脳梗塞の危険因子 血糖が高い

脳梗塞の危険因子 血糖が高い

▼ページ内目次 ※クリックしていただくとページ内で移動します
  1. 糖尿病の現状
  2. 糖尿病に関する誤解
  3. 糖尿病とは?
  4. 糖尿病の症状
  5. 糖尿病の合併症
  6. 糖尿病性昏睡
  7. 糖尿病の検査
  8. 食事療法
  9. 運動療法
  10. 糖尿病の薬
  11. 糖尿病の疑問

1.糖尿病の現状

食生活の西洋化からくる過食、車社会からくる運動不足、ストレス、肥満者の増加、高齢者の増加などから糖尿病にかかる方が増えています。近年における糖尿病患者の急激な増加のカーブは、自動車の登録台数の上昇のカーブとほぼ一致しています。これは豊食の時代と言われる食生活の変化に加え、車社会からくる運動不足が、その原因になっていることを如実に示しています。また肥満と糖尿病にも密接な関連があり、日本人の肥満指数の増加とともに糖尿病の方の数が増えていることからも、糖尿病と過食、運動不足との関係を知ることが出来ます。

しかし、「甘いものを食べたら糖尿病になる」、「糖尿病では、甘いものだけを控えおれば良い」などと誤った知識がいまだはびこっており、一般の方が糖尿病について正しく理解なさっているとは思えません。また、血糖が高いだけでは、当面、痛くもかゆくもありませんので、なかなか治療を受ける気になりにくいのも問題のひとつです。しかし正しい知識のもとに自覚を持って治療しないと、失明(目が見えなくなる)や腎不全(人工透析が必要となる。糖尿病性腎症は人工透析が必要となる原因の2番目)、あるいは動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすことになります。

厚生省による糖尿病に関する調査(1997年)から、日本の糖尿病患者数は国民の8.2%(約10人に1人)、推計690万人で、糖尿病予備軍を入れると計1370万人が糖尿病の危険にさらされていると分かりました。なお糖尿病690万人のうち治療を受けている人は、その半数以下の45%にとどまっており、糖尿病は自覚症状が出にくいため治療が遅れ、深刻な合併症を引き起こす可能性が高いと警告しています。

また糖尿病の方のうち、すでに心臓病にかかっている人が12.4%、脳卒中になった人が4.4% と、糖尿病が心臓や脳の重大な合併症を招くことが裏付けられたとしています。1990年の調査では糖尿病推計患者数が566万人であったので、この7年間に130万人もの増加がみられ、その背景には食生活の変化や運動不足があると考えられています。

2.糖尿病に関する誤解

死なない病気と言う誤り

糖尿病は「合併症の玉手箱」と言われるほど余病を併発することが多く、この合併症が命とりになることが多い病気です。糖尿病の方では、普通の人と比べ、例えば心筋梗塞が4倍、脳梗塞が2倍。成人の中途失明原因の第1位。人工透析患者の第2位を占めます。その他、痛みやしびれなどの神経症状がしばしば起こり、また細菌に感染すると治りにくくなります。

症状がないから健康であると言う誤り

糖尿病は、自覚症状で見つかる人は1割、無症状であって健診で糖尿病と分かる人が8割。合併症が起こり、それで調べて分かる人が1割です。いずれにしても糖尿病は、かなり病気が進行してからでないと自覚症状が出ないことが多く、症状がないからといって安心はできません。また症状が出た段階では、すでに合併症が起こってしまっていることもしばしばです。早期に発見するためには、健康診断を定期的に受けることが大切です。

単に食事を減らしたり、甘いものを控えたりするのが食事療法と考える誤り。

食べ過ぎの人は減らす必要がありますが、ただ単に量を減らせば良いと言うものではありません。バランスの良い健全な食事に戻す必要があるのです。いずれにしても、糖尿病に対処するためには正しい知識をもって頂くことが必要で、そのためには自己学習が大切です。

糖尿病と言われました。甘いものは控えているのですが?

