頭が痛い(頭痛の知識)

頭が痛い(頭痛の知識)

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  1. 頭痛の原因
  2. 心配な頭痛
    1. くも膜下出血
    2. 解離性動脈瘤
    3. 脳腫瘍による頭痛
    4. 慢性硬膜下血腫
    5. ウィルス性髄膜炎
  3. それ以外の心配な頭痛
    1. 緑内障
    2. 側頭動脈炎
    3. 副鼻腔炎
    4. 顔面帯状疱疹
  4. 心配のない頭痛
    1. 緊張型頭痛
    2. 後頭神経痛
    3. 片頭痛
    4. 群発頭痛
    5. 三叉神経痛
    6. 低髄液圧性頭痛
    7. 薬剤誘発性頭痛
    8. 慢性連日性頭痛
    9. 慢性発作性片側頭痛

1.頭痛の原因

頭の中の病気によって起こる頭痛には要注意

頭痛は頭の中の病気によって起こる場合があります。例えば脳腫瘍、くも膜下出血などによる頭痛で、このようなはっきりとした原因があって起こる頭痛を症候性(しょうこうせい)頭痛(ずつう)と呼びます。こんな危険な頭痛は放っておくと、命にかかわることもあって油断は出来ません。

頭痛の中には頭痛薬で様子を見ていてはいけないような場合もある

そこで、「普段、頭痛などなかったのに頭痛が起こった」。「頭痛持ちの方でも、いつもと違った頭痛が起こった」。「いつもはすぐに直っていたのに、なかなか治らない」。あるいは、「いつもは頭痛薬で治っていたのに、今回は治らない」などといった場合、手遅れにならないうちに専門医を訪れ、精密検査を受けておかれると安心です。

実は、頭痛の原因のほとんどは頭の中ではなくて頭の外にある

頭痛は、いろいろな原因で起ります。その多くは何年も前からの慢性の頭痛で、たいていの患者さんは頭の中の病気に悩まされていると思っておられるようです。しかし、実際のところ、慢性頭痛のほとんどは、その原因が頭の中にあるのではなくて、頭の骨より外側の部分にある血管や筋肉が痛むことによって起こっています。その代表的なものが緊張型頭痛と片頭痛の二つで、両者であらゆる頭痛の90%以上を占めると言われ、こう言った頭痛は機能性(きのうせい)頭痛(ずつう)とも呼ばれます。こう言った頭の外が原因で起こる頭痛で命にかかわるものはありません。

鼻、目、歯、顎関節の病気などで頭痛が起こることもある

頭痛は鼻の病気(例えば蓄膿症、副鼻腔炎)、目の病気(眼性疲労、緑内障(りょくないしょう))、歯の病気、耳の病気(中耳炎)、顎(がく)関節症(かんせつしょう)(あごのかみ合わせが悪い、入れ歯が合わない)など様々な原因によって起こることもあります。

このうち緑内障では、くも膜下出血とそっくりの、ひどい頭痛や嘔吐が起きることがあります。それと分からず放っておくと失明(目が見えなくなる)に至ることがありますので注意が必要です。

2.心配な頭痛

頭痛は、しばしば「血圧や風邪のせい」にされることが多い。しかし高血圧や風邪では頭痛が起こらないと考えた方が良い

頭痛の原因の大半は、ストレスや疲労、肩こりなどから起こる緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)と片頭痛に代表される血管性頭痛のふたつで、この両者で全体の90%以上を占めます。いずれも心配のない頭痛です。しかし、多くはないのですが、頭痛の中には放置すると生命にかかわるものがあります。大切なことは、手遅れになったりしないよう、「心配な頭痛」、つまり「緊急の処置を要する頭痛」とはどんな頭痛なのかを知っておくことです。ところが、そのあたりがなかなかに難しいようで、「まず近くの先生に診てもらったんだが」と言うような患者さんの中に、「風邪のせいでしょう」とか「血圧が高いからでしょう」と言われたと言うような方がよくおられます。頭が痛い時に血圧を測って、たまたま血圧が高ければ「血圧が高いせいだろう」と考えてしまいがちです。しかし、血圧が高いだけでは、これが極端に高い、すなわち220mmHg以上とか言うようなレベルを超えないと、例えば160や170位、あるいはたとえ180mmHg位に上がったとしても、この程度の血圧で頭痛が起こることはありません。結局、ほとんどの場合、血圧と頭痛とは無関係で、たとえ血圧が高くても、そのせいで頭が痛むことはないと考えて間違いありません。

あるいは、頭が痛いと、「風邪でもひいたのかな?」と考える方も多いようです。もちろん風邪で頭が痛くなることもあるかもしれません。しかし風邪と言うのは、ウィルスによる急性の上気道への感染ですから、のどや鼻の痛みもなく、咳も痰も出なくて、要するに、そう言う症状が全くなくて、唯一の症状が頭痛だけと言うような風邪はありません。あるいは、たとえ風邪をひいておられたとしても、発熱もないような風邪で頭が痛むこともないと考えた方が良いでしょう。結局、高血圧や風邪は普段は「悪者」には違いないのですが、こと頭痛に関しては、「血圧や風邪」は、その「犯人」ではなくて「無実」であることがほとんどなのです。一番の問題は、心配な頭痛を「血圧や風邪のせいだろう」と考え、しばらく様子を見ているうちに、手遅れになってしまうと言うようなことが、現実に、しばしば起こっていることです。つまり、早く「真犯人」を探し出して治療しなければいけない場合があるのです。

なお、例外として、風邪をひいて、何日かしてから、ひどい前頭部や額(ひたい)の頭痛が起こることがあります。これは風邪から副鼻腔炎を併発された場合に多い症状です。また、多くはありませんが、風邪のウィルスが頭の中に入り髄膜炎(ずいまくえん)を起こすことがあり、この場合も頭痛が起こることになります。

普段、頭痛持ちの方に別のタイプの頭痛が起こることもある。このような場合、普段の頭痛にまぎれて、かえって「心配な頭痛」が見逃されることが多い。

もちろん、普段頭痛などめったになかった方に頭痛が起こった場合は、「これは大変だ」とか、「どうもおかしい」と言うようなことになるでしょう。しかし、結構、問題が起こりやすいのが、普段頭痛持ちの方に別のタイプの頭痛が起こった場合です。頭が痛いのに違いないことから、「また、いつもの頭痛だろう」などと頭痛薬で様子をみたりされることになりがちです。しかし頭痛持ちの方に、別の種類の頭痛、例えばくも膜下出血などが起こらないとは言えません。このような場合、いつもの頭痛にまぎれて、かえって見逃されてしまったりすることになりがちなのです。

1) くも膜下出血

突然に起こった頭痛には要注意、くも膜下出血の場合がある

結局、あらゆる頭痛のうち、最も注意が必要な頭痛とは、脳卒中によって起こるもの、なかでも「くも膜下出血」によるものです。このような「危険な頭痛」は、そうとは知らずに様子をみていると、命にかかわることが多いのです。この「くも膜下出血」の頭痛の特徴は、頭痛が「突然に」起こることです。すなわち、それまでどうもなかったのに急に、「何かに当たったように」、あるいは、「何かに殴られたように」、ガーンあるいはドーンと痛くなる。そのような場合には、たとえ夜中に痛くなった時でも、朝まで様子を見てはいけません。すぐに医師に相談する必要があります。

くも膜下出血の頭痛の特徴は、未だかって経験したことのないようなひどい頭痛が突然に起こることである

くも膜下出血のほとんどは、脳の動脈に動脈瘤と言う血管のコブ(小さな風せんのようなもの)が出来て、これが破裂して頭の中に出血することによって起こります。この脳動脈瘤が破れて出血すると、脳の表面にあるくも膜の下にある髄液腔、すなわち「くも膜下腔」への出血となります。そこで、くも膜下出血と呼ばれるのです。どのような時にくも膜下出血を疑うかですが、くも膜下出血の頭痛の特徴は、なんと言っても「突然に起こる」ことです。すなわちくも膜下出血を起こされた方に聞いてみますと、例えば「朝9時35分に急に激しい頭痛が起こった」などと、常に頭痛の起こった時間がはっきりとしています。そしてたいてい吐き気や嘔吐を伴います。痛みが次第に痛くなったなどと言うのは、くも膜下出血ではありません。例えば、片頭痛では頭痛が始まってから1時間程度で痛みは最強に達します。秒単位で最高に達する、あるいは1分以内に症状が完成するような突発性の頭痛はくも膜下出血と考えて間違いがありません

結局、くも膜下出血の頭痛の特長は、急にド−ンと痛くなって何日か持続する。つまり、常に何時何分に頭痛が始ったかと言うことが明らかであると言うことです。場合によっては何時、何分、何秒というくらいに頭痛の始まりがはっきりしています。こう言う突発する頭痛があれば、まずくも膜下出血と考えて間違いがありません。次に、今まで経験したことのないほど強烈に痛い、そしてしばしば後頭部や首の付け根の部分に痛みを覚えます。また、くも膜下出血の場合、1/3 の方では頭痛と同時に失神ないし気が遠くなる感じ(意識喪失感)が起こります。もちろん、くも膜下出血でひどい発作の際には、突然、意識を失って倒れ、昏睡状態となってしまうこともあります。このような場合は、たいてい救急車で運ばれることになるので、むしろ見逃されてしまう可能性は少ないのです。

しかし、診断の面で問題になるのは、むしろ頭痛の程度が軽い時です。結局、くも膜下出血でも、軽い痛みの場合に、風邪や高血圧と間違えられることが多いのです。しかし、くも膜下出血はたとえ軽くても、これを治療せずに放っておくと、早晩、命にかかわることになる病気です。例えば、軽症のくも膜下出血でも、その17%以上が24時間以内に再出血をきたすとの報告もあります。やはり突然に起こった頭痛では、それが軽かろうが重かろうが、常にくも膜下出血の可能性を考え、すぐに専門医の診察を受ける必要があるのです。たとえ夜中に起こったとしても、朝まで待ってからなどと悠長なことを言っていてはいけません。なお、普段からの頭痛持ちの患者さんが、くも膜下出血を起こしてはいけないと言う理由はありません。しかし、こういった場合がかえってまぎらわしく、「いつもの頭痛でしょう」、と言うことになりがちです。なお、くも膜下出血の頭痛では、多くの場合、動くと痛みが強くなるので、あまり頭を動かしたがらないと言う特徴があります。

