が軽度の場合は1〜2カ月以内、中等度の場合は2〜3カ月程度で治ることが多く、後遺症の可能性もあまりありません。多くの場合、発症1カ月を過ぎた時期から改善しはじめます。一度障害された神経が障害された部位から徐々に再生してくるためです。しかし、麻痺が高度な場合、2〜3カ月でよくなることもありますが、ある程度回復して症状が固るまで6カ月前後かかることもあります。
ベル麻痺の原因としては、寒冷刺激、過度の飲酒、精神的ストレス、過労などにより顔面神経に酸素と栄養を供給する血管が細くなって、十分な酸素と栄養を受け取ることができなくなり、顔面神経の障害が起こるとする説もありますが、最近では、ウイルス(特に風邪の時の口の周りの水疱や口内炎をおこす単純ヘルペスウイルスや水ぼうそうや帯状疱疹をおこす水痘帯状疱疹ウイルス)が原因となっている場合が多いと考えている医師が増えていますが、まだ不明な点が多いようです。
顔面神経麻痺のより良い回復のためには早期診断・早期治療が大切で、特に発病から1週間以内の治療が大切です。