頭を打った

頭を打った

▼ページ内目次 ※クリックしていただくとページ内で移動します
  1. 頭を打った後の注意(頭を打って来られた患者さん用パンフレットから)
  2. ご家族の方への注意点
  3. 子供さんの場合の注意点
  4. 顔面を打った際の注意点
  5. 首の痛みが出た際の注意
  6. 頭を打った後の注意点とは?
  7. 頭を打った後、家庭で様子をみる時のポイント

1.頭を打った後の注意(頭を打って来られた患者さん用パンフレットから)

ここには、診察の後、ご家庭で様子を見て頂く時の注意が書いてあります。お帰りになってから、必ず、ご家族の方にも読んでもらって下さい.

診察の結果、異常がなかった場合でも、ごくまれに、しばらく時間がたってから頭の中に出血が起こり、そのせいで生命にかかわるようなことが起こることもあります。そこで、2〜3日の間は充分な注意が必要です。なお、症状の変化が分かりにくくなりますので、この間はお酒、睡眠薬、風邪薬などを飲んではいけません。

2.ご家族の方への注意点

  1. 少なくとも一昼夜は患者さんから目を離さずに、一人で放つておかれたりすることのないようにして下さい。
  2. 頭を打った日の夜は、眠っておられても、念のため、1〜2度、気がつくかどうか起こして見て下さい。
  3. お酒を飲んで頭を打った後、寝てしまわれた際には、頭を打って意識がおかしくなっているのか、酔っ払って寝ているだけなのかが分かりにくいので、特に注意して下さい。

経過を診ている間に、次のような症状が出た時には手遅れにならないうちに脳外科の専門病院を受診して下さい。

  1. 頭痛がだんだんひどくなる。
  2. 何回も吐く。
  3. 手足に力が入らない。あるいは動かさない。
  4. 意識がもうろうとしだした。あるいは起こそうとしても目を覚まさない。
  5. 瞳孔(黒目)の大きさが左右で違う。
  6. けいれんが起こった。
  7. 年配の方(特に老人の方)では、まれに数ヶ月してから頭の中に出血して、そのためにボケたり、手足の麻痺や頭痛が起こることがあります。そこで、しばらくの間は、頭を打ったことを忘れないようにして、以上のような症状が出た時には、早めに医師に相談するようにして下さい。

3.子供さんの場合の注意点

  1. 「頭が痛い」と言葉に出して言えないような小さな子供さんでは、たとえ頭の中に出血しても、もともと、その症状である頭痛を、回りの人にはっきりと訴えることが出来ないことに注意して下さい。
  2. 大人と違って、子供はちょっとしたことでも我慢出来ません。そこで頭の中に出血が起こった場合、頭が痛いと言えない時でも、不穏状態(ふおんじょうたい)、すなわち、いつもと違って「機嫌が悪くなる」、「むずかる」、ひどい時には理由がないのに「暴れたり」することが多いものです。このような症状が出て、時間とともに、ひどくなるような時には、手遅れにならないうちに脳外科を受診して下さい。逆に、機嫌良く、遊んでおられるようなら、まず大丈夫でしょう。
  3. 子供の場合、大人と違って、もともと体内の血液の量が少ないので、頭の中に出血すると、そのせいで貧血になることが多いものです。不穏状態と同時に、貧血の症状、すなわち、だんだん、顔色が青く、あるいは白くなってくるようなら注意が必要です。
  4. 子供さんの場合、頭を打った際、内出血していなくても、脳震盪(のうしんとう)が原因で、しばしば嘔吐がみられます。すなわち、大人と違って、吐いたからと言って内出血が起こっているとは限りません。なお、吐いた後は、一時的に顔色が悪くなることが多いので、貧血を起こしているように見えることもあります。吐いたせいなら、しばらく待つと顔色が良くなってくるものです。

4.顔面を打った際の注意点

  1. 目の回りや、ほっぺたの部分をひどく打った時は、打撲による腫れのせいで、ほっぺたの骨や鼻の骨に骨折があっても、腫れがひくまで気付かないことがあります。そこで、念のためレントゲン検査を受けておいた方が良いでしょう。
  2. 顔面を打った際、頭の中に衝撃がおよんで、そのせいで頭の中に内出血することもあります。そこで、ひどく打たれた場合には、頭の検査が必要な場合もあります。
  3. 鼻出血が起こった時は、ほっぺたの骨や鼻の骨に骨折が起こっていることがあります。
  4. 耳の前をひどく打った時は、頬骨弓というところの骨折のせいで、口が開きにくくなることがあります。
  5. 顎をひどく打った時には、顎関節に骨折が起こって、やはり口が開きにくくなることがあります。
  6. 目の回りを打った時は、眼球から出る視神経の回りの骨に骨折が起こり、目が見えにくくなることがあります。ところが、マブタが腫れて開けられないせいで、目が見えなくなっていることに気付かないことがあります。
  7. 眼球の回りの骨に骨折が起こりますと、そのせいで、特に上を向いた際に、物が二重にダブッて見えることがあります。
  8. 眼球の部分をひどく打った時には、眼科の診察を受けておいた方が安心です。
  9. それ以外に、ひどく打った際、骨折のせいで、頭の中の水(髄液:ずいえき)が鼻に漏れてきたりすることもあります。サラサラとした鼻水が出てくるようなことがあれば、念のため医師に相談して下さい。