くも膜下出血では、軽い出血の場合や発病から時間がたっている場合にはCTスキャンに写らない。突発する頭痛の場合、CTが正常であったからと言って、安心してはいけない。

軽いくも膜下出血や、日にちがたったくも膜下出血はCTに写らないことがあります。そこでCTが正常であるからと言って、くも膜下出血ではないと言えないことに注意して下さい。たとえ、CTに何も写っていなくとも、突発する頭痛であるならば、くも膜下出血の疑いが強いので、間違いなく、くも膜下出血ではないとの確診が得られるまではけっして安心してはいけません。これを確実に調べるには、腰のところから注射をして髄液を調べ頭の中に出血していないかどうかを調べる必要があり、この手技を腰椎穿刺(ルンバール)と言います。

くも膜下出血後の死亡原因は再出血によることが多く、治療しなければ、その2/3は再出血、あるいは再々出血のために死亡する。再出血は、初回出血後24時間以内、中でも6時間以内に多い。

Drakeは、初回出血から助かったとしても、治療しなければ、さらに30%位もの方が再出血により死亡すると述べています。つまり、たとえ初回出血から助かったとしても、結局、再出血により亡くなる方が多いのです。結局、保存的治療(手術をしなければ)では最終的な死亡率は75%を越えると言われ、脳動脈瘤の治療とは、この再出血による死亡を手術により防止すると言うことにほかならないわけです。

くも膜下出血後の再出血は24時間以内が一番多く、この場合の死亡率は高い。

いったい再出血がいつ起こるのかと言うことについて、諸家の報告によりますと、再出血のピ−クは初回出血後24時間以内であるとのことでほぼ一致しています。さらに、6時間以内と言う報告もあります。すなわち、くも膜下出血は、一晩待たずにすぐに病院に行って頂かないと、夜中のうちに亡くなってしまうこともあります。

マブタが下がったり、物が二重に見えたりする症状はくも膜下出血の前ぶれであることがある

くも膜下出血では頭痛と嘔吐以外の症状が出ることはまずなく、むしろ、これが特徴のひとつとも言えます。しかし、唯一の例外として特殊な部分に出来た動脈瘤が破裂しそうになった時に、動眼神経(どうがんしんけい)麻痺と言って、マブタが下がったり眼瞼下垂(がんけんかすい)、眼球が内側に動かず物が二重に見えたり複視(ふくし)するような症状が出ることがあり、この症状を複視と言います。この複視は糖尿病などが原因で起こることも多いのですが、動脈瘤による動眼神経麻痺の場合、最初、眼瞼下垂から始まることが多く、塞がった眼瞼を持ち上げてみると、眼球は動眼神経麻痺のために外転位(外側を向いている)をとっています。そして、瞳孔をみますと脳動脈瘤のように神経の外からの圧迫の場合では瞳孔が大きくなりますので、そのせいで散瞳と言って拡がった状態となり、その結果、いわゆる瞳孔不同と言う状態となります。この症状は動脈瘤が、大きくなって破れる寸前になった時に起こる症状なので、動眼神経麻痺をみたら、まず脳動脈瘤を考えて、すぐに専門医の診察を受けることが大切です。

突然に起こった頭痛では小脳出血の場合がある。

脳出血でも頭痛が起こりますが、脳出血の場合、たいていは半身の麻痺や言語障害などの症状と同時に頭痛が起こります。この脳出血の頭痛も、くも膜下出血と同じで突然に起こる特徴があります。一方、脳出血のうち、出血が小脳と言う場所に起こった場合には手足の麻痺がなく、症状が頭痛と吐き気だけであって、くも膜下出血の発作とそっくりの場合があります。この小脳出血も命にかかわる病気ですので、やはり注意が必要です。さらに、頭痛とめまいが同時に出現した場合には小脳出血の可能性が高いと考えられます。

2、解離性動脈瘤

片側の項部(うなじ)から後頭部にかけて急に痛みが起こった時には要注意。解離性動脈瘤の場合がある。

一般の方には、あまりよく知られていない病気に解離性(かいりせい)動脈瘤と言う病気があります。ところが、この病気が最近、かなり多い病気であると言うことが分かってきました。この病気はくも膜下出血や脳梗塞の原因となり、ことにくも膜下出血を起こした場合には死亡率が高いのです。この解離性動脈瘤は、急激な頭部回旋、例えば、カイロプラステイク治療、交通事故、美容院でのシャンプー後、首の回旋を伴う水泳、野球やゴルフ、フイットネススクールでの首の運動など、いろいろなスポーツ、あるいはヨガ、カイロプラスティックなど頸部を捻転するような運動や軽い外傷を契機として発病することがしばしばです。

この解離性動脈瘤の発病時の平均年齢は40歳位で、男性によくみられます。すなわち、この病気は50歳以下の比較的若い方の脳梗塞の原因として結構多いもので、最初は頚部痛や後頭部痛で始ることが多いようです。そこで、中年の成人に片側の後頚部から後頭部にかけての頭痛が突発した時には解離性動脈瘤を疑わなければなりません。なお、脳幹部の脳梗塞として有名なワーレンベルグ症候群は解離性動脈瘤によることが多いと言われています。そこで頭痛に始まり回転性のめまい、さらに脳幹部症状が出現した場合にも、やはり解離性動脈瘤を疑う必要があります。

3.脳腫瘍による頭痛

脳腫瘍では、次第に強くなる頭痛、朝起きた時に強い頭痛、吐き気がなくて突然吐いたりするのが特徴

脳腫瘍の痛みは、くも膜下出血と反対で、一般に何日か、あるいは何ケ月もかけてだんだん痛みが増して来る特徴があります。また、この頭痛は朝起床時に強いことも特徴のひとつで、夜間睡眠中には頭蓋内圧が高くなる関係で朝起床時に一番痛い。それで朝の頭痛と呼ばれます。そして吐くこともありますが、吐くことによって脳圧は一瞬下がり、吐くと頭痛が一時的にせよ軽くなると言う特徴があります。なお片頭痛の嘔吐には、嘔気が先行するのが普通ですが、嘔気がなくて、突然に嘔吐するときには脳圧亢進を第一に考える必要があり、脳腫瘍などによる頭痛がこれにあたります。

4.慢性硬膜下血腫

お年寄りの方のボケ症状や頭は、頭の中の出血による場合がある

お年寄りの方では、頭を打ってから何ケ月もたってから、次第に頭の中に出血してくることがあり、このような出血を慢性硬膜下出血と言います。頭を打ったと言っても、かもいでコッンと頭を打ったなどの軽微な外傷でも起こります。そして、出血するとしても、打ってからずいぶん時間がたってからなので、患者さんは頭を打ったことを忘れていたりして、頭を打ったかどうかもはっきりしないこともしばしばです。またアルコール多飲者に多いのですが、その理由としてはアルコール多飲による肝機能障害からくるホルモン異常のせいであるとか、あるいは酒を飲むせいで、よくひっくり返って頭を打つからであるなどといろいろ言われています。この場合の頭痛も、やはり、だんだん痛くなってくる特徴があります。また、立位や頭を振ったときに頭痛が増強することもひとつの特徴です。

この出血では、しばしばボケ症状が出てくるので、年をとってボケてきたと間違えられ、放っておかれて手遅れになってしまうこともあります。また、精神病と間違えられて精神科の病院に入院させられていたような方もあります。この病気は手術により劇的な改善が見られます。年をとってボケてきた場合も、このような治療で直るボケの場合もあるので、一概に年のせいだとあきらめてしまわないで、一度は精密検査を受けられるべきでしょう。なお、慢性硬膜下出血では半身の麻痺が起こったりすることもあり、脳梗塞と間違えられたりすることもあります。

5.ウィルス性髄膜炎

ウィルス性髄膜炎の頭痛は梅雨から初夏にかけての頃に多い

初夏や梅雨の頃には、夏風邪にかかり、それからくる下痢などを起こされる方が多い。この夏風邪や下痢は、ウィルスによる感染の症状でたいていの場合は大事にいたらず直ってしまう。ところがこのウィルスが頭に入って髄膜炎(ずいまくえん)を起こし、ひどい頭痛が起こってくることがあります。髄膜炎を起こすようなウィルスにはコクサッキーやエコーなどの腸管ウィルス、エンテロウィルスによることがしばしばです。この髄膜炎の診断には、腰椎穿刺(ルンバール)と言って、腰の所に注射を行ない、髄液(ずいえき)と言う水の成分を調べると髄膜炎にかかっているかどうかが分かります。ウィルス性髄膜炎は、たいていの場合、安静にしていると自然に直ってしまうのですが、中には、ひどくなって脳炎になる方もあります。特に問題となるのは、ヘルペスと言うウィルスの場合で、これが脳炎を起こすと非常に死亡率が高い。やはり、この頃の頭痛では早目に診察を受けられることが大切です。

3、それ以外の心配な頭痛

緑内障では、くも膜下出血とそっくりのひどい頭痛や嘔吐が起きることがある。

1)、緑内障(りょくないしょう)

くも膜下出血と極めて似た症状が起こる病気に急性偶角閉塞緑内障という病気があり、実際、目の症状がほとんどなくて頭痛だけのことがあります。この緑内障では、これと分からず放っておくと失明(目が見えなくなる)に至ることが多いのです。この緑内障では治療しなければ、その1/3の方に失明を生じるのですが、発症から24から48時間以内に適切な治療が行なわれないと、結局、永久に目が見えなくなってしまうことになります。もともと眼球の内部では、房水と言う水が循環しています。この房水の流れている経路がつまった場合、眼圧が上がって頭痛、嘔気、嘔吐が出現します。要するに、目の症状がない頭痛、嘔吐だけの緑内障発作があるので注意が必要です。

