めまいがします

めまいがします

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  1. めまいの原因
  2. 耳の病気で起こるめまい
    1. メニエール病
    2. 良性発作性頭位変換性めまい
    3. 前庭神経炎
    4. 外リンパ漏
  3. 脳からのめまい
    1. 脳貧血
    2. 脳への血液の流れが悪くなって起こるめまい
    3. 慢性脳循環不全
    4. 朝起きた時のめまい

めまいの原因

本当のめまいとは、見ている物が回る、あるいは自分自身が回っている感じがすると言う症状を言う

本当の「めまい」とは、見ている物が回る、あるいは自分自身が回っているような感じのする発作のことを言います。患者さんは「急に天井が回った」、「窓や天井が流れて見えた」などと訴えられることがしばしばです。この「回転性のめまい」の発作を起こされている患者さんを、その時点で診察しますと、眼振(がんしん)と言って、「目のたま」が実際に左右に、小刻みに揺れています。すなわち発作の時には実際に目が回っている訳です。そして、この眼振すなわち目の揺れ方から、どこの部分に病気があるかが分かります。なので、この目の動きは大切な症状と言えます。ただ、めまいを起こされている方の診断は専門医でないとなかなかに難しいことから、めまいの患者さんを診たら「めまいがする」とおっしゃるお医者さんも多いようです。なお、このような回転性のめまいを起こされている時には、身体がふらついてまともに立てないことが多く、あるいは立てても真っ直ぐに歩けないため、しばしばささえを必要としたりします。

平衡感覚の経路に障害が起こるとめまいが起こる

体のバランス、すなわち自分の身体が真っ直ぐになっているか、傾いているかなど平衡感覚に関する情報は、主に、耳の奥の前庭(ぜんてい)と言う部分にある三半規管が検出し、そこから脳に伝わります。しかし、私たちの脳は、この三半規管からの信号ばかりではなく、それ以外に、例えば、目からの視覚情報、手足、首などの筋肉や関節からの位置に関する情報などを併せて、自分の体の運動や姿勢の状態を逐一、正確に判断しているのです。ところが、そのうちのどこかに不具合が起こり、そこから異常な誤った情報が脳に伝えられた場合、それは、ほかのところからくる情報と、うまく一致しません。このような運動や姿勢に関する情報のアンバランス(不一致)があると、脳は、一瞬、自分の体の運動や姿勢の状態がどうなっているのか分からなくなってしまいます。この際に、いわゆる「めまい」を自覚することになります。つまり、めまいとは自分の体の位置や運動を誤って感じた際に起こる症状なのです。

めまいには大きく分けて2つのタイプあります。ひとつは「回転性めまい」で、目の前や自分自身がぐるぐる回っているように感じるものです。もうひとつは「浮動性めまい」で、フラフラして真っ直ぐ歩けない、雲の上を歩いているような感じがするというものです。このように、めまいの原因には2つのタイプがあり、平衡感覚を司る三半規管や前庭の病気で起こる「耳が原因」のタイプと、体のバランスを制御する「脳が原因」のタイプとがあります。そのため、病気が耳にあるのか、脳にあるのかを十分に検査して調べる必要があります。一般に「耳からのめまい」は回転性であることが多く、「脳からのめまい」は浮動性であることが多いと言われます。しかし、脳の病気でも、それが急激に起こった場合、それに伴って起こるめまいは回転性であることもしばしばです。すなわち「回転性のめまい」は、前庭神経系、すなわち前庭(耳)を含め、前庭から脳に到るまでの神経の経路のどこかに急激な異常が起った場合に起こると考えて間違いありません。つまり「回転性のめまい」は、耳の病気のみならず脳の病気でも起こる可能性があるのです。あらゆる「めまい」の中でも心配なめまいとは?もちろん脳が原因で起こるものです。めまいと同時に「手足に力が入らない」、「手足がしびれる」、「ろれつが回らない」、「頭痛がする」、「意識を失う」などの症状がある時は、恐い脳卒中からくるめまい、なかでも脳梗塞を疑う必要があります。

