薬の説明と使い方

薬の説明と使い方

▼ページ内目次 ※クリックしていただくとページ内で移動します
  1. 頭痛
    1. 緊張型頭痛
    2. 片頭痛
    3. 群発頭痛
  2. 脳梗塞再発予防
  3. 神経痛、しびれ
  4. てんかん
  5. パーキンソン病
  6. 認知症
  7. めまい

頭痛のお薬

緊張型頭痛

緊張型頭痛には、一般に鎮痛剤が有効であることが多く、その使用が、月に数回程度ですむ方は、鎮痛剤だけで様子をみるのが良いでしょう。

頑固に持続する慢性緊張型頭痛では、筋弛緩作用を合わせ持つ抗不安薬 デパス(エチゾラム)、セルシン(ジアゼパム)、 および筋弛緩剤 テルネリン(チザニジン)、ミオナール、リンラキサーなどが用いられます。

抗不安薬

デパス(エチゾラム) 筋弛緩作用を持ち緊張型頭痛に健保適用
チエノジアゼピン系抗不安薬 脳内のベンゾジアゼピン系受容体と結合することによりGABA神経系の作用を増強する。抗不安作用ととともに、鎮静、催眠作用、筋弛緩作用を持つ。半減期6時間。短時間作用型。抗不安作用はセルシン(ジアゼパム)より3〜5倍強力。

筋弛緩剤

テルネリン(チザニジン) 緊張型頭痛に健保適用
ミオナール(エペリゾン) 同じく健保適用
リンララキサー 筋弛緩剤、頚肩腕症候群の病名で健康保険適応

※テルネリンは効果があるらしいが。眠気、口渇を訴えるものが多い

漢方薬

釣藤散

慢性緊張型頭痛に釣藤散は結構、効果あり
適応:慢性に続く頭重で中年以降、又は高血圧の傾向のあるもの
副作用:ほとんどなし。飲みにくいらしい。

さらに難治性の慢性緊張型頭痛には、トリプタノール(アミトリプチリン三環系抗うつ剤)の有効な場合があります。

三環系抗うつ剤

トリプタノール
しかし、頭痛に対する効果は抗うつ作用によるものではないらしい。

片頭痛

頭痛発作時に頓服として使用されるもの

エルゴタミン (トリプタン系薬剤出現以前に、よく用いられた頓服)
クリアミンA (エルゴタミン+カフェイン+イソプロピルアンチピリン)
カフエルゴット (エルゴタミン+カフェイン)など

安価である。
発作の早期に内服しないと効果がないことが多い。
副作用としての悪心、嘔吐が多く(ドーパミン受容体への作用)、片頭痛自体により生じる嘔心、嘔吐をさらに増悪させる。
一般に、カフェインとの合剤(クリアミンA、カフエルゴット)で使用されるが、カフェインによる依存症を生じることがある。カフエインはエルゴタミンの吸収を早め、それ自身にも鎮痛効果を有する。
頭部血管への選択性が低く、冠血管、末梢血管へのリスクが高い。
乱用により薬剤誘発性頭痛を生じることが多い。
トリプタンにくらべ、半減期が12時間前後と長く、作用時間が長い。
すなわち薬効低下後の頭痛の再発が少ない(再発性頭痛)。

トリプタン系薬剤

使用禁忌 脳梗塞を誘発する危険があるので、脳底型片頭痛、片麻痺型片頭痛では服用してはいけない。虚血性心疾患の既往や徴候・虚血性脳血管障害の既往・閉塞性末梢血管障害・コントロールされていない高血圧症の方も使用禁忌。

使用上の注意 トリプタン製剤にエルゴタミン製剤を追加投与する場合、逆にエルゴタミン製剤にトリプタン製剤を追加投与する場合24時間以上間隔をあける。特にエルゴタミン製剤の半減期は長いので注意する。

前兆期や、前駆症状のうちには服用しない(効果がない)。

1ヶ月に10回以上、トリプタンを慢性的に服用するなどの使い方をすると、1年もすると効かなくなってくる。あるいは、さらに短期間でも、3ヶ月を超えて使用すると薬剤誘発性頭痛を生じることになる。

トリプタンは半減期が短く、一旦おさまった頭痛が短時間で再発することがある。すなわち、同日再発をきたすことがある。効果の持続は薬剤の半減期に関係し、半減期は各トリプタン(2〜4時間)で類似し、半減期の5倍の時間、すなわち10時間前後で再発する可能性がある。