5.首の痛みが出た際の注意

頭、特に後頭部を打った後、首の後ろや、両肩の痛みが出ることがあります。時には、頭を打った後、頭の痛みに気をとられて、翌日になってから首や肩の痛みに気付くこともあります。これは頭を打った際に、首の回りの筋肉に衝撃がおよんで、首の筋肉にねんざが起こったせいです。普通、「日にち薬」で治りますので、あまり心配をなさる必要はありません。

そのような際には

  1. 首に負担がかからないよう、なるべく安静にして、しばらくの間は過激な運動はしないようにしましょう。
  2. 痛みがひどい時には、首を安静にするため、ネックカラー(ポリネック)という、首を安静にするための装具をお渡しすることもあります。この装具は、症状にもよりますが、普通、1週間程度、つけて頂くことになります。
  3. 痛みがひどい時には、早く治すため、消炎鎮痛剤という痛みを和らげて、炎症を鎮めるための飲み薬を飲んで頂いたり、張り薬(湿布)や塗り薬をお渡しすることもあります。
  4. 首が痛いので、頚椎牽引やマッサージなどの理学療法をご希望になる方もありますが、始めのうちは筋肉の炎症をかえってひどくさせてしまうことが多く、しばらくの間は、安静と飲み薬だけで様子をみる方が懸命です。

6.頭を打った後の注意点とは?

頭を打った時には、どんなことに注意する必要がありますか?

頭をひどく打った時には、脳振盪(のうしんとう)を起こすことがあります。脳振盪とは脳に大きな衝撃が加わったことによって、脳が一時的にその機能を失ったために出る症状のことを言います。

例えば、意識がなくなったりするとか、あるいは健忘症(けんぼうしょう)といって頭を打つた時点から、それより前の何時間かの間のことについての記憶がなくなってしまう(これを逆行性健忘症と言います)、頭を打ってから後の何時間かの間、その方は一見、普段と同じように行動なさっているように見えても、後で聞いてみると、その間のことを覚えていないと言ったことが起こるのです。こういった脳振盪の症状は、ほとんどの場合、全く一時的なものであって、後遺症を残すことなく治りますから、あまり心配される必要はありません。

なお、頭をひどく打った後に、けいれんが起こることもあります。この場合、頭を打ってからけいれんが起こるまでの日にちが長いほど、すなわち時間がたってからけいれんが起こる方が良くないと言われています。逆に頭を打ってすぐに起こるけいれん(こう言ったものを即時型けいれんと言います)の場合には、完全に治って、後でてんかんのようにけいれんを繰り返すような後遺症が出ることはほとんどないと言われています。

しかし、いずれにしても意識をなくすほど、あるいはけいれんが起こるほど頭をひどく打った時には、脳振盪だけで心配のないこともありますが、脳挫傷(のうざしょう)と言って脳に傷がついている場合もないとは言えませんので、一度はCTスキャン検査などで詳しく調べておいた方が良いと思います。

さて頭を打ってから最も注意が必要なのは、その時はどうもなくても、しばらくして頭の中に内出血が起こって命にかかわることがあると言うことです。

頭の中の内出血の起こり方には、いくつかあります。ひとつは頭を打ってすぐ昏睡状態となり、昏睡が続いているうちに内出血が起こるような重症の方の場合です。この場合、意識がなくて大変だと言うことで、普通、救急車で病院に運ばれるでしょう。そんなことから、内出血の発生が見逃されることはまずありません。

結局、問題となりますのは、頭を打って意識を失わなかった場合、あるいは一時的に意識を失ったけれどその後、意識が回復したため、良くなったと油断しているうちにしばらくたって内出血が起こってくるような場合です。

さて頭を打って内出血が起こった方の調査で、次のようなことが分かっています。

  1. 頭を打ってから内出血の起こるまでの時間のうち、一番多かったのは6時間以内であった。また、長くても1〜2日位の間のうちに内出血が起こっていた。
  2. 内出血の起こった方の9割には、頭の骨に骨折(ヒビ)がみられた。
  3. 内出血が起こった方の9割では、頭を打った時に程度の差はあるにせよ、意識障害がみられた。

そこで頭を打った際に。意識障害が見られた時には、少なくとも2日くらいの間は内出血が起こらないかどうか、慎重に経過を見る必要があると言うことになります。

なおレントゲン検査を受けて頭の骨に骨折を生じていないかどうかをチエックしておくことも大切です。そして、もし骨折がみられたならば、1〜2日の間に内出血が起こる可能性が高いと言うことで普通、入院して経過をみた方が安全です。