耳の病気で起こるめまい

1.メニエール病

メニエール病では、回転性のめまいと耳鳴り、難聴の3つの症状が同時に起こる

前庭に異常が起こってめまいがする病気のうち代表的なものがメニエール病です。メニエール病の原因は前庭の中の内耳(ないじ)と言うところに、リンパ液と言う水がたまりすぎて起こります。そしてメニエール病では「回転性のめまい」(必ず回転性です)と「耳鳴り」(耳鳴りがいつもあるのではなく、めまいの発作中にだけ起こります)。そして「難聴」(なんちょう、発作の間、耳が聞こえにくくなります)3つの症状の発作が起こって、これが何時間か続きます。前庭の病気なので吐き気、嘔吐もしばしば起こります。そして以上の回転性めまい、耳鳴り、難聴の3つの症状がきちっとそろって出現し、このような発作を繰り返して起こす方のみに、はじめてメニエール病の診断がつくのです。

メニエール病はかなり有名な病気となってしまったせいで、「家庭の医学」などと言う本でめまいのところを見ますと、メニエール病がたいてい最初に書いてあります。そこで、めまいがする方の多くは自分はメニエール病だと思っておられることが多いようです。しかし実際にはそれほど多い病気ではありません。このメニエール病は命にかかわる病気ではありませんが、発作が何回も起こるのにつれて、だんだん耳が聞こえなくなってくるのが問題となります

2.良性発作性頭位変換性めまい

良性発作性頭位変換性めまいでは、頭を動かした際に、短時間の回転性めまいが起こる

メニエール病より多い病気に良性発作性頭位変換性めまいと言う病気があります。これは寝返りをうった時など、頭の位置を変えた時に限って、数秒から数十秒の回転性めまいが起こると言うもので、難聴も耳鳴りも吐き気も伴いません。めまいは寝ていて身体の向きを変えた時以外、寝床に入って横になった途端にめまいが起こると言う場合も多いようです。回転性めまいですから、発作中の目を見ますと、短時間ですけれどもやはり目が回っています。良性発作性頭位変換性めまいの「めまい」の特徴は、めまいは長くても、必ず30秒以内に治ること、また頭を動かさなければけっしてめまいは起こらないこと、すなわちじっとしていればめまいは絶対に起こらないと言う特徴があります。このめまいは、非常に多い病気で、耳の奥にある耳石器(じせきき)と言う部分あたりの異常によって、体位変換により頭が特定の位置になった時に限ってめまいが起こります。このタイプのめまいは、めまいの起こる体位を繰り返してとりますと、次第にめまいが軽くなって、ついには起こらなくなって来ます。そこで、これを治療に応用し、運動を繰り返してめまいを起こらなくする運動療法(めまい体操)が実際に行なわれたりします。いずれにしても、この病気は予後良好で、通常、約2、3週間で治ることがほとんどです。最近、この良性発作性頭位変換性めまい症の原因が、三半規管の中に浮遊するゴミのようなもの(耳石のカケラ?)の刺激により起こると言われ、その治療法として、座ったり、横になったり、顔を傾けたりすることによって三半規管に迷入した耳石を移動させて、もとの卵形嚢の中に戻す方法(エプリー法)や耳石を三半規管内に拡散させる方法(ブラント・ダロフ法)がなどが行われています。

3.前庭神経炎

風邪の後、しばらくしてめまいが起こった時は前庭神経炎が疑わしい

その他、前庭に異常が起こって起こるめまいとして結構多いものに前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)があります。これは風邪を引いたりした後(多いのは1、2週間たってから)、急に激しい回転性めまいと吐き気、嘔吐が起こり、何日も続きます。この病気は、風邪などのウィルスが前庭に入って炎症を起こすことによって起こると言われています。

この前庭神経炎では難聴や耳鳴りを伴いません。そして、めまいは次第に良くはなって行くのですが、軽い、重いは別として、めまいは何ケ月か続く方が多いようです。また、めまいが軽くなるに従って、体を動かした時あるいは体位変換の際にめまいが起こる良性発作性頭位変換性めまいに変って行く方もあります。

なお、この前提神経炎の原因はいまだはっきりとしないところがあり、実際、いろいろな説があって、例えば、耳への血管がつまって起こるとか、脳幹部というところの小さな脳梗塞によって起こると考えている専門家もいます。