トリプタンが効くから片頭痛はとは限らない。くも膜下出血の頭痛に効くこともある。

片頭痛では、頭痛発作中に消化管の運動が減弱し、そのせいで、胃の膨満、続いて嘔気、嘔吐が出現する。それに伴い、経口剤の吸収が遅延し、効果不良の原因となる。そこで、頓服と同時に、消化管機能改善剤ドンペリドン(ナウゼリン)を服用した方が良い。なお、本薬剤には片頭痛の前兆を抑制する効果もあり、その服用により、続いての頭痛の出現が抑制、頓挫することもある。

現在、発売中の4製剤の特徴

効果はイミグラン≧ゾーミッグ>マクサルト>レルパックス
トリプタン感覚も効力に比例する。

※トリプタン感覚 トリプタン感覚とは、服用後に起こる、胸や肩のしめつけ感の副作用。この頚・胸・のどのつっぱり感や締めつけ感は、服薬後30分以内に出現することが多く、多くは10分程度で消失する。このつっぱり感や締めつけ感は心臓の異常ではなく、食道や首、胸の筋肉の収縮によると考えられていて、心配ないと言われている。

※眠気やめまい感 中枢神経系の副作用と考えられていて、中枢神経系への移行率の高いトリプタン(ゾルミトリプタン)で多い。

イミグラン(スマトリプタン)
 1回1錠で効果不十分の場合、1回2錠投与。1日最大4錠まで。追加投与間隔は2時間以上。最高血中濃度到達時間約1.8〜2.5時間。消失半減期約2〜2.2時間。海外製剤の1/2用量。最初に開発されたトリプタン。脂溶性が低く、脳血液関門を通過しにくい、すなわち中枢移行が少ないので傾眠、めまい感などの副作用が少ない。頭痛に対する効果は最もが高いが、のどの締め付け感などの副作用(トリプタン感覚)が多い。

イミグラン点鼻製剤
 嘔気、嘔吐が強く、経口剤の効果が悪い方での利用価値あり。
効果発現まで約15分、群発頭痛(保険適応無)に効果がみられる場合もある。(群発頭痛では、通常1〜2時間で頭痛が終わってしまうため、通常の経口剤で効果発現まで待っていても、間に合わないことが多い)

イミグラン自己注射製剤(2008年4月ごろ使用可能となる予定)

ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)
1回1錠で効果不十分の場合、1回2錠投与可。1日最大4錠まで。追加投与間隔は2時間以上。最高血中濃度到達時間約1〜6時間。消失半減期約2.4〜3時間。比較的強めの効果。脳血流関門を通過するため、最も眠気が出現しやすい。夜間発作に向いている。口腔内溶解錠(水なしで飲める)あり。

レルパックス(エレトリプタン)1回1錠で効果不十分の場合、1回2錠投与可。1日最大2錠まで。追加投与間隔は2時間以上。最高血中濃度到達時間約1〜2.8時間。消失半減期期約3.2〜5時間。海外製剤の1/2用量。消失半減期が長く、同日頭痛再発率が低い。低用量のため、効果はやや劣るが、他剤にくらべ、副作用発現率が低いと言われる。トリプタンを始めて使用する方に向いている。

マクサルト(リザトリプタン)
 1回1錠、1日最大2錠まで。追加投与間隔は2時間以上。最高血中濃度到達時間約1〜1.3時間。消失半減期約1.6〜2時間。海外製剤と同一用量。経口剤では頭痛発作時の立ち上がりが最も早いが、消失半減期も短い。

アマージ(ナラトリプタン、2008年4月発売予定)
血中半減期が6時間程度と長い。月経時の片頭痛や、片頭痛の連発(重責発作)への効果が期待されている。

トリプタン使用時の問題点

トリプタンが効かないノンレスポンダーが存在する(数%以下)。
トリプタンが効かない。そう判断する前に

服薬のタイミングは適切であったか?
頭痛が起こったらなるべく早期に服用することがポイント。
なお、前兆期や前駆症状に服薬しても効果がないので服用しない。

頭痛が起こって、しばらくするとアロデイニアを生じたり、拡張した血管周囲に炎症が起こって薬が効かなくなってしまう。アロデイニアとは、脳が痛みに敏感となり、通常、痛みを感じない程度の刺激でも痛みを感じるようになる現象、髪の毛を触っても不快感が起こり、顔や足までがピリピリするようになる。