2)、側頭動脈炎

年配の方に多い病気で、頭の外の動脈に炎症が起こって頭痛がする側頭動脈炎と言う病気がある。これに気付かないでいると視力障害、すなわち目が見えなくなってしまう。

この病気は老年者に多く、適切な時期に治療が行なわれないと失明にいたる病気です。この病気は膠原病のひとつで、頭皮の動脈が発赤、結節状に肥厚してくるので、それと分かります。血液検査で炎症の程度を調べる血沈が亢進していることがしばしばです。

3)、副鼻腔炎(蓄膿症)

うつむいた時に強くなる頬部(ホッペタ)、前頭部、額(ヒタイ)などの痛みは副鼻腔炎(ふくびくうえん)が疑わしい

副鼻腔炎は日本人に非常に多い病気で、副鼻腔すなわちホッペタの部分にある上顎洞やヒタイの部分にある前頭洞と言うところに膿が溜まる病気です。もちろん副鼻腔炎は耳鼻科の病気ですが、鼻汁や発熱もなく急激に起こる頭痛だけが症状であると言った場合もしばしばです。もちろん副鼻腔炎は風邪を引いたあとに起こることも多いのですが、それもはっきりしないことも多いようです。この副鼻腔炎の痛みは、一般に前かがみになったり、うつむいたりした時にひどくなる特徴がみられます。なお、年配の方の上顎洞炎で問題となりますのが、上顎癌との合併が多いと言うことで、上顎癌の70から80%に上顎洞炎を合併しています。

4)、顔面帯状疱疹(ヘルペス)

ヘルペスに気付かないでいると、一生痛みの後遺症で苦しむことになる

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とはヘルペスウィルスによる感染によって起こり、かかった部分に発疹を生じてこれがひどく痛む病気です。なお、額(ヒタイ)の部分(三叉神経第1枝)は帯状疱疹の好発部位のひとつです。ところが、この病気は発疹の出現する数日前から痛みが始まるのが普通で、この痛みだけの時期には、すなわち発疹が出現するまでの間は、帯状疱疹にかっているかどうか分からないのです。そこで、額の部分が痛んだ場合は、たとえ発疹が出ていなくても、一応、この病気の可能性も考えておいた方が安全です。なお、顔面神経に麻痺が起こって顔がゆがむ病気のうち、結構多いものがベルの麻痺と言われる病気です。この病気の原因は、まだ完全には分かっていないのですが、やはり、ヘルペスウィルスが関係しているのではと考えている医師も多いようです。ところで、やはり、この顔面神経麻痺の起こる、数日前に耳の後ろや、その回りの痛みが起こることがあります。そこで、この部分が痛んだ場合には、一応、後に顔面神経麻痺が起こってくる可能性も考えておいた方が良いでしょう。

4、心配のない頭痛

頭痛の原因のほとんどは、実は頭の外にある

慢性頭痛の原因の大半は、機能性頭痛、すなわち器質的疾患によるものではありません。実際、ほとんどの場合、その原因が頭の中にあるのではなくて、頭の骨より外側の部分にある血管や筋肉が痛むことによって起こっているのです。その代表的なものが片頭痛と緊張型頭痛と言われるもので、両者であらゆる頭痛の90%をしめます。これら片頭痛、緊張型頭痛に、群発頭痛を加えた3つは頭痛3兄弟も呼ばれます。

1)、緊張型頭痛

最近、肩こりや首こりが原因の頭痛が増えている。悪い姿勢がその原因のひとつ。

緊張型頭痛は、かって筋収縮性頭痛と呼ばれた頭痛です。緊張型頭痛では、頭の回りの筋肉が凝ってきて、それが自分の頭を締め付けるため頭が痛くなってくるのです。「孫悟空の頭痛」と言えば、お分かり頂けるでしょうか?。このタイプの頭痛は、「肩こり」になぞらえますと、言わば「頭こり」とも言える状態で、それには2つのタイプがあります。ひとつは「肩こり緊張型頭痛」と呼ばれるもので、このタイプの頭痛には、うつむき姿勢などの悪い姿勢が関係しています。すなわち肩こり仕事、例えば、一日中うつむいてパソコンを打っているとか、前かがみの仕事をしていると言った場合に、肩から首の後ろの筋肉がこってきて、それが頭の後ろの筋肉に拡がり、さらに頭痛になってゆくと言うものです。つまり首や頭の後ろの筋肉の緊張状態が長く続いたことにより、頭の筋肉が持続的に収縮(こった状態)するために起こるのです。例えば肩の筋肉がこった場合には、日本人に多い「肩こり」として自覚されますが、頭の筋肉がこってきた場合、人はこれを「頭痛」として感じる訳です。このタイプの頭痛は、どちらかと言えば、首が細くて長めの人に多く、女性に起こった場合、ペコちゃんの頭痛(不二家の人形)と呼ばれたりすることもあります。なぜなら人間の頭は体重の1/8と言われ、例えば、スイカやボーリングのボールにたとえられるぐらい結構、重いものです。ところが、それを支える首が細かったり、長かったりすると、首の回りの筋肉にかかる負担が常に大きくなるからなのです。

頚椎のレントゲンをとってみますと、通常、頚椎の骨には横から見ると中央がやや前方に出るような湾曲が見られるのが普通ですが、このタイプの頭痛の方の場合、しばしば頚椎が直線化(真っ直ぐになっている)していたり(これを生理的前彎(ぜんわん)の消失と言う)、あるいは後湾(こうわん)と言って中央が後方に出るような形、すなわち正常とは反対の湾曲となっていることがしばしばです。このタイプの頭痛の方は、本を頭の上にのせて落ちない姿勢がいちばん良い姿勢なので、これに心がけるのが良いと言われ、これを文庫本療法と言います。

ところで、頭の皮膚の表面の感覚を司る神経は、首にある脊髄から出て、首の付け根を通ってから、後頭部を通って頭ののてっぺんの部分にまで分布しています。首の後ろや後頭部の筋肉がこってくると、首の付け根の部分でこの神経が刺激され、そのせいで、しばしば後頭部から頭全体にかけての痛みが起こります。このような場合には、後頭部にある東洋医学で言う「天柱(てんちゅう)」と言うツボの部分を押さえると痛みが走るようになります(天柱症候群)。このような方では、この天柱の部分にブロックと言って痛みを和らげる少量の薬を注射すると劇的に効くことが多いのです。このようなブロック注射で痛みを和らげる治療をペインクリニックと言います。すなわち東洋医学では、この部分に針を打ったりするが、昔から日本人にはこのタイプの頭痛が多かったと言う訳なのです。

緊張型頭痛(筋緊張性頭痛)のもうひとつの原因は、肩こりや精神的緊張、ストレスである

緊張型頭痛のもうひとつのタイプは過労や精神的な緊張、あるいは何らかのストレスなどが続くことにより、やはり頭の筋肉がこってきて頭痛が起こると言うものです。すなわち例えば肩の筋肉がこった場合には、日本人に多い「肩こり」として自覚されますが、頭の筋肉がこった場合、人はこれを「頭痛」として感じる分けです。例えば、借金で頭が痛いとか、親不幸な子供を持った親が、心配からいつも頭が痛いと言っているような場合の頭痛がこれにあたります。また、会社の社長さんが借金で首が回らない、あるいは頭が痛いとおっしゃっているのは、ストレスから首の筋肉がこって、つっぱったため実際に首が回らなくなっているのです。

ところで、頭の回りで筋肉が存在する部分は、まず、咀嚼(そしゃく、アゴを動かせて物が噛む)に働く大きな筋肉が両方のこめかみから耳の上にひろがっている(側頭筋)。あるいは、頭を支える筋肉が首の付け根から後頭部(うしろあたま)にひろがっている(僧帽筋)。すなわち緊張型頭痛は、これらの筋肉がこった、いわば「頭こり」とも言える状態であると言えるのです。

緊張型頭痛では持続性のしめつけられるような痛みが起こるのが特徴

この緊張型頭痛の痛みの特徴は、鉄カブトをかぶったようだとか、ハチマキで頭をしめつけられるようだとか、ひどいときは万力で頭をギリギリとしめつけられるようだと表現され、孫悟空の頭痛と呼ぶ人もあります。緊張型頭痛は片頭痛のような発作性の頭痛ではなく、頭痛の始りはいつとはなしで、慢性的に一日中かつ毎日のようにだらだらと持続性に続くのが普通です。ただ、頭痛にはストレスや過労が関係しているので、1日のうちでは疲れの出やすい夕方、また1週間のうちでは週末(それで土曜日の頭痛とも言ったりしますが、最近では週休2日の影響で金曜日の頭痛と言う)に頭痛がひどくなったり、あるいは。曇天で悪化したりすることも多いようです、ストレスの多い現代ではこのタイプの頭痛はますます増加しています。なお、頭痛が起こると誰でもイライラすることから精神がさらに緊張し、あるいは頭痛自体がストレスとなってよけいに頭痛はひどくなって行くと言った風にどんどん悪循環を作る傾向があります。そこで、このようなタイプの頭痛の方では、ひどくならないうちに早目に治療を行ない悪循環を断っておくことが大切なのです。この頭痛を治すための一般的な注意としては過労を避け心身をリラックスさせることが大切です。併せて筋肉のこりをとる薬剤を飲んだり、理学療法を行なうと痛みはずいぶん和らぐ方が多いのです。