4.外リンパ漏

重い物を持ったり、鼻をかんだりした時にめまいが起こったら外リンパ漏が疑わしい内耳の中には外リンパ液と内リンパ液と言う液が入っていますが、この外リンパ液が外の中耳腔側に漏れ出してくることによってめまいが起こる病気で、重い物を持ったりする力仕事、咳やくしゃみとか、強く鼻をかんだりすることによってめまいが起こるという特徴があります。また潜水や飛行機の離着陸などの気圧の変化によってめまいが起こることもあります。

脳からのめまい

1.脳貧血

急にフーとなる。目の前が真っ暗になって倒れそうになると言うのは脳貧血の症状である

「めまい」がすると訴えられる方のうち、例えば急にフーとなるとか、頭または体がふわっとする、目の前が急に暗くなる(立ちくらみ)、一瞬気が遠くなると言うような症状を訴えられる方があります。これは脳貧血、すなわち脳への血液の流れが一瞬、途切れることによって起こる症状で、急に血圧が下がった時、あるいは心臓や血管系に問題がある時に起ります。

頭に行く4本の血管のうちのひとつである椎骨動脈は、頭の中に入って脳底動脈というという動脈になり、その先は後大脳動脈という動脈につながって終わります。この後大脳動脈が血液を送っているのが後頭葉にある視覚中枢です。そこで、脳へ行く血液の流れが悪くなった際に、動脈の一番先にある部分の症状が真っ先に出ることになるのですが、この視覚中枢の血液の流れが悪くなった時の症状が、目の前が真っ暗になったり(眼前暗黒感)、目の前が真っ白になったりする症状なのです。そして、さらに血液の流れが悪い状態が続きますと、後大脳動脈より心臓に近い脳底動脈の部分の症状が出ることになるのですが、この脳底動脈が血液を送っているのが脳幹部というところで、ここには平衡感覚を司る前庭神経核、あるいは意識の中枢などがあります。そこで、この脳幹部の血流が悪くなるとフラフラしたり、めまいがしたりしますし、ひどい時には意識を失って倒れたりすることになります。

この脳貧血により気を失って倒れた場合、これを失神(しっしん)と呼びます。この脳貧血症状の原因は、若い方と年配の方では異なっており、分けて考える必要があります。

年配の方では、頭へゆく血管に動脈硬化のせいで狭いところが出来て、そのせいで血液の流れが悪くなって起こるような場合を考えておかねばなりません。あるいは、心臓に不整脈が起こり、そのせいで、時々、心臓が止まってしまうような場合もあり、そうなりますと脳へ血液がゆかなくなってフーッとなったり、失神を起こしたりすることになります。

一方、若い方では、頭に行く動脈に、ひどい動脈硬化が起こっているとは普通、考えられません。そこで、その原因としては、例えば起立性低血圧(急に立った時に血圧が下がって、脳貧血の症状からフーとなる。自律神経の弱い方に起こりやすい)あるいは朝礼で長い間立っていた時に脳貧血(自律神経の緊張が急に弱くなって、末梢の血管が開くため血液が下半身にたまって、脳への血液の流れが減ることによる)を起こす場合などが考えられます。

それ以外に若い男性で、夜中に排尿した途端に血圧が下がって失神をきたす場合(排尿時失神)、あるいはもともと低血圧で普段から立ちくらみがある方で、お風呂で長湯(血管が拡がって血圧が下がります)をして湯船から出た途端に失神をきたす場合などがよくみられ、特にアルコール飲酒(血管が広がって血圧が下がります)の後にしばしば起こります。

しかし、稀には不整脈などで一瞬心臓が止ることによる場合(洞不全症候群など)もありますので、一度は心臓を含めての精密検査を受ける必要があります。

参考:急にフーとなった時

急にフーとなった。フラフラとした。頭がクラクラとしたと言うような症状は、脳の血液の流れが悪くなって起こることが多く、すぐに直ったからと言って安心は出来ません。なぜなら、このような症状は、脳の酸欠(酸素欠乏、酸素の足りない状態)から起こることが多く、脳梗塞の前ぶれかもしれないからです。特に暑い夏に起こった時には、要注意。汗をたくさんかくせいで、体内が脱水状態となりやすく、血液がドロドロとなって、脳の血液の流れが悪くなることが多いからです。