血管周囲に炎症が起こってからの状態の際、インテバンSP(インドメタシン)の服用が効果ありとの報告がある。

片頭痛による胃内容停滞がおこり、経口薬の吸収を遅延していないか?
消化管機能改善剤を併用すると効果がみられることが多い。

ドンペリドン(ナウゼリン)
嘔気、嘔吐を抑える作用、薬剤の吸収を早める効果。片頭痛の前兆の頻度を減少させる効果、前兆を抑制し、本薬剤の服用により。続いての頭痛が抑制されることもある。

どうしても嘔気、嘔吐が強い場合には、点鼻製剤を使用してみるのも、ひとつの方法。

各トリプタンの効果には個人差があって、ひとつのトリプタンが無効でも他のトリプタンが有効なことがある。他のトリプタンを試してみる。
服薬のタイミングがうまくつかめていない可能性があるので、初回だけで無効と判断せず、3回までトライしてみる。それでもダメなら変更。

月経時の片頭痛?
月経時の片頭痛は、一般の片頭痛より症状が重く、持続時間が長い。発作時にトリプタンと、消炎鎮痛剤(NSAIDS)を同時に服用すると効果がみられることがある。

トリプタンの乱用がないか?
連用を避けて、1ヶ月あたり10日以内の使用とする。乱用ぎみになると1年ぐらいで効力が低下し、効かなくなってしまう。

トリプタンの方がエルゴタミンより薬物乱用性頭痛に陥りやすいとも言われる。

薬剤誘発性頭痛
鎮痛剤誘発性(乱用性)頭痛  頭痛薬の過剰使用に伴う頭痛
頭痛に対し、鎮痛剤やエルゴタミン製剤を過剰に慢性的に使用すると元の頭痛とは違う型の頭痛がおこってきます.鎮痛剤,あるいはエルゴタミンを3ヶ月以上連用(乱用)すると,月に15日以上頭痛をきたすようになる。鎮痛剤の使いすぎ、連用により頭痛をこじらせてしまった状態。
エルゴタミンよりトリプタン乱用でより短期間で、この状態になると言われる。
くれぐれも飲みすぎないようにして、1ヶ月の使用は10日以内とする。

鎮痛剤 1ヶ月に15日以上服用。
エルゴタミン  10日以上。
トリプタン   10日以上。使用しないように注意しましょう。

慢性連日性頭痛
1日4時間以上、1ヶ月に15日以上の頭痛が3ヶ月以上続く状態。その80%に薬剤の乱用があるとの報告もある。

片頭痛予防薬
1ヶ月に8回〜10回以上、片頭痛の発作があり、そのために日常生活に制限を受ける場合には片頭痛予防薬を使用した方が良い。あるいは1ヶ月に10日以上、片頭痛の頓服を飲まねばならない場合、そのせいで、薬剤誘発性頭痛に陥るのを防ぐため、予防薬を併用して頭痛の頻度を減少させ、頓服を飲む回数を減らす必要がある。

片頭痛予防薬の使用により、頭痛の回数を減らす効果、頭痛が起こったとしても、その程度を軽くする効果が期待できる。

塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)
 Ca拮抗剤 片頭痛の予防薬として、唯一の健康保険適応薬剤。飲み始めてから3〜4週たたないと効果を実感できないことが多いので、気長に飲むことが大切。1日2錠から始め、一定期間待っても、効果がない場合には、1日4錠まで増量してみる。4錠ぐらいでないと効果が期待できないという医師もいる。

その他、予防療法にはCa拮抗薬やβブロッカー、抗うつ薬といわれる薬剤がよく用いられる。ワソラン(ベラパミル)、β遮断薬ではインデラル、テノーミン。

難治性の片頭痛症の場合には、トリプタノール(アミトリプチリン抗うつ剤)が用いられる。

トリプタノール(アミチリプチリン)
三環系抗うつ剤。ヒスタミン受容体遮断作用による鎮静作用を持つ。頭痛抑制作用は、抗うつ効果とは別らしい。使用時には、抗コリン性副作用(視調節障害、鼻閉、口渇、頻脈、便秘、排尿障害、緑内障には禁忌)に注意。

抗うつ剤のうちの択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)ルボックス、パキシル(抗コリン性副作用が少ない)も使用される。