「甘いものを食べると糖尿病になる」、「糖尿病になれば、甘いものを控えておれば良い」と言うのは正しくありません。「糖尿病の素因のある方が、食べ過ぎると糖尿病になる」と言うのが正しく、食べ過ぎていけないのは、甘いものに限らないのです。いずれにしても、糖尿病にかかったら、食事療法は治療の基本です。但し、「甘いものだけを控えれば良い」と言うのではなく、「お酒をたくさん飲む」とか、「甘いもの以外は普段どおり食べている」のでは糖尿病は治りません。食事も、ただ単に減らせば良いと言うのでもありません。食事は「その人の体に見合ったカロリー摂取とする」、すなわち、食べ過ぎの人は減らし、食事量を体重や運動量に見合った量とする必要があるのです。つまりバランスの良い健全な食事に戻すことが大切です。

具体的には、大食を避けて腹八分目、偏食を避けて三大栄養素である糖質、たん白質、脂質、およびビタミン、ミネラルを入れたバランスの良い食事とします。また、食事は一日3回に分けて規則正しく食べ、「どか食い」を避けることが大切です。

3.糖尿病とは?

糖尿病とは血液中のブドウ糖(血糖)の値が、膵臓から出るインスリン作用の不足のため普通より高くなる病気

糖尿病とはインスリンと言うホルモンの作用が不足しているために、食物として体が摂取した栄養素が体内でうまく利用されなくなって、血液の中に含まれるブドウ糖(血糖と言います)の量が異常に増えた状態になる病気です。血液中のブドウ糖の値は膵臓(すいぞう)から出るインスリンと言うホルモンの作用によって、いつもうまくコントロールされています。例えば血糖が高くなれば、インスリンがたくさん分泌されて、たちどころに血糖を正常なレベルまで下げるのです。

ところが、糖尿病では、結局、このインスリンの作用が十分でないため、ブドウ糖が有効に使われなくなって血液中の血糖値が高くなります。すると、あまったブドウ糖が尿にあふれ出てくるようになるのですが、これを尿糖と言います。なお、尿に糖が出るのが、この病気に糖尿病と言う名前がついた理由です。

膵臓にあるランゲルハンス島の中にあるβ細胞からインスリンが分泌されている

膵臓は膵液と言う消化液を分泌しているだけではありません。膵臓の中にはランゲルハンス島と言う小さな組織が10〜20万個もあって、血液中のブドウ糖の量(血糖)は、このランゲルハンス島から分泌されるインスリンにより、いつも適切なレベルに調節されています。このインスリンが十分に分泌されなかったり、あるいは分泌されてもうまく働いてくれないために血糖がどんどん増えてくる病気が糖尿病です。

糖尿病には大きく分けて2種類あって、ひとつはインスリンの分泌量自体が絶対的に不足するタイプです。これをインスリン依存型糖尿病と言い、生命を維持するためには、どうしても体外から注射してインスリンを補給してあげる必要があります。もうひとつは、インスリンは分泌されるのですが、その働きが悪いか、あるいはインスリンの量が不十分であると言うタイプです。これをインスリン非依存型糖尿病と言い、こちらの方が圧倒的に多くみられます。

糖尿病が発病するのは膵臓の中のβ細胞が残り10%になってからである

膵臓にはβ(ベーター)細胞がもともとたくさんあるのですが、糖尿病になって、このβ細胞の90%が破壊されるまでは、残りの10%のβ細胞から分泌されるインスリンでなんとか体の中の代謝に必要なインスリンをまかなっています。そしてβ細胞の数が10%以下に減ってきた場合に糖尿病が発症してきます。つまり糖尿病が発病するのは膵臓の中のβ細胞が残り10%になってからであり、かなり病気が進んでからなのです。

一般に体内のブドウ糖はグリコーゲンと言う形で肝臓に蓄えられます。一方、余分なブドウ糖はエネルギー源として体内の脂肪細胞の中に、脂肪に変えられて蓄えられます。このブドウ糖を脂肪に変える時にインスリンの作用が必要なのです。ところが運動不足などで太りますと脂肪細胞に蓄えられた脂肪の量が多くなります。そうなるとインスリンを受付けるシステムの働きが弱くなり、インスリン不足と同じことになって、余分なブドウ糖は脂肪細胞に蓄えられずに血液中に残るため血糖が増えることになるのです。

日本の糖尿病全体の95%以上はインスリン非依存型糖尿病。その原因は食べ過ぎと運動不足

糖尿病のほとんど、すなわち日本の糖尿病の95%以上はインスリン非依存型と言うタイプです。このタイプはもともと遺伝体質を基礎に持っている方で、そこに過食(食べ過ぎ)、運動不足、肥満、心身のストレス、感染などが加わって発病します。