なで肩の方は、肩がこりやすい

肩こりは「なで肩」の女性に多のですが、これは「なで肩」の方では、腕の重さをささえる肩の筋肉(僧帽筋(そうぼうきん))にかかる負担が大きくなるからです。僧帽筋は、頭の後から首、肩、背中にかけてついている大きな筋肉で、腕を吊り上げるのが重要な働きのひとつです。そして単に腕をつり下げているだけでも、肩の筋肉には常に負担がかかって収縮している状態となり、筋肉内の血流が悪くなるのです。例えば、イスに座って机の上に手を乗せていた状態から手を宙に浮せた場合、肩の筋肉はそれまでより20倍もの仕事をしなければならなくなり、そのため筋肉内の血流は1/3に減ってしまいます。そして手を宙に浮せたままで仕事を続けますと、痛みを伴った肩こりが起こってくることになります。そこで肩こりの予防には、手をなるべく机の上、あるいはヒジ掛に乗せるなどして肩を休めてやることが大切なのです。また普段から壁押し体操あるいは腕立て伏せを行なって肩の筋肉を鍛えておくことも有効です。

参考:慢性頭痛の原因 (患者さんへのパンフレットから)

世の中で、慢性の頭痛を訴える人は少なくありませんが、その原因のうちの80%は緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)と呼ばれるものです。このタイプの頭痛は長時間うつむいた状態で仕事や勉強をする人によくみられます。うつむいていると首の筋肉が収縮して固くなり、その結果、筋肉の中の血液の流れが悪くなって、頭の後から痛みが始ります。特に頭の重さの割に首が細長い方では、頭をささえる首の後の筋肉に常に負担がかかりやすいので、このタイプの頭痛がしばしば起こります。そこで、この型の頭痛を訴える患者さんの2/3は女性、なかでも「首がほっそりとしたなで肩の美人タイプ」に多いのです。

「肩こり」もやはり「なで肩」の女性に多いようです。これは「なで肩」の方では腕の重さをささえる僧帽筋に常に負担がかかりやすいからです。僧帽筋は後頭部のところから、首、肩、背中にかけてついている大きな筋肉で、腕を吊り上げるのが大きな役目のひとつになっています。腕をブラ下げていると肩の筋肉に負担がかかりますが、常に筋肉が収縮していることになるため、血流が悪くなって肩こりが起こってくるのです。

参考:ぺコちゃんの頭痛

世の中には慢性の頭痛で悩んでいる方がたくさんおられますが、実は、そのうち約80%の方の頭痛の原因は筋収縮性頭痛と呼ばれるものです。これは長時間うつむいた状態で仕事や勉強をする人に起こりやすいタイプの頭痛で、うつむいた状態で長くいますと、その間、頚の後の筋肉が収縮したままとなって、筋肉の中の血液が十分に流れなくなり、そのため頭の後から痛くなってくるのです。

火星人や不二屋のペコちゃんは頭痛もちと言われます。火星人やペコちゃんと頭痛がどうして関係があるのかと言うと、どちらも頭が大きいのに首が細くて長いからです。頭の重さの割に首が細長いと、頭をささえる後頚筋(首の後の筋肉)に常に大きな負担がかかることになります。こう言う方がうつむくと筋肉の収縮がひどく、筋肉内の血液の流れも悪くなりやすいので、いつも頭痛に悩まさせると言うことになります。さて、この頭痛で困っている方の2/3は女性で、筋肉質の男性にはめったに起こりません。女性の中でも首が細くて「なで肩」の美人タイプに多いのは以上のような理由のためです。

このような頭痛の方では、頭の上に本を一冊のせてみて下さい。頭をまっすぐに起こしているつもりでも、本がすぐに前に落ちてしまう場合には、まだ頭がうつむき加減になっています。本が落ちない姿勢が、頭と首筋を真っ直ぐにした状態です。この時、首の後の筋肉に触れてみるとうつむいている時の固さがうそのように軟らかくなっています。その姿勢で5分位リラックスしていますと首の筋肉に血流が戻ってきます。

2)、後頭神経痛

頭にも神経痛が起こることがある。これが案外多い。

一般の方は、どこかが痛ければ、筋肉痛や関節痛などの痛みも、とにかく痛ければ神経痛と呼んでしまうことが多いようです。しかし、本当の神経痛とは、神経の中での放電現象によって生じるビリッとするような電撃的な痛みのことなのです。例えば、誰しも肘のところで神経の通っている部分を打ったりすると、手先に向かってビーンと痛みが走った経験があるでしょう。これが神経痛で、痛みの持続時間はせいぜい数秒です。

神経痛では、間欠的に、間をおいて痛みが起こり、痛みと痛みとの間は全く痛くないので、患者さんはニコニコしていると言う特徴がある

神経痛では、ビリッとした次の瞬間には痛みは止る特徴があって、痛みの持続時間は実際のところ通常、数秒間であり、だらだらと持続的に痛みが続くことはありません。そして痛みと痛みの間には間欠期と言って痛みの止っている時期が必ずみられます。

 神経痛の痛みは、表在性の痛み、すなわち皮膚の表面に近いところに感じると言う特徴があります。また、神経痛では一般に、神経痛を起こしている各神経の起始部に圧痛点を認める場合が多く、その近辺に痛みの誘発点や異常知覚を認めることがしばしばです。

頭の皮膚には、もちろん皮膚の感覚を司さどる神経が分布しています。例えば、顔面に分布しているのが三叉神経で、ここに起こる神経痛が有名な三叉神経痛です。なお、顔面神経麻痺と言う言葉はあっても、顔面神経痛と言う病気はありません。一方、頭部(主に髪の毛の生えているところ)には、以下の3本の神経が分布しています。

1、耳の後の付近の皮膚の分布する大耳介神経

2、側頭部に分布する小後頭神経

3、後頭部から頭頂部にかけて分布する大後頭神経

これら大耳介神経、小後頭神経、大後頭神経に起こる神経痛をあわせて後頭神経痛と呼びます。この後頭神経に神経痛が起こると、後頭部や側頭部から頭頂部にかけピリッ、ピリッもしくはビリッ、ビリッとした痛みが間欠的に走るようになります。

この後頭神経痛は、日常外来で非常に多いものであり、患者さんに聞いてみると、かなり痛いようで、夜間、痛みのために眠れなかったと言うような方もよくおられます。

この後頭神経は頚髄(首の部分の脊髄)から枝分れして頚椎の間を通り抜ける椎間孔と言う部分のあたりで神経が圧迫されたり、神経が通る後頭部の筋肉で圧迫されたりして神経痛を起こすのではと考えられています。なお、神経痛が起こるには、その神経が刺激されると言う何等かの原因が必ずあり、単に痛みだけが起こると言うことはありません。例えば、頚髄から出る第1、2頸神経より末梢への大後頭神経への走行経路のうちの圧迫性病変、例えば腫瘍などの症候性のものの場合がありますので注意が必要です。つまり痛みを抑えておけば良いと言うのではなくて、その原因を確かめておくことも大切なのです。

後頭神経痛の治療には、神経痛に有効なテグレトール(カルバマゼピン、この薬は抗てんかん薬や顔面けいれんの薬としても使用される)が有効です。但し、テグレトールは常用量を最初から飲むとふらつきや眠気が出やすいので、少量から開始して、少しずつ増量してゆくような方法で使用されます。どうしてもテグレトールが使用できない場合には、アレビアチン(フエ二トイン)やリボトリール(クロナゼパム)が使用されます。そのどちらも、やはり、抗てんかん薬としても使用されるのですが、テグレトールにくらべ効果は劣ります。アレビアチンは常用量から開始して大丈夫です。リボトリールは眠気が出やすいのが難点です。なお、神経ブロック、すなわち後頭神経ブロックには速効性があり、かつ有効なことが多いのです。稀に、後頭神経痛は、後頭神経のヘルペス(帯状疱疹)によることがありますが、ヘルペスの発疹が髪の毛に隠れて気付かれないことがありますので注意が必要です。

あるいは、顔面神経麻痺を起こす病気のうち日常診療の場では、特発性末梢性顔面神経麻痺(いわゆるベルの麻痺)がよくみられます。この顔面神経麻痺の原因のうちかなりがヘルペスウィルスではないかとも言われています。このような顔面神経麻痺の起こる数日前に耳介周囲あるいは後部の神経痛様の痛みが起こることがしばしばです。しかし顔面神経麻痺が起こる前の痛みだけの時期では、それとは分からないので、この部位の痛みを訴える場合には、後に麻痺が出現しないかどうかに注意する必要があります。

参考:頭の神経痛(患者さんへのパンフレットから)

頭痛にもいろいろあって、「あなたの頭痛は神経痛です」と申し上げますと、「エッ、頭にも神経痛があるの?」とビックリされる方が多いのですが、頭にも神経痛があります。ところでおじいちゃん、おばあちゃんは手足が痛むたびに、「また神経痛が出た」とよくおっしゃっいます。ところが、これは「筋肉痛や関節痛」の場合がほとんどで、神経痛ではありません。神経痛とは、神経が刺激を受けたせいでビリッとした電撃的な痛みが走る場合を言います。例えば、どなたも肘のところで神経の通っている部分を打った時、手先に向かってビーンと痛みが走った経験があるでしょう。これが神経痛で、ズキッ、ズキズキッとか、ピリッ、ピリピリッなどと痛み、ビリッとした次の瞬間には痛みは止る特徴があります。つまり痛みの続く時間は実際は数秒間、このような短時間の痛みを繰り返して、だらだらと痛みが続くことはありません。そして痛みと痛みの間には、間欠期と言って必ず痛みの止っている時期があり、その間は、全く痛くないので患者さんはニコニコしていると言う特徴があります。顔面が痛むので有名な三叉神経痛、胸が痛む肋間神経痛も神経痛ですから、ずーっと痛むことはなくて、間を置いて短時間の痛みを繰り返すと言う特徴があります。ずーっと痛むのなら、別の病気を考えなくてはいけません。さて頭の皮膚にも、皮膚の感覚に働いている神経が分布しています。そして髪の毛の生えているところを走っている何本かの神経をまとめて後頭神経と言います。この後頭神経に神経痛が起こりますと、後頭部や側頭部から頭頂部にかけピリッ、ピリッもしくはビリッ、ビリッとした痛みが間欠的に走ります。後頭神経は首の部分の脊髄から枝分れし出ていて、神経が頚椎の間を通り抜ける椎間孔と言う部分で圧迫されたり、神経が通る後頭部の筋肉で圧迫されたりして神経痛を起こすと考えられています。つまり、頭は痛いけれど、その原因は首にあると言う訳です。なお、神経痛が起こるには、神経を刺激する何等かの原因が必ずあり、単に痛みだけが勝手に起こると言うことはありません。つまり痛みを抑えておけば良いのではなくて、その原因を確かめておくことが大切です。