抗てんかん剤 デパケン(バルプロム酸)、リボトリール(クロナゼパム)も使用される。

子供の片頭痛の予防にはペリアクチン、ジヒデルゴットが用いられる。

最近、片頭痛治療薬(予防薬)として保険適応となった薬剤

2010年10月29日より片頭痛に対してデパケンR(バルプロ酸ナトリウム)が保険適用可能となった。
続いて2012年8月31日、β遮断薬のプロプラノロール塩酸塩(商品名インデラル錠10mg、同錠20mg)に、「片頭痛発作の発症抑制」の適応が追加されることが決まった。この適応における用法・用量は、「1日20mg〜30mgより投与し、効果不十分な場合には1日60mgまで増量可。いずれも1日2〜3回に分割投与」である。

プロプラノロールが認められ理由は、(1)「慢性頭痛の診療ガイドライン」(日本頭痛学会、2006年)において、プロプラノロールの片頭痛予防効果がロメリジンやバルプロ酸ナトリウムよりも高く評価されていること、(2)欧米の幾つかのガイドラインにも使用が推奨される片頭痛予防薬として掲載されており、欧米では広く臨床使用されていることなどである。

群発頭痛

各頭痛発作の持続時間が1〜2時間と短いため、通常の経口薬は役に立たない(吸収されてから効果が出るまでに時間がかかる)。但し、毎日、一定の時間に起こるタイプでは、その前に、片頭痛の頓服(エルゴタミン、トリプタン)を飲んでしまうという方法がある。

イミグラン注射剤、および100%酸素吸入が効果があるものの、病院に行かないと施行できない。ところが、行くまでに時間がかかって、実際、役に立たない。

イミグランの点鼻製剤が比較的効果がある(保険適応は片頭痛のみ)。

近日中にイミグランの自己注射剤が発売される予定。

頭痛予防薬として、ステロイド(リンデロン、プレドニン、漸減投与)は著効がみられる。

リーマス(炭酸リチーム) 抗躁薬(気分安定薬)の原型。躁病及び躁うつ病の躁状態。有効血中濃度と、中毒が出現する濃度が接近、有効血中濃度に入るまで1〜2週間かかる。有効血中濃度 0.6〜1.2mE/l 。顕著な効果は期待できない。

脳梗塞の再発予防のお薬

2種類の脳梗塞で再発予防に使用する薬剤が異なる。

心源性脳梗塞(脳塞栓)
心房細動により生じた心臓内血栓(塞栓)が流れて行って脳の動脈を閉塞し脳梗塞を起こす場合。

予防には抗凝固剤 ワーファリンを使用する。
納豆を食べると薬剤の効果に影響を与える。
ワーファリンの効果判定にはプロトロンビン時間(INR)を測定する。

非心源性脳梗塞の予防には抗血少板剤 (血小板の凝集を抑制する作用) を使用する。

皮質枝梗塞 脳の太い動脈がコレステロールなどで狭くなることで起こる「アテローム血栓性梗塞」 危険因子:高脂血症、糖尿病
穿通枝梗塞(ラクナ梗塞) 危険因子:高血圧
抗血小板薬は脳梗塞の再発を有意に低減する。

アスピリン
血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害し、血小板に対して強力な血小板凝集作用を有するトロンボキサンA2という物質ができるのを抑制し効果を発揮する。
アスピリン(喘息には禁忌)副作用:胃腸障害、胃潰瘍
内服後、1日で最高に達し2日で安定する(4時間で抗血小板作用出現、10時間目で効果最高にという文献もある)。

アスピリンの脳梗塞予防効果 15%リスク低減
アスピリンは、脳卒中やTIAにおける血管イベントの発生を22%低減させる。
(ATTの報告)

1日75〜150mgで最も大きな効果(32%リスク低減)がある(アスピリンジレンマ)。

アスピリンの至適服用量
血管内皮細胞にあるプロスタサイクリンPGI2は、血小板凝集を妨げる働きがある。アスピリンはこのプロスタサイクリンの働きも妨げる。アスピリン少量ではトロンボキサンの働きは抑えるが、プロスタサイクリンの働きには影響を与えない。80mgの服用でトロンボキサンはほぼ0になるがプロスタサイクリンはまだ60〜80%ぐらい残っている。
血小板凝集反応が起こると、血小板にあるアラキドン酸は。酵素の働きでPGI2(プロスタサイクリン)とトロンボキサンを作り出す。プロスタサイクリンは血管の内皮細胞にあり、血小板の凝集を妨げる働きがある。トロンボキサンは血管を収縮させ、血小板を凝集させる働きがある。アスピリンはこの両者の働きを妨げる作用があり、トロンボキサンの働きを妨げ血管を広げ血小板の凝集を妨げる一方、プロスタサイクリンの働きを妨げ血小板の凝集を亢進させる。この現象をアスピリンジレンマと呼ぶ。アスピリンが少量であれば、トロンボキサンの働きは抑えるが、プロスタサイクリンの働きには影響を与えない。つまり、80mg程度の服用では、トロンボキサンはほぼゼロになってしまうが、プロスタサイクリンはまだ60〜80%残っている。そこで、脳梗塞の再発予防には、80mg程度の少量が用いられる。