夏は脳梗塞の多発する季節。のどが渇いたと感じた時、血管内は、すでに水分が足りない状態になっています。のどが渇く前、つまり普段から、水分補給を怠ってはいけません。年配の方は、炎天下に出ないようにして、歩いたりするような運動は、朝の涼しいうちに行いましょう。汗の中には、多量の電解質が含まれています。たくさん汗をかいた時の、水分補給には、同時に電解質を補うと意味からスポーツドリンクがよいでしょう。一方、ひどく汗をかいたわけでもないのに、スポーツドリンクをたくさん飲みますと、電解質、すなわち塩分のとりすぎになったりしてもいけません。暑い時期の普段の水分補給なら、お茶やミネラルウオーターがよいと思います。

2.脳への血液の流れが悪くなって起こるめまい

年配の方の回転性めまいは、動脈硬化により血管が狭くなったせいで、脳への血流が悪くなって起こる場合が多く、脳梗塞の前ぶれの可能性がある

一方、年配の方で目の前が急に暗くなる(立ちくらみ)、一瞬気が遠くなると言うような症状、あるいは回転性のめまいと言う症状は、しばしば脳梗塞(のうこうそく)の前ぶれである場合があり、注意が必要です。

最近、脳への血液の流れが悪くなって起こるタイプのめまいが増えている

脳梗塞の原因は、頭の中の動脈が動脈硬化を起こして、次第に血液の流れる内腔の部分が狭くなり、ついには詰まってしまうことによって起こります。動脈の狭くなった部分が、いよいよ詰まりかけてきますと、なんらかの原因で血圧が変動したりした場合に、その狭くなった部分で時々、血液の流れが悪くなって、一時的な脳の症状をくりかえすようになります。こう言った発作のことを一過性脳虚血発作と言います。

めまいの原因にはいろいろなものがありますが、このうち最近増えているのが、この脳の一過性脳虚血発作です。この一過性脳虚血発作は血管が収縮したり、小さな血栓でつまったり、あるいは動脈硬化を起こして動脈が細くなったりしているような方で血圧が下がったりした時に、一時的に脳への血液の流れが減って起こるのです。つまり年配の方では脳への動脈に動脈硬化が起こり、動脈が狭くなったこと、それに加えて低血圧、すなわち何等化の原因によって血圧が下がったことが関連していることが多いのです。

つまり、動脈硬化のせいで、脳への動脈のどこかに狭い部分のある方では、時々、脳への血液の流れが悪くなって、その症状のひとつとして回転性のめまいが起こるのです。そして、この狭くなった部分が詰まってしまうようなことになると、血液が全く流れなくなって脳梗塞になると言う分けです。

頭の中にある脳のうち後頭部には、大切な脳幹部(のうかんぶ)(後頭部にあり意識や呼吸 、心臓の中枢がその中にある。後頭部を打ったら怖いと言うのは、そこに脳幹部があるから)への血液は椎骨動脈(ついこつどうみゃく)、続いて脳底動脈(のうていどうみゃく)と言う動脈が司どっています。この脳幹部の中に、先に説明しましためまいに関係する前庭からの神経が到達する前庭神経核(ぜんていしんけいかく)と言う部分があります。この前庭神経核は脳幹部の中でも最も血液の流れの減少に弱い部分で、そのため椎骨動脈を介しての脳幹部への血液の流れが減った時には、真っ先に「回転性めまい」の症状が起こって来ます。この椎骨動脈、脳底動脈の血流が悪くなって起こる病気のことを椎骨脳底動脈血行不全症と言います。