3)、片頭痛

片頭痛では発作性にズキン、ズキンと脈に一致した拍動性の頭痛が起こる

片頭痛は発作性の頭痛で頭痛と頭痛とが間をおいて起り、一旦起れば痛みは数時間以上続きます。頭痛は数日ないし数週の間隔をおいて発作性に出現し、1回あたりの頭痛発作の持続時間は4から72時間であって、何日にもわたってだらだらと頭痛が持続するようなことはありません。実は片頭痛は頭の動脈が痛むことによって起こる頭痛なのです。そこで、動脈の拍動(脈)にあわせてズキン、ズキンと痛む特徴があります。

片側の頭が痛んでも片頭痛とは限らない。両側が痛む片頭痛もある。

片頭痛のことを英語ではmigraneと言いますが、これはラテン語でhemicraniaすなわち頭の半分が痛む病気と言う意味なのです。そんなわけで片頭痛は片側に出ることが多いのですが、約40%の方では両側が痛むこともあります。しかし、そのような場合でも片側優位の痛みを呈しやすい。つまり、純粋に片側だけが痛む片頭痛は、全体の60%くらいなのです。頭の半分が痛いので、自分の頭痛は片頭痛だとおっしゃっている頭痛持ちの方がよくおられますが、片頭痛の頭痛の特徴は発作性であること、また痛みが拍動性であることから、よく聞くと、片頭痛ではなくて緊張型頭痛であることも多いのです。

片頭痛の痛みは血管の拡張に伴うもので、主に頭蓋骨の外側でこめかみの方に向かう外頚動脈系の動脈で拡張が起こるのです。この痛みは、頭部の血管を冷やしたり、圧迫したりすると軽減する傾向があります。

片頭痛の痛みの原因は、頭の動脈がひろがって、その壁がひっぱられて痛むことによります。そのため、頭痛の性質はズキン、ズキンと脈に一致した拍動性の頭痛であり、発作中に、しばしば嘔気、続いて嘔吐を伴います。頭痛の極期の痛みはガンガンと表現されたり、あるいは血管がそれ以上に拡張出来なくなったためか持続性の痛みとして訴えられることもあります。発作の際に拡がって頭痛に関与する血管は頭の骨の外側のもののことが多い(外頸動脈系)のです。そこで、頭痛の起こった側のこめかみの部分(耳の前)で動脈(浅側頭動脈)を押えると頭痛が和らぐと言う事実に気付いている方も多く、頭痛が起こると耳の前を押さえる方もあります。あるいは痛んでいる部分を冷やすと動脈が収縮し痛みが軽くなりますが、これも同じ理由によります。あらゆる頭痛のうち生活に支障きたすような頭痛は、その80%が片頭痛であると言われます。片頭痛は、その激烈な痛みのために日常生活の遂行に支障をきたす度合いが非常に強い頭痛であり、例えば、歩くと頭に響いて全然歩けないと訴えたりする方もあって、頭痛の発作が起こるとまず仕事になりません。そこで、仕事を休まねばならない方が多いようです。

片頭痛の頭痛は光や音でひどくなる

また頭痛の発作の最中には、まぶしい光や、やかましい音で頭痛がひどくなる(光過敏、音過敏)ことが多く、光を遮った部屋でじっと耐えている方が多いうようです。そして、しばらく寝て起きると治っているようなことが多いようです。片頭痛では、また発作中に下痢、発熱などの自律神経症状が出ることもあります。

片頭痛は「朝、目が覚めたときから頭痛がする」というタイプが多いようです。寝すぎの場合も、あるいは逆に寝不足の場合でも頭痛が起こる可能性があります。また、ストレス(緊張)から開放(血管の拡張)された時に発作が起こりやすいので、例えば仕事が終わったアフターファイブ、あるいは週末や休日になった途端に頭痛が起こったりすることもあります。

片頭痛の発作は雑踏(酸素不足による脳血管拡張)、寝すぎ、炎天下、高温下、発熱、運動、飲酒、あるいは光、強い日差し、コンピューターの画面などによって誘発されやすいと言う特徴もあります。

1年のうちでは、春から夏にかけて多くなり、秋から冬にかけては軽くなる傾向があります。片頭痛の発作は明け方から起床前に多く、夜中に、あるいは目覚めた時に頭痛が現れていた経験があると言う人が多いのです。いずれにしても起床前に頭痛が現れたなら片頭痛の可能性が高いと考えられます。なお、慢性頭痛のうち夜間に出現する場合、片頭痛と群発頭痛である可能性が高いと言えます。片頭痛はチョコレート、チーズ、ワイン(特に赤ワイン)などの食物や飲み物により誘発されることがあります。

片頭痛は、若いうちに必ず発病し、遅くとも30歳までにあらわれることが多く、年をとってから初めて起こるといったことはない。

片頭痛は若年期に発症することが多く、そのほとんどが30歳までに発病しますが、10歳代に始めて出現することが最も多い(44.5%)のです、その次が20歳代(27.7%)、その次が10歳未満、(15.3%)、以上で87.5%です。つまり、50歳代や60歳代になって初めて片頭痛が出現することはないので、そのような場合には別の病気を考える必要があります。

片頭痛は年齢を経ると軽くなることが多い

片頭痛を持った高齢者では頭痛の程度は軽度になることが多いのですが、その分、頭痛の頻度が増え、そして発作の持続時間が長くなったりする傾向があります。また片頭痛は妊娠中にはあらわれないか、軽減することが知られています。

片頭痛では、稀に頭蓋内に脳動静脈奇形が隠れていることがあります。例えば、長年、片頭痛として治療を受けていて、その途中で脳動静脈奇形からの出血を起こしたような方の報告もあるので、注意が必要です。

片頭痛には遺伝性がある。母親が片頭痛なら娘の70%、息子の30%に片頭痛が出現する。これが父親の場合には、それぞれが約半数となる。

片頭痛は女性に多い病気で、血圧はどちらかと言うと低めの人に多いことが知られています。しばしば遺伝性が見られ、家族歴が46から95%に見られると言われます。例えば、両親ともに片頭痛なら70から75%の子供に、また片親だけの時には40から45%の子供に片頭痛を受け継ぐと言われ、すなわち片頭痛の方では母親や女性の兄弟に片頭痛持ちの方がいる場合が多いのです。

前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛があり、前兆としては視覚発作が多い。

典型的な片頭痛の発作(これを古典的片頭痛と言う)では、頭痛が起こる10から60分前に前兆(前ぶれの症状)があり、この前ぶれは通常5分ないし10分で消失します。前ぶれのうち多いものは視覚症状、すなわちギザギザした縁取りでギラギラと輝く物あるいは青白い物が見え、そのため見ているものが欠けて見えたりします(視野欠損)。これを医学用語では閃輝性暗点sintilating scotomaと言い、頭蓋内の血管、特に後頭葉の視覚中枢に行く後大脳動脈が頭痛発作に先立ち収縮することによって起こる亡血症状と言われています。そして、そうこうしているうちにズキン、ズキンと脈を打ったような頭痛が起こり始め、頭痛がひどくなった頃に吐き気がするようになります。そしてしばしば嘔吐がみられ、吐くと頭痛は少し和らぐことがしばしばです。また、眠ってから、目覚めると頭痛は直っていることが多いようです。片頭痛では、はっきりとした前ぶれがない場合でも、発作が起こる前に生あくびが出る、首すじが張った感じ、やる気のなさ、眠気、何となく変な気持ちになるなどと、なんらかの前ぶれがあって、これから発作が起こると言うことが分かる場合が多いようです。

片頭痛の発作には、一般の頭痛薬は効果がないことが多く、ひろがった動脈を元に戻す薬が特効薬として使用される。

これまで片頭痛の治療にはエルゴタミン製剤が使用されてきました。しかし、このエルゴタミン製剤は頭痛がひどくなってから服用しても効果が少ないと言う問題、また頻用すると頭痛を抑えるために服用したエルゴタミンによりかえって頭痛が引き起こされる(薬剤誘発性頭痛)と言った悪循環に陥ることが多く問題ともなっていました。

近年、片頭痛の特効薬として、欧米で以前から使用されてきたトリプタン系薬剤が使用できるようになり、現在、これが主流となっています。このトリプタン系薬剤のうち、最初に登場したスマトリプタンは選択的ロトニン受容体作動薬、すなわちセロトニンと言う物質によく似た作用を持つ物質で、直接的に拡がった動脈を収縮させる効果があります。またトリプタン系薬剤には、従来のエルゴタミン製剤と違って、頭痛発作が中等度からピークに達する時期に服用しても十分な効果が得られると言われています。また特に頸から上の動脈に対して特に血管収縮作用を示しますので、心臓や末梢動脈などでの副作用が少ないという利点があります。このスマトリプタンは片頭痛の50〜70%に有効と言われます。

片頭痛の起こる原因については、血管説、神経説などがありますが、現在、神経、血管説が有力です。すなわち、この「三叉神経血管説」によりますと片頭痛はつぎのようにして起こると考えられています。第1段階 なんらかのきっかけ(ストレスなど)により三叉神経が刺激される。 第2段階 三叉神経の終末から痛み物質(P物質など)が頭の血管に放出される。第3段階 その結果、血管の拡張と炎症がおこり、頭痛が起こる 。そしてトリプタン系薬剤は脳の血管と三叉神経のセロトニン受容体に働きかけて、痛みの原因となる物質(神経ペプチド)の放出を抑え、血管を収縮させるとともに血管の回りに起こった炎症そのものを抑え、頭痛を改善させる効果があると考えられています。