手術や抜歯を受ける際の服薬中止期間
血小板の寿命は約10日、アスピリン不可逆的に血小板抑制するので、アルピリンに暴露した血小板は、その寿命である10日間機能が停止したままとなる。つまり血小板に対する作用は血小板の寿命がなくならないと消えない。そこで、服薬を中止して、その効果が完全に切れるのは7〜10日後となる。

パナルジン(チクロピジン)
血小板のG蛋白結合型ADP受容体の阻害により、GPIIb/IIIaへのフィブリノーゲンへの結合を抑制する。
内服後,血中濃度のピークは2時間後であるが、血小板凝集抑制作用は投与後24時間で最大に達する。(血中濃度のピークと効果との間にずれがある)。内服後2〜3日で効果を発現し、4〜7日で安定する
作用は血小板の寿命と共に消失。副作用のチエックのため、服薬直後は2週間ごとに血液検査を行う必要がある。

プレタール(シロスタゾール)
血小板内のcAMPが増加すると血小板凝集が抑制される。このcAMPを分解するホスホジエステラーゼ3Aを阻害する作用。服薬後、1日で有効濃度に達する、飲まないと1日で効果がなくなる血小板に対する作用は可逆的で、その効果は概ね薬物の血中濃度の推移と一致し、投与中止後48時間で血中から消失。現時点でラクナ梗塞の再発予防に対するエビデンスがあるのは、このシロスタゾールのみ。
ガイドラインでは、ラクナ梗塞の予防にも抗血小板剤の使用が勧められるとしている。
ただし、十分な血圧のコントロールを行う必要がある。
シロスタゾールは、プラセボー群に比し有意な脳卒中低減効果を示した。(41.7%低減)

クロピドグレル(ブラビックス)
クロピドグレルは、チクロピジンと同様の作用機序を持ち、ほぼ同等の心血管イベント抑制効果を期待できる薬剤。クロピドグレルの安全性はアスピリンと同程度であり、チクロピジンより明らかに優れる。
クロピドグレルとアスピリンとの比較試験では、クロピドグレルの服薬群の方が、心血管系の病気の発症率が9%ほど少なかった。チクロピジン(パナルジン)を対照とした二重盲検比較試験では、心血管系の病気の発症予防効果に差はなかったが、重い副作用の発現率がチクロピジンより少なかった。内服後2〜3日で効果を発現し、4〜7日で安定。
チクロピジンには、白血球減少、血栓性血小板減少性紫斑病肝障害などの副作用、発疹が多い。クロピドグレルは、チクロピジンより安全性が高い。
クロピドグレルはアスピリンより脳梗塞再発予防効果が高い。
チクロピジンと、クロピドグレルはアスピリンと比べて血管イベント低減効果はそれぞれ10%、12%勝っていたが、有意な差とはならなかった(ATTの報告)。
クロピドグレルはアスピリンを8.7%上回る有意の虚血性脳卒中低減効果を示した。安全性についてもクロピドグレルはアスピリンを有意に上回っていた。

抗血小板剤の価格

  薬価 1日薬価 1ヶ月(3割負担の場合)
アスピリン 6.46.457.6
チクロピジン 70.2140.41262.4
シロスタゾール 218.4436.83931.2
クロピドグレル 289.6289.62606.4

抗血小板剤―抜歯や手術の際に中止するには

アスピリン
4時間で抗血小板作用が出現、10時間で効果が最高になる。
血小板の寿命は10日、アスピリンは血小板を不可逆的に抑制する。
作用は血小板の寿命とともに消失。完全に作用が消失するには7?10日かかる。