糖尿病には遺伝が関係することが多い。親兄弟が糖尿病なら要注意

例えば糖尿病では85%の人に遺伝素質が認められることが分かっています。そこで家族の中に糖尿病の方がおられる場合には、一般に糖尿病の方が増えてくると言われる中年以降の年代になったならば、特に症状がない場合でも、定期検診などを受け早目にチエックしておくことが大切です。なお、糖尿病は健康診断や人間ドックで、何の症状ないのにたまたま見つかることが結構あります。そこで、こう言った機会をうまく活用することが大切です。

4.糖尿病の症状

疲れやすく、のどが渇き、尿が多くなったなら糖尿病を疑う

糖尿病に気付いた時に多い症状としては、尿が多く、のどが渇いて、よく水を飲むようになった。疲れやすい、体重が急激に減った。あるいは手足にしびれやコムラがえりが起こったりすると言うものです。

しかし、糖尿病は通常、始めの間は無症状で経過し、このような症状が出るのはかなり病気が進行してからです。糖尿病では、本来、エネルギー源となるべきブドウ糖がインスリンの作用不足のため、うまく使えなくなって、そのため体はエネルギー不足となり、それで疲れやすくなるのです。また、血糖が高くなった結果、尿に糖が出るようになります。のどが渇くのは、その時、血液中の水分が糖といっしょに尿に出ることから尿の量が多くなって、逆に体内は水分不足の状態になるからです。

糖尿病は多くの場合、無症状で始り、病気が進行してから始めて症状が出てくるのですが、たいていの場合は血糖値が普通の人の2から3倍になってから気付くことが多いようです。つまり、それと分かるまでにかなり日がたっていることが多いのです。そこで、症状がないからと言って安心は出来ませんので定期的な健康チエックはかかせません。

朝食の前の血糖値が140mg/dl以上、あるいは食後の血糖値が200以上であれば、糖尿病であることが確実

普通、健康な人では朝食前に計った血糖値は60から110mg/dlです。そこで、これが110mg/dl以上の場合には、さらに詳しい検査を行なって糖尿病があるのか、ないのかを確かめる必要があります。

5.糖尿病の合併症

糖尿病では次第に血管や神経が障害され、腎臓や目、神経に障害を与え、また血管に対しては動脈硬化を引き起こす。

糖尿病は全身の病気で、神経や目、腎臓などにじわじわと障害を与える恐ろしい病気です。糖尿病の3大合併症とは網膜症、腎症、それに神経障害です。糖尿病性腎症は人工透析が必要となる原因の第2位で、糖尿病性網膜症を放置すると最後には失明することになります。普通、糖尿病の合併症は知らない内に徐々に進行します。そして、ある時になって始めて症状が出てくることになりますが、一般に糖尿病にかかって5〜6年後には神経障害が出現すると言われます。次に7〜8年後には網膜症が起こり、続いて腎臓の障害が起こります。そして血糖のコントロールを行なわないとどんどん進行して、やがて失明、また腎不全のため人工透析を受けるようになったりするのです。

糖尿病の合併症のうち血管系には、脳や心臓、下肢に起こる大血管障害と言われるものと、腎臓や目の網膜に起こる細小血管障害とがあります。脳梗塞の患者さんのうち50%が糖尿病を持っていたと言います。すなわち糖尿病は動脈硬化の進行を非常に早めることになり、その結果、動脈硬化から血管が狭くなって、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすくなるのです。

細小血管障害によって起こるものに糖尿病性腎症と糖尿病性網膜症があります。つまり腎臓や目の網膜がやられるのは、そこに行く血管の障害によります。そして糖尿病性腎症が進行しますと、ついには人工透析に頼らざるをえなくなるのです。糖尿病性網膜症が進行すると、網膜に栄養を送る細い血管がもろくなって破れたり、出血したりして失明につながることになります。さらに糖尿病では細菌に対する抵抗力が弱くなります。これは糖尿病になると細菌など外敵の体内への侵入を防ぐ役目である白血球の機能が弱ったり、また免疫機構が弱くなっているので細菌感染に弱くなり、ちょっとした感染でも急速に重症になり命とりになることがあります。

糖尿病性網膜症

糖尿病では定期的な眼科検診が必要

糖尿病の方の半数が網膜症を合併しており、ひどくなると失明します。初期には自覚症状がありませんので、糖尿病の方では定期的に眼科検診を受けることが大切です。また糖尿病では老人性白内障の進行が促進されます。その特有な症状としては、まぶしさを感じたり、明るい所でものが見にくくなると言うようなことが起こりますので、こう言った症状があれば要注意と言えます。