吐き気止めの薬で片頭痛の痛みが止まることもある
飲んだ薬を吐いてしまえば薬の効果は期待出来ない。

片頭痛では頭痛が起こると同時に嘔気、嘔吐がみられることが多く、せっかく頭痛薬を飲んでも、それを吐いてしまったりして、結局、この嘔吐により、薬剤が吸収されないと言うこともしばしばです。この嘔気、嘔吐に関しては、片頭痛の発作時に、同時に消化管の機能が低下することが多く、すなわち腸管膜動脈などの血管の収縮や拡張、あるいは消化管の蠕動運動異常などを伴うからと言われています。そこで以前から頭痛薬と同時に前兆の段階で制吐剤であるプリンペラン(メトクロプラミド)やナウゼリン(ドンペリドン)を飲んでもらうようなことが行なわれてきました。これらの薬は、吐き気止めですが、ドーパミン拮抗作用という薬効を持っていて、これが頭痛発作を途中で止めてしまうことがあります。要するにナウゼリン、プリンペランで頭痛発作を回避できることがありますので、前ぶれの段階で試みてみる価値があります。また、仮に発作を抑制できなかったとしても吐き気を抑えて薬剤を吐き出すようなことを防げるし、胃の蠕動運動を高め薬剤の吸収を促進してくれる可能性も期待できます。

トリプタン系で現在使用出来る薬剤は以下の4種類です。いずれも1000円を越える薬価がつけられている高価な薬剤です。

イミグラン(スマトリプタン)、1錠50mg、追加投与は1時間空けて。1錠では効果不十分の場合には次回から100mg投与可。100mgのスマトリプタン服用2時間後の頭痛改善率は平均59%であったと言います。

ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)1錠2.5mg、追加投与は2時間空けて。次回より5mg投与可。水なしで飲める口腔内溶解錠もあります。

レルパックス(エレトリプタン)1錠20mg、追加投与は2時間空けて。次回より40mg投与可。1日の総服用量40mg以内。

マクサルト(リザトリプタン) 1錠10mg、追加投与は2時間空けて。1日の総投与量は20mgまで。

なおゾーミッグ、マクサルトには口腔内速溶錠もありますが、この製剤は水なしでそのまま飲めることから、例えば、電車の中であるとか、抜けられない重要な会議中であると言った場合にでも、タイミングを逃さず服用することが出来る利点があります。

イミグラン点鼻液20 投与後15分で効果を発現し、注射薬に近い即効性があります。また悪心・嘔吐を伴う場合にも、それに関係なく服用できます。

イミグラン注射液。1アンプル3mgを皮下注射。生物学的利用率は96%であり、注射後、約10分で治療域に達します。ちなみに経口薬では生物学的利用率は約14%であり、治療域に達するのは30から90分後です。

トリプタン系薬剤を用いる際の注意点

トリプタン系薬剤には、血管を収縮させる作用がありますので、狭心症や心筋梗塞を悪化させる恐れがあります。そこで心臓の悪い人、循環器系に病気のある人、例えば狭心症、心筋梗塞、脳血管障害(脳卒中)、末梢血管障害(血行障害)、コントロールされていない高血圧症などのある方には使用出来ません。また エルゴタミン製剤や他のトリプタン系薬剤と併用しますと、血圧上昇など副作用が出やすくなることもあり、24時間以上間隔をあけなければ、飲んではいけません。

トリプタン系薬剤では薬の飲み始めの頃に、胸やノドのつかえ感・ほてり感、締め付けられるような胸の痛み、圧迫感、肩こり、体の痛み、ふわふわ感、眠気などの症状があらわれることがあります。これらは、たいてい一過性で心配ありませんが、胸の痛みや圧迫感、違和感、動悸などの症状がみられた場合には、念のため一度、心電図検査を受けられた方がよいでしょう。眠くなることがあるので車の運転は禁止。なお、このうち胸部ひっ迫感、重感、熱感、は顔面、四肢にも出現することがありトリプタン感覚と呼ばれています。

トリプタンが効いたからと言って片頭痛であるとは言えないことに注意する。

トリプタンは片頭痛以外の頭痛にも効きます。例えば動脈解離、場合によっては脳動脈瘤の破裂にも効くことがあるのです。そこで、この薬が効いたからと言って片頭痛であるとは言えないことに注意が必要です。

片頭痛の予防薬

月10回以上、片頭痛の発作がある場合は片頭痛予防薬を飲んだ方がよい

鎮痛薬の連用、すなわち 毎日のように鎮痛薬を服用すると薬剤誘発性頭痛を誘発して、頭痛をこじらせてしまうことがあります。そこで、月3日以上、片頭痛の発作が起こり、そのせいで生活に支障が生ずる場合、あるいは月10回以上(およそ週に2回以上)鎮痛薬やトリプタン系薬剤を服用せねばならない場合には、片頭痛予防薬を使用した方が良いでしょう。

片頭痛発作の予防薬として効果がみられる可能性のある薬剤は以下のとおりです。

カルシウム拮抗剤 フルナール(フルナリジン、現在、発売中止)、ワソラン、ミグシス、テラナス

βブロッカー インデラル、アルマール、テノーミン

抗うつ薬 トリプタノール

抗てんかん剤 デパケン

ステロイド

但し、片頭痛治療薬として現時点で保険使用可能な薬剤は塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)のみです。このロメリジンはカルシウム拮抗作用をもち、1錠5mgを2〜4錠を1日2回に分けて服用します。この薬は長期に服用しても安全性が高く、標準服用期間は3ヶ月です。なお、これら予防薬は速効性に乏しく、すなわち効果の立ち上がりが遅くて1ヶ月ほどして効果が出てくることもありますので、飲み始めてすぐに効果がないとしても、あきらめずに試みてみる価値があります。頭痛の頻度を3割程度に軽減する効果があると言われますが、頭痛発作を完全に抑制できない場合であっても、起こった頭痛発作自体を軽減させる効果も期待できます。もちろん予防薬を飲んでいても片頭痛が起る場合は頓挫薬(鎮痛薬やトリプタン)を併用しても良いのです。

参考:新しい片頭痛のお薬(患者さんへのパンフレットから)

片頭痛で困っておられる方は全人口の5〜6%にものぼり、実際、高血圧の方より多いと言われます。片頭痛とは、頭痛発作を起こす体質的な病気で、痛みの原因は頭の表面を走っている動脈(頭の中ではなく、頭の骨の外です。)がひろがって、その動脈の壁がひっぱられて痛むことによります。そのため、脈に一致してズキンズキンと痛むのが特徴で、発作中に、しばしば吐き気や嘔吐を伴います。この頭痛はいつもではなくて、時々、発作的に起こるのが特徴で、平均、1ケ月に2から6回の発作を起こす方が多いようです。そして、いったん頭痛がおきると数時間から2日くらい続きます。

ところで、片頭痛を「頭の半分が痛む病気」と思っておられる方が多いようですが、これは必ずしも正しくありません。確かに、片頭痛は片側に出ることが多い(60%)のですが、両側が痛む場合(40%)も結構あります。頭痛もちの方が、「頭の半分が痛んでいる」から自分は片頭痛だとおっしゃっている場合がよくあります。しかし、よく聞いてみますと、脈を打つ頭痛ではなくて、頭の筋肉がこって痛む緊張型頭痛であることも多いようです。また片頭痛は30歳までに発病することが多く、30歳以降では急に発病が減って、結局、95%くらいは若い時期に発病します。逆に言えば40歳以上で始めて片頭痛が発病する可能性は低いので、このような場合は別の病気を考えなければいけません。

片頭痛の発作には、一般の頭痛薬は効果が少なく、ひろがった動脈を元に戻す酒石酸エルゴタミンと言う頓服のお薬がこれまで使われてきました。しかし、このお薬は頭痛の起こりかけの時期に飲まないと効果がないと言う欠点があり、また使いすぎると、かえって別の型の頭痛が出て困ることになってしまうと言う問題もあったのです。ところが最近、頭痛の回数を減らして頓服の服用を減らすことの出来る新しい薬ミグシスが発売になっています。 

欧米では何年も前から頭痛が出てからの服用でも効果があるスマトリプタン系の特効薬が主流になっていました。そこで、日本での発売が長年、待たれていたのです。それがやっと発売となり片頭痛患者さんの間で大変な話題となっています。このスマトリプタン系のお薬として現在、レルパックス、ゾーミッグ、イミグラン、マグサルトの4つのお薬が発売されています。

なお、片頭痛発作の方のうち、30%の方ではアルコールが発作を誘発すると言われ特に赤ワインによって起こる方が多い。その他、チョコレート、チーズ、味の素などにより誘発されることがあります。また、ぎらぎらした光や明るい光、映画やテレビの点滅する光などによって誘発される方もあって、夏にはサングラスを手放さない人もあります。なお月経周期と関連して生じる方もあります。なお、妊娠中は発作の頻度が減少することが知られています。

参考:片頭痛のお薬(患者さんへのパンフレットから)

通常の頭痛薬(非ステロイド系消炎鎮痛剤:バファリン、セデス、ロキソニンなど)で頭痛が治る場合は、それを使います。偏頭痛の特効薬(頓服)としては、これまで酒石酸エルゴタミンと言うお薬が使われてきました。しかし、この薬は、頭痛がひどくなってからでは効果がなく、必ず頭痛発作の始まりの段階に飲まないといけません。また連用していますとクセになると言う問題がありました。それで、最近では、そのような欠点のないトリプタン系のお薬が使われるようになりました。トリプタン系のお薬には、現在、レルパックス、ゾーミッグ、イミグラン、マグサルトと言う4種類のお薬があり、最も適したものを選びます。なお、この系統のお薬は狭心症などの動脈硬化性疾患方や妊娠中の方には使えません。なお、偏頭痛では、頭痛発作が始まると、吐き気がして嘔吐する方が多く、せっかく飲んだお薬を吐いてしまうことがあります。それではお薬の効果が期待できませんので、吐き気止めのお薬をいっしょに飲んだ方が良いようです。片頭痛の発作が、週に2回以上起こる場合には、普段から毎日、飲んで頭痛発作を起こりにくくする片頭痛予防薬を使います。ミグシスと言うお薬をまず使いますが、それでも効果のない方は、他にもいろいろ予防薬がありますので、それを試すことになります。