パナルジン
血中濃度のピークは2時間前後にあるが血小板凝集抑制作用は投与24時間後に最大に達する。作用はアスピリンと同じく、血小板の寿命とともに消失。

シロスタゾール
経口3時間で最高血中濃度、中止後48時間で血中から消失。頻脈になる傾向。血小板に対する作用は可逆的で、効果は薬剤の血中濃度の推移に一致する。

抗血少板剤服用中の検査、治療時の休薬指針の変遷

脳卒中治療ガイドライン2009 脳卒中合同ガイドライン委員会編: 103-109、2009

出血時の対処が容易な小手術(抜歯など)の施行時は、抗血小板薬の内服は続行してよい。生検を含む消化管内視鏡検査などを行う場合、アスピリンは3日前に、クロピドグレルやチクロピジンは5日前、シロスタゾールは2日前を目安に中止する。
出血時の対処が容易でない処置(ポリペクトミー、胃瘻造設など)、大手術(開腹手術など)の施行時は、アスピリンは手術の7日前に、クロピドグレルは手術の14日前に、チクロピジンは手術の10〜14日前に、シロスタゾールは3日前を目安に中止する。
休薬期間中の血栓症や塞栓症のリスクが高い例では、脱水回避、輸液、ヘパリン投与などを適宜考慮する。

循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン2009 抜歯や手術時の対応

消化管内視鏡による観察時の抗凝固療法や抗血小板療法の継続(エビデンスレベルC)

低危険手技時の抗血小板薬の休薬期間はアスピリンで3日間、チクロピジンで5日間、両者の併用で7日間、高危険手技時の抗血小板薬休薬期間はアスピリンで7日間、チクロピジンで10〜14日間(エビデンスレベルC。
抗血栓療法の中断が避けられない場合は、血栓症や塞栓症のリスクの高い症例ではへパリンによる代替療法および脱水の回避、輸液などを考慮する。4〜6時間からヘパリンを中止するか、手術直前に硫酸プロタミンでヘパリンの効果を中和する。いずれの場合も手術直前にAPTTを確認して手術に臨む。術後は可及的速やかにヘパリンを再開する。

抗血栓薬服用者に対する「新しい消化器内視鏡診療ガイドライン」作成の経緯

日本消化器内視鏡学会は2006 年に「消化器内視鏡ガイドライン第3版」を出版しています。当時は血栓の発生リスクを考慮せずに、抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視した内容となっていた。内視鏡時の抗血栓薬の休薬については、休薬による血栓症リスクが懸念され、対策として日本消化器内視鏡学会(JGES)は、2005年に「内視鏡治療時の抗凝固薬、抗血小板薬使用に関する指針」を作成し、可能な限り休薬期間を短縮するという方針を打ち出しました。たとえば、アスピリンでは3日間休薬、チクロピジンでは5日間休薬、併用の場合は7日間休薬との指針を示したのです。

休薬基準の普及を目指して活動している北海道大学のグループは、JGES基準2005を基に、より実践的な休薬基準である「札幌コンセンサス」を作成し、日常診療に導入している(日本消化器内視鏡学会雑誌、52〔10〕、2979、2010)。第98回日本消化器病学会(2012年4月)での発表は、その妥当性を検証する前向き調査の中間報告で、約3000例の登録段階ですが、基準採用以降で出血例の明らかな増加はないことが示された。また、休薬を伴う内視鏡処置に関連した血栓症が2例認められたのみでした。「札幌コンセンサスは、現時点では妥当な休薬基準と考えられる」との結論を報告したのです。

抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン

新しい抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが平成24年7月26日公開の日本消化器内視鏡学会雑誌の52巻第7号に発表されました。このガイドラインは、日本消化器内視鏡学会,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”として作成されたものです。

従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであったとし、今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮し作成されたとのことです。
日本消化器内視鏡学会雑誌、54(7):2075-2102、2012

抗血栓薬の休薬基準が緩和内視鏡下生検やバルーン内視鏡も休薬せず可能に

新しいガイドラインでは、抗血栓薬を継続したままできる処置の範囲を広げ、内視鏡下生検や消化管ステント留置なども休薬せずに施行してよいとした。

ガイドラインでは、内視鏡処置の内容を出血リスクによって「観察」、「生検」、「出血低危険度」、「出血高危険度」の4段階に分類。処置ごとの抗血栓薬の休薬の必要性や、再開時期などを12項目の文章でまとめ、それぞれの推奨度を示した。