脳幹部の血液の流れが悪くなったら、めまいと同時に目の前が暗くなったり、口の回りがしびれたりすることがある

脳幹部を通り越して椎骨動脈の一番先には、視覚中枢(見た物を感じる部分)がありますので、脳幹部への血液の流れが悪くなりますと、めまいがする他に、しばしば目が見えなくなる、すなわち一瞬、目の前が真っ暗に見えるようなこと(眼前暗黒感)が起こるのです。また、前庭神経核の回りには、口の回りの感覚を司どる部分もありますので、血液の流れが悪くなった時には、多い症状ではありませんが、口の回りのしびれ感が起こることもあります。さらに、血液の流れが悪くなりますと意識の中枢がやられて意識をなくして倒れることになります。

つまり、年配の方に回転性のめまいが起こる場合には、脳幹部へ行く動脈の流れが悪くなって起こっていることが多く、さらには動脈がつまりかけている場合がしばしばあり、進行すると脳梗塞になると言う前ぶれであることが多いのです。

椎骨脳底動脈系の一過性脳虚血発作によって起こる回転性のめまい発作は、早朝目が覚めた時、睡眠中あるいはトイレに行った時、入浴後などに発生しやすいようです。このようなものを、その場限りの治療でお茶を濁していますと、特に年配の方などでは脳梗塞へと発展しやすいので注意が必要です。なお、このようなめまい発作の後では、血圧を高くして脳へ血液の流れを良くしようと言う体の反応が起こり、そのせいで医療機関を受診した時などには、かえって血圧が上がっていること多いのです。ところが、これを高血圧の発作と間違えて血圧を下げる降圧剤を使用すると、かえって血液の流れが悪くなって大変に危険です。

3.慢性脳循環不全

高齢の方の頭重感、ふらつき、めまいなどの症状は、脳の血流が悪くなっているために起る場合がある

1990年に厚生省循環器病依託研究班による脳卒中の新しい分類が出来ました。脳卒中(脳血管障害)とは、ひとつの病気ではなく、脳出血や脳梗塞などいくつかの病気に分類されますが、従来、検査ではっきりとした所見はない場合でも、頭痛、頭重感、めまいなど、脳の血管の動脈硬化により血液の流れが悪くなったための症状がある場合、これを脳動脈硬化症と呼んでいました。しかし脳動脈硬化症と言いましても、検査上の証拠がある分けではなく、そもそもそんな病気はないと言う人もいたのです。そこで今回、再検討が行われました。その結果、いわゆる脳動脈硬化症の症状を持った方に、新しい検査であるMRIを行なって見ますと、その60%の方の脳に小さな脳梗塞が見つかりました。つまり、脳動脈硬化症のうちの、かなりは脳梗塞であったと言うことが分かりました。さらに脳の血液の流れを測定するポジトロンエミッションCT検査を行なってみますと、このような症状の場合、ほとんどの方で脳血流が減少していることが明らかにされたのです。

結局、脳の血液の流れが悪くなって頭重感やめまいなどの症状が見られる場合があると言うことが分かり、脳動脈硬化症と言う名前に変り、脳卒中の中に新しく慢性脳循環不全症と言う名前の病気が付け加わることになったのです。この病気は年齢が高齢になるほど、また女性に多いようで、そのうち高血圧、糖尿病を持つた方にしばしばみられます。また脳血流の低下があることから脳梗塞の前ぶれとしての治療を行なっておくべきであると言われています。

4.朝起きた時のめまい

朝、起きた時に回転性のめまいに気付いたと言う症状も、脳梗塞や、脳への血流が悪くなって起こる場合が多いので要注意

夜間睡眠中には、血液中の水分が不足して血液がドロドロとした状態になり流れが悪くなりやすいのですが、それ以外に、人間の血圧は誰でも、昼間、活動中に高く、夜間、睡眠中には低くなり、そのせいで、血液の流れが悪くなるような病気は、この夜間から朝起床時にかけての時間帯に起こることが多いのです。実際、血圧が上がって起こる脳出血の発作は血圧の上がりやすい昼間に多く、一方、血管がつまる脳梗塞の発作は夜間に起こり、朝目が覚めた時に気付くことが多いと言う事実があります。すなわち、細くなった動脈でも昼間の血圧の高い時にはなんとか流れています。しかし、夜中に血圧が下がって脳の中で血液の流れが悪くなったりしても、寝ている間はそれと気付きませんが、朝、起きた途端に、あるいは夜中に目が覚めた途端に症状に気付く、すなわち目の前がグルグルと回っていた(回転性めまい)と言うようなことが起こるのです。つまり、このような症状は、脳梗塞、そうでなくとも脳への血液の流れが悪くなったせいで起こっている可能性があります。一時的に脳への血液の流れが悪くなって起こっている場合では、しばらくしたら症状は良くなってしまいます。しかし、すぐに良くなったと言って安心ばかりはしていられません。なぜなら、このような症状は「脳梗塞の前ぶれ」であることもあるからです。例えば、このような発作を何度か繰り返しているうちに脳梗塞になってしまうようなこともあって、くれぐれも注意が必要です。特に年配の方で、回転性のめまい(特に朝)、失神、フーッとなるような発作が起こった時には、手遅れにならぬうちに精密検査を受け、血液の流れを良くするような治療を受けておかれると安心です。