4)、群発頭痛(ぐんぱつずつう)

群発頭痛は、男性に多く、寝入りばなに前頭部(前額部、眼窩)や顔面がひどく痛む

男性に多い頭痛で、夜、寝てから1〜1時間半くらいたってからの寝入りばなの頃に、目から前頭部にかけての片側の激しい痛みが起こる。

群発頭痛の痛みは、あらゆる頭痛の中で最も痛い頭痛と言われます。発作が起こると患者さんは痛みのためにじっとしておれず、転げまわったり、のた打ち回ったり、壁に頭をぶつけたり、手で床や壁を叩いたりすることも多く、強く叩きすぎて手を骨折してしまうような方もあるぐらいで、骨折頭痛と呼ばれたりします。あるいは、あまりの痛みのために自殺したと言う人もあるらしく、欧米では、この頭痛のことを自殺頭痛と呼んだりもします。頻度は片頭痛の1/100と少ないことからこの頭痛のことは世の中ではあまり知られておらず、あるいは、医者でも知らないものがいるぐらいです。そのため、どれだけ痛いかを回りの人に理解してもらえず、「本当にそんなに痛いのか?」などと言われ悩んだりした経験がある方も多いようです。片頭痛は女性に多いのですが、それと違ってこの頭痛は男性に多い特徴があります。頭痛は必ず、いつも決まった片側にあらわれるという特徴があり、痛むのは片側の眼窩(目の奥)、前額部(ヒタイ)あたりで、そこが突き刺すように、あるいは激烈に痛み、痛みと同時に頭痛側の顔が赤らんだり、結膜充血、流涙、鼻汁分泌、発汗などの自律神経症状を伴うのが特徴のひとつです。痛みの発作自体は1〜2時間と短いのですが、群発、すなわち2〜3週間の間は連続して毎晩起こる言う特徴があります。そして1〜2ヶ月の群発期が1年に0.5〜2回あらわれ、群発期には1日に1〜数回の頭痛が出現しますが、群発期の起こる季節や毎日の頭痛の出現時間帯にはわりと一定性があります。頭痛は春先や秋口などの季節の変わり目に多い特徴があります。なお頭痛は就寝後1〜2時間して起こることが多いのですが、真夜中(2時、4時など)に起こることも多く、それで夜になると寝るのが怖いと訴える方もあるぐらいです。もちろん、多くはありませんが、昼間に痛んだり、あるいは、1日に何回もの痛みの発作が起こったりする場合もあります。この群発頭痛の痛みは飲酒(アルコール)で誘発されやすく、群発頭痛の方では、頭痛の起こっている期間は、これを控える必要があります。但し、頭痛が起こっている群発期以外の時期には飲酒は差し支えありません。なお、酸素の薄い高い山に登ったり、航空機での旅行を控える必要があります。また頭痛があらわれる直前に前駆症状が現れることが多く、この前駆症状としては、目の前がかすむ、急に首が張ってくる、頭がボーッとしてくると言った症状で、多くは頭痛の5分前から直前に出現します。その他の注意としては、夜間は石油ストーブを使わない。洗濯業や塗装業などの有機溶剤の漂う職場での仕事は好ましくないなどがあります。

発作の際の痛みを押さえるのに、鎮痛剤はもちろん、片頭痛の特効薬でも効果の少ないことが多く、100%の高濃度酸素吸入(1分間に7〜10リットル、15分間)が有効であると言われます。現在、トリプタン系の薬剤であるイミグランの注射剤が最も効果があると考えられています。発作の予防には、ミグシス、ワソラン(塩酸べラパミル)、ステロイドあるいはデパケン(バルプロム酸ナトリウム)などの薬剤が使用されますが、リチウム製剤であるリーマス(炭酸リチウム)が比較的有効であると言われています。また4〜6%のリドカイン液の15分ごとの点鼻が有効な例もあります。

5)、三叉神経痛

三叉神経痛は発作性で急に痛くなって、痛みは何秒か続き発作と発作の間は全く痛みがない

三叉神経痛は年配の方に多く、顔面の一部がひどく痛む病気です。三叉神経とは12対ある脳神経のうち第5番目の脳神経で、主に顔面の感覚を司っています。三叉とは三筋に分かれること、言い換えれば、みつまたを意味し、3本の神経から成り立っているということを意味しています。顔面の感覚を上から3つの部分に分けて、まず、ヒタイの部分は三叉神経の第1枝、次に鼻の横の頬(ホッペタ)の部分には第2枝、最後に、下アゴ(下顎)の部分には第3枝が分布しています。そして、それぞれの神経の末梢では眼の下の眼窩下神経(三叉神経第2枝)、下アゴのところの下歯槽神経(三叉神経第3枝)、眼の上の眼窩上神経(三叉神経第1枝)となって顔面に分布しているのですが、この順で三叉神経痛が起こりやすいことが分かっています。下歯槽神経に起こった三叉神経痛では、歯が悪いのかと考え歯医者に行く人も多いようです。

ところで、顔面が痛むとすべて三叉神経痛と考えておられる方もありますが、そもそも神経痛と言うのは必ず発作性であり、痛みは瞬間的であって、一回あたりの痛みの持続時間は間違っても30秒を越えることはありません。そして発作と発作の間は痛みがないので、ニコニコしているのが普通です。持続的に、例えば1時間も、それ以上も痛みが続く場合は三叉神経痛ではありません。すなわち、顔面が痛いので三叉神経痛ではないかとやってこられる患者さんのうち、結構、別の病気、例えば副鼻腔炎などであることが多いのです。また、若い人では群発頭痛などのこともあります。三叉神経痛の原因は頭の中で血管が動脈硬化を起こし、そのせいで曲ってきて、それが脳の神経にぶっかることによって起こります。そのため神経が血管にぶつかった時にバーンと発作性に痛みが走るのです。なお、まれに脳腫瘍(2%位)によって起こることもあるので、一度は精密検査を受けておかれる方が良いでしょう。この三叉神経痛の痛みは焼け火ばしを突き刺されるようだとか、カミソリで切られるようだとかいわれるほどひどいもので、しばしば顔面の特定の部位、例えば、くちびる、鼻、眼瞼、眉毛、舌、歯肉などに何かが触れることによって、痛みが起こるという特長があります。そこで、洗顔、ひげそり、あるいは顔面に風があたっても、また会話をしても、また食事によっても痛みが起こります。しかし、痛みで食事が出来ない場合でも、お風呂に入っている時には、痛みが起こらない方が多く、三叉神経痛の方では、お風呂に入りながら食事をする方もあります。

三叉神経痛の根本的な治療としては手術が良いのですが、それ以外の方法で痛みを和らげるには神経ブロック治療や飲み薬などが用いられます。

三叉神経痛の薬としては、神経痛の特効薬であるテグレトール(カルバマゼピン)が用いられます。この薬は、70%くらいの方に効果があると言われています。テグレトールは常用量から開始すると、めまいやふらつき、眠気が出やすいので、普通、最初は1日100〜200mgの少量から開始し、その後1週間に100〜200mgずつ増量するようにして使用されます。なお、発疹がでたりする場合など、テグレトールが使用出来ない時は、アレビアチンやリボトリールが使用されます。アレビアチンは1/5の例に効果があるとされ、テグレトールよりは効果が劣ります。またリボトリールは眠気が出やす方があります。

なお、前額部は帯状疱疹(ヘルペス)の好発部位でもあります。この部位での帯状疱疹は、三叉神経へのヘルペスウィルスの感染によって起こり、ブツ、ブツとした発疹ができて、それがひどく痛む病気なのですが、痛みの性状は神経痛です。この帯状疱疹はブツ、ブツとした発疹が出てからでは簡単に診断がつくのですが、発疹の出る数日前から痛みだけが先に起こることが多いのです。しかし、その時点では痛みだけなので、三叉神経痛と区別がつきません。帯状疱疹では、治療が遅れると帯状疱疹後神経痛と言って、後遺症としてのひどい痛みが一生続くことになります。ゾビラックスと言う特効薬が有効ですので、そうと分かったら直ちに開始する必要があります。

参考:顔面神経痛と三叉神経痛(患者さんへのパンフレットから)

顔面がゆがんでしまったとか、顔面が痛い時に、よく患者さんが「顔面神経痛になった」と言ってやってこられます。しかし顔面の半分が動かなくなってゆがむ病気は「顔面神経麻痺」と言う病気ですし、いずれにしても顔面神経痛と言う病気はありません(専門的になりますが非定型顔面神経痛と言う稀な病気はあります)。と言いますのは、顔面が痛い時、顔面の痛みなどの感覚に働いているのは三叉(さんさ)神経ですから、それを言うなら顔面神経痛ではなくて、三叉神経痛と言うことになります。ただし神経痛と言うのは、ズキッとか、ズキ、ズキッとか短時間痛んで、しばらく痛みが止ったかと思うと、また痛むと言う具合に、間を置いて痛む特徴があります。顔面がそのように痛めば、もちろん三叉神経痛ですが、多少の差はあってもズーッと長い時間、例えば1日中痛いなどと言うのは三叉神経痛ではありません。顔面がズーッと痛む原因で多いものとしては、蓄膿症(副鼻腔炎)などからくる痛みがあり、風邪の後に多くて、うつむくとよけいに痛んだりする特徴があります。

その他、注意しておかなければいけない顔面の痛みにヘルペス(帯状疱疹)によるものがあります。額(ヒタイ)の部分は、この帯状疱疹のよく起こる場所で、ブツブツとした発疹のでる何日か前から神経痛様の痛みが始ります。発疹が出てからでは、すぐに診断がつきますが、痛みだけあって発疹がない始めの時期では、ヘルペスかどうか分からないのです。しかし、このヘルペスはちゃんと治療しておかないと、後で帯状疱疹後神経痛と言って、一生、痛みで苦しむことになりますから、すぐに医師に相談しましょう。