ガイドラインのポイントは、服用する抗血栓薬が1剤の場合、生検や出血低危険度の処置(バルーン内視鏡、消化管ステント留置など)は抗血栓薬を休薬せずに施行してもよいとした。2005年の指針では、生検や消化管ステント留置などでもアスピリンは3日、チエノピリジン系薬のチクロピジンは5日(両剤併用の場合は7日)、ワルファリンは3〜4日間休薬するとしていた。このため、内視鏡観察で生検が必要と判断された場合、いったん休薬した後に改めて生検を行う必要があった。以下はガイドラインの抜粋である。

内視鏡的粘膜生検は、アスピリン、アスピリン以外の抗血小板薬、抗凝固薬のいずれか1剤を服用している場合には休薬なく施行してもよい。ワルファリンの場合は、PT-INRが通常の治療域であることを確認して生検する。2剤以上を服用している場合には症例に応じて慎重に対応する。生検では、抗血栓薬服薬の有無にかかわらず一定の頻度で出血を合併する。生検を行った場合には、止血を確認して内視鏡を抜去する。止血が得られない場合には、止血処理を行う。

出血高危険度の消化器内視鏡において、血栓塞栓症の発症リスクが高いアスピリン単独服用者では休薬なく施行してもよい。血栓塞栓症の発症リスクが低い場合は3〜5日間の休薬を考慮する。

神経痛としびれのお薬

ビタミンB12(メコバラミン) 神経痛、末梢神経障害の治療に使用される。

ノイロトロピン 疼痛治療薬。

ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液で、下行性セロトニン神経を賦活化し、セトロニンの放出を促進を介し脊髄からの痛み情報を遮断する。痛覚の下行抑制系を賦活化機構によって鎮痛効果を発現。

テグレトール(カルバマゼピン)
「三叉神経痛、「後頭神経痛」などの神経痛の特効薬として、一番よく使われるお薬はテグレトールと言うお薬。この薬は「顔面けいれん」や「てんかん、複雑部分発作(精神運動発作、側頭葉てんかん)」のお薬として、また「認知症の方の不穏状態や攻撃性などの精神症状を改善する目的にも使われる。この薬は始め少量から開始して、期間を置いて、少しづつ飲む量を増やしてゆく。なぜなら、テグレトールは飲み始めの時期に血液中の薬剤濃度が少し上がることがあり(服薬開始後、1?2週間は一過性に血中濃度が上昇する)、そのせいでフラツキが出たりする人があるから。もしフラツキが出ても、しばらく様子をみていると、ほとんどの場合、慣れてフラツキは治ってくるので心配はない。なお、少量のお薬から始めるので、薬の量が増えて、効果が出るまでしばらく時間がかかる。それまであきらめずに飲む必要がある。テグレトールは約80%の方に有効。また、テグレトール服用中、体質により、希に湿疹の出る方がある。そんな場合は、服薬を中止して医師に相談すること。

テグレトールが使用できない場合は、アレビアチン(抗けいれん剤の項参照)が用いられるが、テグレトールより有効率はいくぶん低い。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) しびれの治療によく使われる。

頑固なしびれの治療には、以下の薬剤が有効で、よく使用される。
メキシチレン(抗不整脈薬)
抗けいれん剤
抗うつ薬など。

糖尿病性神経障害の痛みの治療
三環系抗うつ薬、メキシチール(メキシチレン)、カプサイシンを投与。
三環系抗うつ薬が有効でなかった患者や三環系抗うつ薬禁忌の患者に抗けいれん剤(バルプロム酸カルバマゼピン)を用いる。

メキシチール(メキシチレン) 頻脈性不整脈治療薬
糖尿病性神経障害のしびれ感、痛みの改善で健康保険適応を取得。作用機序はNa チャンネルの阻害による末梢神経活動の抑制。脊髄において痛覚伝達物質サブスタンス P の遊離抑制。中脳からのエンドルフィン遊離による痛覚下行性抑制系の賦活作用による。

アモキサン 第二世代の三環系抗うつ剤
しびれの治療に使われる。副作用としての抗コリン作用が少ない。ドーパミン受容体遮断作用を持つため、多量投与、高齢者の投与で錐体外路症状が出る可能性があり注意。 抗コリン作用:便秘、口渇、排尿困難

カプサイシン
唐辛子の辛味をもたらす主成分、軟膏として帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害などに用いられる。