椎骨動脈は頚椎の骨の真横を通っていますが、その関係上、それ以外に、頚椎の老化現象の進んだ方では痛んだ首の骨から骨の飛出し(この飛出しのことを骨棘と言います)が出来て、これが椎骨動脈を圧迫することがあります。その場合、しばしば首を回したりした時に、その圧迫が強くなり、そのせいで血液の流れが悪くなってめまいを起こされる場合もあります。

脳が原因で起こるめまいは、脳梗塞の前ぶれのことがある

「ある日、朝起きた時に、体を動かそうとすると急にめまいが起こり、目をあけると天井が回っていました。そして、そうこうしているうちに吐き気が起こり、トイレに行こうと起上がると、フラフラしてまともに歩けず、這ってやっとトイレに行きました」。あるいは「夜中に目が覚めると天井が回っていました」と言う方もあります。

平衡感覚の経路に障害が起こるとめまいが起こる

人間が真っ直ぐに立っている、あるいは傾いているなどと言う平衡(へいこう)感覚に関する情報は内耳(ないじ)にある前庭(ぜんてい)と言うところに始り、そこからの神経連絡は脳幹部にある前庭神経核を通って、最後に大脳に達します。

なかでも前庭の病気で「回転性のめまい」が起こることはよく知られています。そこで「回転性のめまい」は耳(内耳)の病気のみで起こると思っておられる方が多いようで、そんなことから「めまい」の方に、しばしば内耳の病気である「メニエール病」との診断がついてしまいます。もちろん「回転性のめまい」は内耳の病気でも起こるのですが、内耳以外に、先に申しました平衡感覚の経路のうちどこの部位の障害であっても起こってくる可能性があるのです。

年配の方のめまいは脳が原因で起こることが多い

実際、最近の研究によりますと年配の方のめまいは、脳が原因で起こる方が多いと言われています。さらに、めまいの60〜80%が「中枢性のめまい」であると言う耳鼻科での統計の結果もあります。中枢とは主に脳をさす言葉です。

さて脳が原因で「めまい」が起こったとすれば、どのような病気が考えられるでのでしょうか?

平衡感覚を伝える経路に急激な障害が生じた時にめまいが起る

脳の病気にも例えば脳腫瘍などの場合もありますが、一般に脳腫瘍などはゆっくりと大きくなり、短時間で急激に大きくなると言うことはまずありません。そんな脳腫瘍が、平衡感覚に関する神経経路のどこかに起こったとしても、「めまい」を起こすことはまずないと言う事実があります。つまり脳が原因でめまいが起こるとしても、ゆっくりと起こってくる病気ではなくて、急激に障害を起こすような病気でないと「めまい」は起こらないようなのです。つまり、ゆっくり起こってくる病気には、脳は結構、耐える力があって、「めまい」は起こりません。

さて脳の病気の中でも突然に起こるのが特徴である病気と言えば、脳卒中をあげることが出来ます。なお脳卒中には、脳に出血した場合、あるいは脳の血管がつまった場合、一時的に血液の流れが悪くなった場合などがあります。まず脳出血のうち小脳と言うところに出血が起こった場合の症状として「めまい」が起こることはよく知られています。しかし、一般に脳出血は重篤な病気で、症状が「めまい」だけと言うことはまずありませんので、今回のとりあげたような「めまい」とは、かなり違っています。