参考: 三叉神経痛(患者さんへのパンフレットから)

顔面が痛む病気のうち代表的な病気です。顔面が痛む病気には三叉神経痛ばかりではなく、例えば蓄膿症や歯科疾患による痛み、あるいはヘルペスなど、他にもいろいろなものがあります。しかし、巷では何でも三叉神経痛と診断されてしまう傾向がみられます。

まず、代表的な72歳男性の場合を紹介しましょう。この患者さんは「右ヒタイの発作性の激しい痛みで困っている」と来院されました。始めは、62歳の時、ある日、急に右のヒタイに激しい痛みが走るようになって、それ以来、この痛みに悩まされていました。右ヒタイの痛みは発作性で急に起こり、右マブタの上に軽く触れるだけでもするどい痛みが走ります。痛みの持続時間は短いのですが、傷口をキリで突くような激しい痛みで、風が吹いたり、大声を出したり、物を飲み込んだり、マバタキをしたり、上を見ただけでも起こることがあります。痛みが始りますと洗顔、ヒゲ剃り、食事、歯磨きなどが出来ないぐらいでした。

結局、三叉神経痛には、次のような特徴があります。

1、発病は通常50、60歳代で、30歳以下では非常に稀である。

2、電気が走る、針で刺すような鋭い痛みが三叉神経領域に走る

3、痛みは一側性(片側)である。

4、痛みがずーっと続くことはなく、痛みの持続時間はたいてい数秒で、痛みは数秒から1〜2分の間、繰り返して起こり、その後、30秒から数分間痛みのない休止期があり、このような発作が1日に何度も起こる。

5、顔面の一部に軽く触れたり、軽く叩くことにより痛みが誘発される部分がある。会話、洗顔、食事などにより痛みが起こる。

参考:神経痛のお薬(患者さんへのパンフレットから)

「三叉神経痛」などの神経痛の特効薬として、一番よく使われるお薬はテグレトール(カルバマゼピン)と言うお薬です。この薬は「顔面けいれん」や「てんかん」のお薬としても使われます。この薬は始め少量から開始して、期間を置いて、少しづつ飲む量を増やしてゆきます。と言いますのは、テグレトールは飲み始めの時期に血液中の薬剤濃度が少し上がることがありますので、そのせいでフラツキが出たりする人があるからです。もしフラツキが出ても、しばらく様子をみていると、ほとんどの場合、慣れてフラツキは治ってきますので心配ありません。なお、少量のお薬から始めますので、薬の量が増えて、効果が出るまでしばらく時間がかかります。それまであきらめずに飲んで頂く必要があります。テグレトールは約80%の方に有効ですが、効果がみられない方には、アレビアチン(フエニトイン)と言うお薬が用いられます。アレビアチンと言うお薬も、顔面けいれんやてんかんの治療にも使用されます。

参考:帯状包疹(いわゆるヘルペス)(患者さんへのパンフレットから)

年配の方に多い病気で、片側の胸部や腰部、あるいは額(ヒタイ)などに、いくつもの小さな水泡をともなった発疹が起こり、それが、ひどく痛む病気です。その原因は、水痘帯状疱疹ウィルスによるもので、これは子供さんがかかる水痘(水ボウソウ)と同じウィルスです。このウィルスに大人がかかった場合、長い間、神経(正確には後根神経節と言うところ)に潜んでいて、体の抵抗力が弱った時をねらって活動を始めるのです。すると、ウィルスが潜んでいた神経の領域に沿って、まず鋭い痛みが走るようになり、2〜3日してから発疹が現われます。発疹を生じる前なら、症状としては痛みしかありませんので、例えば、胸なら、肋間神経痛などと間違えられたりします。そうこうしているうちに、いくつもの赤い斑点状の発疹が出現し、続いて、それぞれの発疹の上に小さな水泡が現われます。しばらくの間は、痛みが激しく、しばしば夜も眠れないほどです。

特に高齢の方では、早く治療を始めませんと、帯状疱疹後神経痛と言って激しい痛みが何年も続くことがあり要注意です。また額に起こった場合では、帯状疱疹眼症と言って視力に影響が出る場合があり、やはり注意が必要です。

6)、低髄液圧性頭痛

低髄液圧性頭痛は、立っていると頭痛がして、寝ると楽になる

頭や脊椎の中には髄液と言う水が入っていて、脳や脊髄はこの中に浮かんでいます。何らかの原因で、この髄液の圧が下がりますと頭痛が起こるのです。例えば、腰椎穿刺後頭痛と言って、検査や治療のために行われた腰椎穿刺(ルンバール)の後に約30%の方に起立性頭痛が現れます。これは通常、穿刺後30分ほどしてあらわれ、数日間続きます。この頭痛は穿刺の時に出来た孔を通じて髄液が少し漏れるため髄液圧が低下するために起こります。この頭痛は起立時、すなわち立った時に強くなり、横になると軽くなると言う特徴があります。

ところが、腰椎穿刺などによって髄液圧が下がるのではなく、自然に髄液圧が下がってしまうことがあり、それによって起こった頭痛を低髄液圧性頭痛、髄液量減少性頭痛と呼びます。髄液圧が下がる原因には髄液の産生が少ない場合と、外傷によって硬膜が破れて髄液漏出することによる場合とがあります。髄液産生が少ないタイプの低髄液圧制頭痛の特徴は、

1、血圧の低い人に多い。

2、体を起こすと痛みが強くなり、横になると軽快する。

3、頭痛は午前中に強く、午後から夕方になると軽快する。特に朝、起きたあとに頭痛がひどくなる。

4、初夏から夏にかけて悪化する傾向がある。特に、真夏に悪化するが、これは夏季には血圧が低下することと、汗をかいて脱水傾向となることが関係している。

5、精神の緊張により血圧が上がることから、緊張した時には頭痛が軽快するか消失する。

6、両側の頚静脈を圧迫すると髄液圧は上昇するので頭痛は軽減する。あるいは、力んで腹圧を上げたときも頭痛は軽くなる。などがあります。

頭痛の性状は、頭全体のジーンとする均一性の痛みですが、強い時には軽い拍動感を感じることもあります。稀に、外転神経麻痺を起こして物が二重に見えるようになったり、頭の中に硬膜下血腫を起こすことがあります。

治療としましては、体内の水分を増やすために輸液が行なわれたりしますが、薬剤としてはメトリジン、ジヒデルゴット、ドプスなどで効果がみられ、またテオドールが著効することがあります。髄液漏出タイプで、とくに頑固なものには硬膜外に自家血を10mlほど注入するblood patch(硬膜外血液パッチ )という処置が行なわれます。

7)、薬剤誘発性頭痛

痛いからと言って、毎日、頭痛薬ばかり飲んでいると、そのせいで、かえって頭痛が起こるようになる。頭痛薬の飲みすぎは、頭痛をこじらせてしまう

頭痛薬などの鎮痛剤、すなわち非ステロイド系消炎鎮痛剤は連用すると、そのせいで新たな頭痛を生じることが分かってきました。頭痛がするからといって、毎日のように鎮痛薬を飲んでいると、脳が痛みを感じやすくなり、逆に頭痛を誘発させるようになってしまうのです。つまり頭痛薬を飲み過ぎると、かえって頭痛がおこりやすくなり、そのせいで頭痛がちとなってしまうのですが、このような状態を薬剤誘発性頭痛といいます。頭痛薬がかえって頭痛をひどくしてしまった訳で、頭痛をこじらせてしまった状態です。一旦、そういった状態に陥ると、頭痛があるから薬を飲む、薬を飲むと頭痛が起こるといった悪循環に陥ることが多く、頭痛薬を飲む量がドンドン増えてしまい、後戻りできなくなってしまうので注意が必要です。そこで頭痛薬は、飲み過ぎないようにしなければなりません。頭痛薬の服用は月10回以内にとどめることが大切で、薬剤誘発性頭痛を治すにはしばらく薬をやめるのが一番の方法です。月10回以上服用せざるを得ないなら、医師に相談し片頭痛の方では、予防薬を処方してもらうようにしましょう。

8)、慢性連日性頭痛

慢性連日性頭痛とは、ほとんど毎日のように頭痛が起こる場合の頭痛を言います。この頭痛は緊張型頭痛が慢性的に続く慢性緊張型頭痛と片頭痛が薬の飲み過ぎでこじらせて慢性化してしまった変容性片頭痛(変換型片頭痛)との、ふたつのタイプがあります。どちらのタイプも頭痛薬の服み過ぎが関係していることが多い、やっかいな病態です。すなわち薬剤誘発性頭痛は、この慢性連日性頭痛の有力な原因であると考えられています。片頭痛もちの方では頭痛薬(消炎鎮痛剤)を飲みすぎる傾向があります。始めは典型的な片頭痛であったものが、頭痛薬を毎日飲んでいるうちに次第に頭痛の回数が増えてゆき,毎日頭痛が起こるようになってしまうというのが一番多いパターンです。そうならないようにするためには、 できれば頭痛薬の服用を月10回までにすることが大切です。それ以上、頭痛薬を飲まなければならないような場合には、片頭痛の予防薬を使用した方がよいということを覚えておきましょう。なお、頭痛が起こるのではないかという心配や恐怖から鎮痛剤を過剰に服用してしまい、それが頭痛を悪化させてしまっている場合もしばしばで、あるいは、うつ状態となっておられることもあります。治療には、一旦、鎮痛剤を中止してしまうことが必要です。薬をやめるための補助薬として片頭痛の予防薬、あるいは抗うつ薬の投与が有効な場合があります。また、薬をやめるために入院が必要になることもあります。

9)、慢性発作性片側頭痛

女性に多い頭痛で、群発頭痛と同じく自立神経症症状を伴い眼窩部、眼窩上部が激しく痛みますが、その持続時間は2〜45分と明らかに短いのです。しかし、発作回数が1日5回以上と多く、嘔心、嘔吐はまれであると言う特徴があります。インドメタシン(インダシン、インテバンSP)により発作を劇的に予防できます。

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