糖尿病性腎症

腎症は糖尿病の細小血管障害のひとつです。最後には腎不全から尿毒症を起こし人工透析が必要となります。糖尿病患者の死亡原因の15%が、この腎症によると言われます。

糖尿病では腎症の有無を知るために、定期的に尿中微量アルブミン検査を行なう

腎機能が障害されてくると蛋白尿が出るようになります。この腎症の有無を知る検査として尿中の蛋白を測る検査が行なわれます。しかし尿に蛋白が出た時点では、腎障害はある程度進行していることになります。そこで早期に腎症を発見するためには、腎症の早い段階でアルブミンが尿に出ることから、より精密な微量アルブミン尿検査が行なわれるようになっています。そして早期腎症ならば、血糖のコントロール次第で回復可能であると言われています。

脂肪肝

糖尿病の最大の誘引が過食ですが、過食によってとりすぎた過剰な糖分や脂肪が肝臓にたまり、糖尿病の方では脂肪肝になることがあります。なお糖尿病患者の10から20%に脂肪肝がみられると言われています。なお食事療法すなわち摂取エネルギーのコントロール、そして運動療法を行なって肥満を解消すれば、脂肪肝は自然に改善されて行きます。

糖尿病と動脈硬化

糖尿病になって10数年たつと、脳や心臓、手足などの太い血管に動脈硬化が起こり、心筋梗塞などの虚血性心疾患(平均13年たつと)や脳梗塞(平均14年)、また手足の末梢動脈硬化(平均13年)から血流が悪くなって壊疽(えそ、特に下肢に多く、腐ってくるため切断を要することもある)をきたします。

糖尿病性神経障害

糖尿病では手足のしびれやコムラ返りがよく起こる

糖尿病の神経障害では、主に末梢神経が侵されます。手足にしびれやこむら返り、走るような痛みがあれば要注意と言えます。神経障害の初期に多い症状は、指先や足先がなんとなくジンジンする感じや足の裏に1枚紙を貼ったような感じがすること、あるいは痛みやしびれ感、神経痛があると言った症状です。

この神経障害が起こると、痛みを感じる神経が鈍くなって、心筋梗塞など重大な病気にかかってもそれに気付かないことがあります。あるいは、足先の感覚が鈍くなってケガをしたことに気付かず、そこから細菌が入り、手遅れになってしまい、足を切断せざるを得なくなったという方もあります。

また自律神経の症状としては、発汗異常(暑くもないのに汗が出る、逆に暑いのに汗が全く出ない)、立ちくらみ(急に立つとフーとなって倒れそうになる。あるいは実際に気を失って倒れることもある)、便通異常(便秘、下痢)、膀胱障害、インポテンスなどの症状などもよくみられます。

糖尿病と感染

糖尿病では感染にかかりやすくなる

糖尿病の患者さんは、白血球(体内に入った細菌を貪食し、殺菌する)の動きもまた免疫機能も悪くなり、その結果として細菌に対する抵抗力が低下することから、感染症にかかりやすなります。かぜはもちろん、肺炎、膀胱炎、皮膚の炎症などにかかりやすく、また例えば肺炎にかかると、治りにくく、そのため時には生命にかかわることもあります。

6.糖尿病で起こる昏睡

糖尿病性昏睡

体の中でインスリンが不足するとブドウ糖がエネルギーになれず、脂肪や蛋白質が分解されてエネルギーとなりますが、この時、体の中でケトン体と言う物質が出来ます。このケトン体などが血液中に増えると血液は酸性に傾き、その結果、脳やそれ以外の組織の機能を低下させ、昏睡状態となります。なお血液中にケトン体が増えると、尿にもケトン体が出てきます。それ以外に血糖が非常に高くなって、そのため血液中の浸透圧(血液の濃度が非常に濃くなる)が高くなり、そのため昏睡状態になることもあります。いずれも早急に治療を行ないませんと命にかかわります。