脳幹部にある前庭神経核は脳の血管の一番先の方にあり、脳への血液の流れが悪くなった時に真っ先に障害を受けやすい

一方、脳のうちの脳幹部にある前庭神経核(めまいの中枢)は、脳への血管の一番先にあって血液の一番届きにくい部分にあるのですが、そんなことから、脳への血液の流れが悪くなった時に、その部分の血流低下が起こりやすく、真っ先に症状が出やすい場所です。そこで脳への血液の流れが悪くなったとか、脳への血管がつまったとかと言う場合に、しばしば「めまい」が起こることになり、このような場合が最も多いのではないかと考えられています。

一方、「めまい」が起こったのは、脳への血液の流れが悪くなっただけなのか、あるいは脳への血管がつまったのかどうかと言うことを知るためには、症状がどのくらいの時間、続いたのかと言うことが参考になります。

つまり非常に強いめまいであっても、短時間(5分とか10分位)で良くなってしまうような場合には、それを起こした原因は一時的な変化であることが分かります。すなわち血液の流れが悪くなって起こったとすれば、一時的に流れが悪くなって、その後、血液の流れが元に回復したことを示しています。

一方、めまいが一日中続く、あるいは、その後も何日も続いたと言う場合は、とても一時的な変化であるとは考えられません。この場合は、例え症状が軽くとも血管がつまって脳の一部が破壊された脳梗塞を考えるべきでしょう。なお脳幹部に起こった脳梗塞の場合であっても、持続性のめまいは普通3〜4日で消えてゆき、その後しばらくは体を動かした時にめまいが出るような症状が続いて、やがて何ケ月後には消えてゆきます。

脳梗塞は血圧の下がりやすい夜間に起こりやすく朝起きた時に症状に気付くことが多い

一般に脳の血管がつまる脳梗塞は夜中、なかでも明け方から朝にかけて起こることが多いのです。これは夜間に血圧が低くなり、血液の流れが悪くなりやすいためで、そんなことから、このタイプの「めまい」も、朝起きた時とか、夜中に目が覚めた時に起こりやすいのです。

CTスキャンには、脳の細胞が破壊された脳梗塞になってからでないと写らないし、脳幹部の脳梗塞などは小さすぎて写らないことが多い

さて、めまいの方にCTスキャンなどの精密検査を行なってもほとんどの場合、特に異常は見つかりません。これはひとつには、例え脳に起こった病気であっても一時的に血液の流れが悪くなっただけと言うようなものであれば、そもそもCT検査などには写らないこと。つまり脳梗塞などのように組織が破壊されてしまってからでないと写ってこないのです。また、破壊された病変ならば、すべて写るのかと言うと、そうでもありません。めまいに関係があると言われる脳幹部(親指の太さ)の中の前庭神経核を中心とした、せいぜい直径1mm位の小さな脳梗塞などの病変は、現在のところ検査の限界があって、例え起こっていたとしても、小さすぎて写ってこないのです。そもそも脳幹部には、呼吸や心臓、意識に関係する大切な場所がたくさんありますから、CT検査に写るような大きな病変が起こったならば、生命にかかわるか、昏睡状態となるのが普通で、これが小さいからめまい位の症状ですんでいるのです。

一度、起こった脳梗塞はまた起こることが多い。そこで再発予防を行なうことが大切

脳梗塞は、もちろん、一度起こったなら、二度起こる可能性が高いのです。そのため再発予防の処置を講じておかねければなりません。

一方、一時的に脳の血液の流れが悪くなって起こった「めまい」の場合であっても、結局、何もない人に起こるはずがありません。すなわち、その基盤には動脈硬化などにより脳への血管が狭くなっていると言うような事態があるに違いありません。つまり、何度か、このタイプの「めまい」を起こしているうちに脳梗塞に進行するのではないかと言う危惧があるのです。

つまり脳梗塞の「前触れ」である一過性脳虚血発作に近い病態と考えられます。そこで、精密検査を行なった上で治療を行なうのは当然ですし、あるいは「めまい」が良くなったからと言って治療をやめてしまわずに、継続することが大切です。

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