7.頭を打った後、家庭で様子をみる時のポイント

頭を打った後、家庭で様子を見る時の注意点について教えて下さい。

頭を打って意識障害を起こさなかった場合、あるいは頭の骨に骨折が見られなかった場合であっても、絶対に内出血が起こらないと言う分けではありません。しかし普通、こういった場合には入院せずに、家庭で様子を見ることになります。そこで家人の方は頭の中に内出血が起こった時に出てくる症状についてあらかじめ知っておく必要があるのです。

頭の中に内出血が起こった時には、出血によって頭の中の圧力が上がります。そこで、まず、頭痛、すなわち頭の痛みが時間がたつとともにだんだんひどくなってきます。一方、頭を打った時の打ち身による痛みは、時間の経過とともに和らいで軽くなってくるのが普通です。ところが内出血の頭痛は、打ち身の痛みと違って、和らぐどころか、時間とともに、だんだんひどくなると言う点が異なっています。

例えば、頭を打った時には、たいして痛くはなかったが、しばらくして頭が痛くなってきて時間の経過とともに耐え難いほど強くなってきたとか、頭を打った時には、打った所がひどく痛んだけれど、しばらくして痛みは和らいできた。ところがもうしばらくして再び頭が痛くなって、しかも急速にその痛みが強くなってきたというような経過をとります。この痛みは出血が続いている限り自然に和らぐことはありません。そしてあまりの痛みのために、不穏状態(ふおんじょうたい)と言って痛みに耐えられずに暴れだす人もいます。なお小さな子供さんで、自分では頭が痛いと言えない場合でも、痛みのために極端に不機嫌となって、いつもと様子が違うと言うようなことになります。

続いて、しばしば嘔吐が起こります。「頭を打った後で吐いたら怖い」とよく言われるのはこのためです。嘔吐がみられた場合、大人と子供ではかなり異なっています。すなわち頭を打った後で、大人の方に嘔吐が起こった場合、頭の中の内出血をまず疑う必要があります。ところが小児の場合には、内出血が起こったならば、もちろん嘔吐が起こるのですが、頭を打って(特に後頭部を打った時)単なる脳振盪を起こしただけでも(内出血がなくても)、しばしば何回も吐くことがあります。 こういった小児の脳振盪による嘔吐は、頭を打ってから普通24時間以内に治ります。つまり子供さんの場合には吐いたからと言って必ず内出血が起こっている訳ではないと言うことになります。

内出血が起こると、頭痛、嘔吐に続いて意識障害が起こります。意識障害が起こりますと、眠ったような状態となり、反応が鈍くなって、呼んでも、あるいはゆすって刺激しても起きないと言う状態となります。この意識障害が進みますと昏睡(こんすい)状態となって、イビキをかくようなります。その頃には、しばしば瞳孔不同(どうこうふどう)と言って、目の玉の黒目の部分の大きさが左右で違ってきます。

手術をして助かるのは、このあたりまでの時期までであって、これ以上進行しますと手遅れと言うことになります。

さて頭を打った後、内出血を生じて意識障害が起こってしまいますと、当たり前の話ですが、自分で助けを呼ぶことはできなくなります。そこで頭を打った後の人を決してひとりで放っておいてはいけません。そして家庭で様子をみるときに問題となりますのは特に夜です。すなわち、夜は誰でも眠ってしまうので、頭を打った後は時々、起こして、起きるかどうかを誰かがチエックしてあげないといけません。なお、頭を打った後は睡眠薬や安定剤、風邪薬(普通、眠くなる成分が入っています)などを服用してはいけません。もちろんお酒もです。薬やお酒で眠っているのか、内出血で意識がおかしくなっているのかが分からず、内出血の発見が遅れ、手遅れになることがあるからです。

なかでも最も問題が多いのは、お酒を飲んで頭を打った時です。お酒を飲んだ時にはひっくり返って頭を打ちやすいことから、しばしばこのような状況が生まれます。内出血が起こって頭が痛くなると不穏状態と言って暴れだすことがあることは先に申上げました。これがお酒を飲んで暴れているのと間違えられて放っておかれるケースがしばしばみられます。さらに、お酒を飲むと眠ってしまうことが多いのですが、内出血で昏睡状態となっているのか、お酒を飲んで寝ているのか、しばしば間違えられて放っておかれることにもなります。翌朝になっても起きてこないので、これはおかしいと言うことで、病院にかつぎこまれ、そこで内出血によると分かったが、すでに時間がたちすぎて手遅れと言うようなことが、世の中では実際少なからず起こっているのです。

なお年配の方では、慢性硬膜下出血と言って頭を打ってから何ケ月か経ってから頭の中に出血が起こることがあります。頭の打ち方も、ひどく打った時はもちろんですが、鴨居(かもい)や机のカドでちょっと打った時などと言う程度でも起こったりします。この慢性硬膜下出血の場合の症状としては、頭痛が起こることもありますが、むしろボケ症状が目立つことが多く老人性痴呆症(認知症)と間違えられたり、あるいは半身の手足の麻痺などが起こって脳梗塞と間違えられたりすることもあります。年配の方では、頭を打った時には、打ったことを忘れないようにしておき、何か変な症状が出た時には頭を打ったことによる慢性硬膜下出血を疑ってみることも必要です。

menu