低血糖昏睡

糖尿病の薬を飲んでいる時は、まれに低血糖になることがあり、飴や砂糖を携帯しておく

インスリン(注射)や血糖降下剤(飲み薬)で治療を行なっている方が、食事を抜いたりした時、あるいは激しい運動をした時などに血液中のブドウ糖の値が下がり過ぎて低血糖が起こることがあります。血糖値が下がった時の症状としては、急に空腹感が起こる。寒くもないのに体が震える。動悸がする。めまい感がする。ボーッとしてうまく話せない。冷や汗をかくなどの症状が起こり、そのまま放っておくと次第に昏睡状態となります。そして、このままで治療を行ないませんと脳に回復不能の障害をこうむることもあります。普段から糖分、例えば砂糖、甘いジュースなど携帯しておき、最初の段階でこれをとることが大切です。また糖尿病の方では、自分が糖尿病である旨を書いたカードなどを常時、携帯しておく必要があります。

7.糖尿病の検査

1、血糖検査

食事をとると一時的に血中のブドウ糖(血糖)の値は上がりますが、普通、2時間ぐらいでもとの値にもどります。これは血糖が上がると膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げるからです。糖尿病の方では、インスリンの量が不足していますので、食後2時間くらいたっても血糖値は下がらず高いままとなります。

なお糖尿病の方でも空腹の時間帯に計りますと正常の方と同じくらいの血糖値であることもあります。

2、Hb A1c(糖化ヘモグロビン検査)

赤血球の中にあるヘモグロビンは血糖の高い状態が続くと、血液中のブドウ糖と結びついて糖化ヘモグロビンとなります。そこで、この糖化ヘモグロビンの量を計ると過去1〜3ケ月の間の平均した血糖の状態をまとめて知ることが出来ます。糖尿病の方の血糖のコントロールがうまくいっているかどうかを知る検査のひとつです。最近では糖尿病であるかどうかの診断にブドウ糖負荷試験まで行なわずに、このHb A1c検査で判断することが許されています。

3、尿中微量アルブミン検査

糖尿病による腎臓の障害を早期に知る目的にて行なわれます。 糖尿病の方では定期的に行なう必要があります。

8.糖尿病の食事療法

食事療法は糖尿病治療の基本

食事療法は糖尿病の最も基本的な治療です。「薬でなんとかならないか」とおっしゃる方もありますが、食事療法なしに糖尿病の治療を行なうことは出来ません。ただ糖尿病の食事療法と言うのは多分に誤解されている面があります。実際、糖尿病の食事療法と言うのは、極端に制限されたとんでもない食事と言う訳ではなく、その人、その人の体に見合った量のバランスの良い食事をとると言うことです。糖尿病は食事と非常に関係が深く、例えば第2次世界大戦の前後の食料難の時代には糖尿病の発生率は激減していました。そして近年、糖尿病が激増していることに関しては、豊食の時代と言われる食生活が関与していることは間違いがありません。

糖尿病治療の基本は「1に食事、2に運動、3.4がなくて5に薬」と言われる

糖尿病の食事は制限食ではありません。つまり食べてはいけないものなどはなく、要するに過食(食べ過ぎること)をしないこと、栄養が偏らないように各種の栄養素をバランスよくとることを前提とした、「正常かつ普通の食事」、すなわち何でも食べて、しかしエネルギーは控え目にと言うものです。江戸時代の医師、貝原益軒の養生訓に書かれていたとおりの腹八分目(豊食時代と言われる現代では腹七分目)が大切です。この控え目のエネルギーとは、最低のエネルギーと言う意味ではなく、その人が「元気に生きてゆく」ための、必要かつ最低の熱量と言う意味です。糖尿病の食事は過食と偏食を避けた成人病の予防食とも言えるものであって、一種の長寿食です。

食事療法の原則は1、大食を避けて腹八分目、2、偏食を避けてバランスよく食べること

食事療法の第一のポイントは適正なエネルギー量を摂取すると言うことです。1日の適正なエネルギー量を知るには、まず各個人の標準体重(太りすぎでなく、やせすぎでない、適正な体重)を知ることから始めます。

糖尿病の食事療法のための適正カロリーを知るには、まず標準体重を計算する

標準体重=(身長×身長)×22 但し、身長はメートルで

例:身長が1メートル60センチなら(1.6×1.6)×22= 56.32キログラム

1日の必要エネルギー=標準体重×体重あたりの必要カロリー

次に1日に必要なエネルギー量を計算するには、標準体重に体重あたりに必要なカロリー値を掛け算します。

標準体重1キログラムあたりに必要なカロリーとは:

  • 軽労働で25〜30キロカロリー
  • 中労働で30〜35
  • 重労働で35〜40

例:標準体重が56キログラムで軽労働の少し強い目の方の1日の必要カロリーは:56×30=1680キロカロリーとなります。

三大栄養素である糖質、たん白質、脂質およびビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが大切

第2のポイントは食事の質で三大栄養素(糖質、たんぱく質、脂肪)をバランスよく摂取することです。そして野菜などに含まれるビタミンとミネラルを必要な量摂取する必要があります。このあたりは食品交換表と言う本を読んで頂くと良いのですが、原則は以下のとおりです。

まず体を維持するのに必要な蛋白質は標準体重1キログラムあたり1グラム以上(1から1.2グラムが望ましい)とるようにします。普通の方では蛋白質は60〜80グラム必要となります。 次に糖質は1日に150グラム以上必要ですが、普通の食事をとっていれば200〜300グラムの糖質をとっていることになります。そして総エネルギー量の55〜60%を糖質でとるようにして、残りを脂質で1日 60グラムを越えない範囲で摂取するようにします。脂質は1グラムあたり9キロカロリーとエネルギー量が多いので(糖質やたんぱく質は4キロカロリー)、とりすぎに注意しましょう。

ビタミンやミネラルを十分にとり、また野菜は1日 300グラム、出来ればニンジンなどの緑黄色野菜をせめて1日 100グラムは食べるようにします。

食事療法の実際は食品交換表を見て行なう

実際のところ、蛋白質を何グラムとか、糖質、脂質を何グラムなどと計算するのは不可能です。そこで具体的に何をどれぐらい食べたらよいかと言うのは「糖尿病治療のための食品交換表:文光堂発行」を書店で購入して頂き、これに従って、1日の食事として摂取する食品の分類や分量を決めます。なお、内容を必ずしも覚える必要はなく、忘れてもその都度本を見たら書いてありますので、そう難しく考える必要はありません。

食品交換表では1単位80キロカロリーがすべての基本となる

食品交換表では80キロカロリーが1単位とされ、すべての食品を6つの種類に分類し、それぞれの食品について1単位 80キロカロリーあたりの分量が示してあります。そして、それをもとにカロリー計算をします。

  • 表1:穀類、いも類、まめ類
  • 表2:果物
  • 表3:魚、貝、肉、卵など
  • 表4:牛乳、乳製品
  • 表5:油、油の多い食品
  • 表6:野菜、海草など

1日の食事は1200キロカロリーの基礎食と、残りのカロリー分の付加食とからなる

6つのグループから必ずひとつ以上選び合計1200キロカロリー(15単位)としたものが基礎食と呼ばれを糖尿病食の基本の部分となります。

そして1日に必要なエネルギー(各個人によって異なる)の残りの部分(必要カロリーから1200を引いた数字)を付加食と言い、この付加食は好みに応じて自由に選んでとるようにします。この付加食の部分で変化に富んだ食事を楽しむようにします。

   基 礎 食 表1:6単位、表2:1単位 表3:4単位、表4:1.4単位 表5:1単位、表6: 300グラ ム1単位、(調味料0.6単位)

なお基礎食は15単位を6つのグループからとりますが、そのとり方は栄養バランスの面からあらかじめ決まっています。具体的には表1の穀類を6単位、表2のくだものを1単位、表3の肉、魚、卵、大豆などを4単位、表4の牛乳を1.4単位、表5の油を1単位、表6の野菜類は300グラムを1日 3食にふり分けて1単位、最後の0.6は調味料でとるようにします。

糖尿病では食事は分けて食べる方が良い

糖尿病ではまとめて食べたり、「どか食い」をしたりしてはいけません。食事は分けて食べる方が良いのです。そこで3食をきっちりとった上で、許されたカロリーの範囲で間食(おやつ)をとることが勧められます。1日の食事配分は朝食と昼食の割合を多くして、夕食を少し少な目にするのが望ましいと言われています。

なお食事時間は規則正しく、いつも一定の時間にとることが大切です。アルコールは1グラムで7キロカロリーと高いエネルギーを持っていますので、許されても2単位(清酒 1合弱)までです。合併症の起こっている方では、原則として禁止となります。

9.糖尿病の運動療法

運動を行なうと糖代謝が活発になり、インスリンを節約することが出来る

食事療法についで大切なのが運動療法で、糖尿病の治療では食事と運動は車の両輪にたとえられます。そして現在、糖尿病の方がどんどん増えている大きな原因が、過食と運動不足であることから考えても、その重要性がお分かり頂けるものと思われます。運動を行なうと糖代謝が活発になり、インスリンを節約することが出来ると言われています。

糖尿病では朝、夕に30分ずつ歩くことが勧められる

1日の運動量は一般に160キロカロリー(食品交換表の単位では2単位)を消費する程度が適当と言われ、速歩、体操なら40から60分の運動量に相当します。そして毎日、一定量の運動を規則正しく日課の中にとりいれて続けることがことに大切です。なお、血糖降下剤などを使用している方では、運動により時に低血糖を起こすことがありますので注意が必要です。なお、体重を運動だけで減らそうとすると900キロカロリーを消費する必要があると言われ、これは歩行なら約100キロメートル歩く量にあたります。

一般に早足で歩く(速歩)と1分間に4キロカロリーのエネルギーを消費すると言われ、1日の運動量である160キロカロリー消費するには、約40分歩くことが必要になるのです。これは最低の運動量なので、出来れば朝、夕に30分ずつ歩くことが勧められます。

10.糖尿病の薬

薬物療法には内服治療とインスリンの注射を行なう方法とがあります。これらは、あくまで食事と運動療法で効果が不十分な場合に行なわれると言うのが原則で、「食事療法はつらいので薬でなんとか」と言う相談にはのれません。逆に病状から薬の必要な方であれば、「薬を飲むのがイヤなので、食事と運動でなんとか」と言う相談にものれないのです。内服治療を行なうのか、インスリン注射を行なうのかは、糖尿病の重症度に応じて決定します。ただインスリン依存性の糖尿病の場合にはインスリンの使用が優先されます。

経口血糖降下剤は、食事療法や運動療法をきちんと行なっているにもかかわらず、血糖のコントロールがうまく行かない成人型のインスリン非依存性糖尿病の方の場合に選択されます。血糖のコントロールがうまくゆかない時とは食事、運動療法が十分に行なわれていても空腹時血糖が常に140mg/dl以上の時、あるいはHbA1cが7以上の時です。

血糖が下がらないままいつもでも放置していると、膵臓が回復不能の状態になってしまう

血糖の高い状態を、漫然と食事や運動療法だけで放置していると、血糖が高いことにより膵臓のβ細胞の破壊が進みます。また早期であるほど高血糖を改善することが容易に行なえますので、血糖が高い時には手遅れにならないうちに薬剤の使用に踏切るのが良いと言われています。また血糖を出来るだけ正常化しておかないと、合併症がどんどん進むことになります。そして薬を使って、早目に血糖を下げるようにしますと、膵臓のβ細胞の機能が回復してくることもしばしばで、しばらく経口剤もしくはインスリンを使用しているうちに、経口剤がいらなくなったり、あるいはインスリンから経口剤での治療に戻ることが出来る場合も結構あるのです。そこで最近では、血糖が高い場合には、むしろ早期に経口剤もしくはインスリンの使用に踏切った方がよいのではと考えられています。

経口血糖降下剤としてはスルフォニルウレア(尿素)剤と言う薬が主に使用されます。この薬は膵臓のランゲルハンス島に働きかけてインスリン分泌をうながす作用と、インスリンの作用を強める作用を持っています。経口糖尿病剤では、通常、空腹時血糖が140mg/dl以下、HbA1cを7以下とするように薬を飲む量を調整します。

しかし経口剤の強力な使用(オイグルコンもしくはダオニールなら1日に7.5mgまで使っても)においても、常に血糖が180mg/dlを越える時には、インスリン療法に切り換えます。

いろいろな糖尿病の薬

1、スルフォニルウレア(尿素)薬(SU剤)
膵臓からのインスリン分泌を促進し血糖を下げる作用があります。 オイグルコン(グリベンクラミド)、グリミクロン(グリクラジド)、アマリール(グリメピリド)
2、フェニールアラニン誘導体
速効性、すなわち服用後、短時間でインスリン分泌を促進させる効果があり、食後の血糖の上昇を抑え血糖値を低下させます。必ず食直前に服用します。また、薬の服用直後から薬の効果があらわれるので、薬を飲んでから10分以内に食事をとること。食事までに時間がかかると、その間に低血糖を起こす可能性があります。 スターシス(ナテグリニド)
3、α−グルコシダーゼ阻害薬
小腸の粘膜内にある糖の分解酵素(α−グルコシダーゼ)の作用を妨げて、糖の消化を抑制したり、吸収を遅らせたりすることによって食後の高血糖を抑えます。必ず、食直前に服用します。食後では効果がありません。副作用として、腹部膨満感、放屁の増加、消化器症状などがあります。 ベイスン(ボグリボース)、グルコバイ(アカルボース)
4、ビクアナイド(BG)薬
肝臓で糖が産生されるのを抑え、消化管からの糖の吸収の抑え、一方、末梢組織でのインスリン感受性を改善し、その利用を促進することなどにより、血糖を下げます。インスリンの分泌を促進する用はないので、血糖降下作用は穏やかです。 ジベトスB(塩酸ブホルミン)、グリコラン(塩酸メトホルミン)
5、チアゾリジン誘導体
末梢組織でのインスリン感受性を改善(インスリン抵抗性の改善)して、血糖降下作用を発揮します。 アクトス(塩酸ピオグリタゾン)

血糖降下剤使用中の方は、低血糖に注意する

経口血糖降下剤では、薬を飲み過ぎたり、ごはんを食べずに薬を飲んだり、激しい運動をしたりした時に、まれに低血糖になることがあるので注意が必要です。低血糖の状態を放置しますと昏睡状態となり、それに気付かれないままでいますと脳に回復不能の障害が起こることがあります。そこで、経口糖尿病剤で治療を行なっている方では誰が見ても分かるように、常に、自分が糖尿病であること、そして経口糖尿病剤を飲んでいることを書いたカードを持ち歩くようにします。また、低血糖に備えて飴や砂糖を持っておいて、低血糖の症状が出たらすぐに摂取するようにします。

11.糖尿病の疑問

人間ドックの糖負荷試験で境界型糖尿病といわれました?

正常と糖尿病との間を境界型糖尿病と呼んでおり、境界型の方のうち、1年に約3%の方が糖尿病になって行くと言うことが分かっています。なお家系的に糖尿病に人がいたり、50歳未満の方の場合、さらに糖尿病に移行しやすいと言われます。いずれにしても境界型の人では、食事や運動などの日常生活の摂生に努め糖尿病にならないようにすることが大切で、また定期的に検査を受けて糖尿病になっていないかどうかを、チエックしておくことが必要です。

インスリン抵抗性って何のこと?

インスリン抵抗性があると糖尿病のコントロールが不良となる

最近、インスリンが十分に分泌されているにもかかわらず、インスリンの作用が十分発揮出来ないために血糖のコントロールがうまくゆかないと言う状態がしばしばみられることが分かりました。その理由は、インスリンが働いている末梢組織において、インスリンに対する感受性が低下しているためで、これをインスリン抵抗性と呼んでいます。このインスリン抵抗性のある人では、末梢組織においてインスリンによる糖の取込みが悪く、そのため組織が必要な糖を取り込むためには、より多くのインスリンを必要とします。

高血圧の人にはインスリン抵抗性のある場合が多く、糖尿病を合併しやすい

このインスリン抵抗性と高血圧は関連し、高血圧にはインスリン抵抗性を合併することが多く、実際、高血圧患者さんの25〜40%がインスリン抵抗性を示します。そしてインスリン抵抗性がある高血圧の方では糖尿病を合併しやすいのですが、これはインスリン抵抗性があるとインスリンを多く分泌せねばならなくなり、膵臓が酷使されて糖尿病になりやすくなるからです。なお、逆に糖尿病の方では高血圧の方が多く、その有病率は糖尿病でない方の2倍もあります。

本態性高血圧患者の3割にインスリン抵抗性があり、肥満が合併するとこれが6割に増え、中性脂肪が高いと8割にもなる。

肥満がなぜ高血圧と合併するのか、その原因のひとつは血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する感受性の低下すなわちインスリン抵抗性と関連していると考えられています。さらに、このインスリン抵抗性のある人では高インスリン血症、高トリグリセライド(中性脂肪)血症、低HDL(善玉コレステロール)血症、また高血圧が起こりやすく、ひいては高率に心臓血管系の病気を引き起こしてくることが多く、これをシンドロームXと呼んでいます。

血液中の中性脂肪が高い、肥満を合併した高血圧の40歳以上の方は糖尿病になる危険性が高い

これらを合併すると血圧が高いだけの方にくらべ数倍から10倍も糖尿病が多くなると言う結果も得られており、このような危険因子の複合現象はこれらの合併症が相乗的に作用し、高率に心臓血管系の病気を引き起こし死につながることが多いことから「死の四重奏」とも呼ばれています。

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