アコニンサン錠(加工ブシ末)
非ステロイド系鎮痛薬で治療の困難な各種の疼痛に有効 麻薬性鎮痛薬モルヒネの鎮痛作用を増強することが報告されている。

有効性が期待される疼痛性疾患
   神経痛:帯状庖疹後神経痛、三叉神経痛、座骨神経痛

キネダック
アルドース還元酵素を特異的に阻害し、神経内ソルビトールの蓄積を抑制することにより、糖尿病性末梢神経障害における自覚症状および神経機能異常を改善する。
糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)の改善に。最近はあまり使用されない。

帯状疱疹後神経痛
けいしかじゅつぶとう
桂枝加朮附湯(漢方薬)が他の薬剤と併用でよく用いられる。

抗けいれん剤(てんかんの薬)

アレビアチン(フェニトイン)
発作性異常波が他の部位に伝播して行くのを防ぐ、抗けいれん剤としての使用以外に、顔面けいれん、神経痛の治療にも使用される。
有効血中濃度は10〜20μg/ml。
投与量と血中濃度は非直線的な関係にあるため、有効血中濃度の有効域上限付近あたりを超えると、投与量をわずかに増量しても血中濃度が急激に上昇するので注意が必要。
1日150〜350mgを服用する。半減期 20〜24時間。1日2回投与で十分。常用量で過度の傾眠や鎮静がない。副作用:眼振、小脳失調、複視、歯肉肥厚、多毛。

フェノバール(フェノバルビタール)脳のてんかん焦点からの異常放電の発射を抑制する。
半減期 50〜120時間 半減期が長いので1日1回投与で良い。眠気などの副作用を避けるため就寝前(服用後2〜3時間が最高血中濃度)が良い。
平衡状態に達するのに半減期の5倍、効果が発現するのに2〜3週間かかるし、中止しても効果がなくなるまでしばらくかかる。1日30-200mg。有効血中濃度は20-40μg/ml、投与量と血中濃度は直線的な関係にあり、体重1kgあたり2mg、副作用として眠気が多い。

テグレトール(カルバマゼピン)
脳内神経伝達物質GABAの濃度を高める。
抗けいれん剤としての使用以外に、三叉神経痛、顔面けいれんの治療、認知症における精神症状や、攻撃性の改善などにも使用される。
半減期 8〜15時間。服薬開始後1〜2週間は一過性に血中濃度が上昇するので、眠気、フラツキ感などの副作用が強く出る。しばらく服用していると慣れてくるので、漸増投与が必要。有効血中濃度4〜10μg/ml。副作用:発疹眠気、ふらつき。

デパケン(バルプロム酸)
抗けいれん剤としての使用以外に、片頭痛や、慢性頭痛の予防薬としても使用される。
服用後2時間で最高血中濃度に達する。半減期8〜15時間と短いため、やめればすぐ血中濃度が下がる。体重1kgあたり20〜30mg。半減期が短いため、1日400〜1200mgを通常剤は分3〜分4で使用する必要があり、デパケンR(徐放剤)は分2でよい。有効血中濃度50-100μg/ml。
あまり眠くならないことが多い。デパケンの副作用として血中アンモニアの上昇に注意。

リボトリール(クロナゼパム)
抗けいれん剤としての使用以外に、振戦など不随意運動の治療にも使用される。
眠気が出やすい薬なので、漸増投与が必要。
有効血中濃度0.005〜0.09μg/ml。半減期30時間。

エクゼグラン(ゾニサミド)1日200〜600mgを分2〜分3で使用。漸増投与で使用する。有効血中濃度18-22μg/ml半減期55〜70時間と長め。有効血中濃度に達するのに2週間かかる。

パーキンソン病の薬

パーキンソン病は脳内、黒質線条体で、神経伝達物質であるドーパミンが不足することによって起こる病気。ドーパミンの減少を補うことが症状の改善につながる。しかし、ドーパミン自体を直接、飲んで補給しても、ドーパミンが脳血流関門(脳によけいな物質が入らないようにしているバリヤーのようなもの)を通過しないため、脳の中に入って行かない。そこで、ドーパミンの一つ前の物質(前駆物質)であるL-ドーパ(レボドパ)を投与する。このL-ドーパはドーパミンの前駆体であり、脳血流関門を通過する性質がある。そこでL-ドーパを使用することにより脳血流関門を通過させ、これを脳内でドーパミンに変換させて効果を発揮させます。しかし、レボドパ単剤を投与すると、末梢のDOPA脱炭酸酵素により末梢でドーパミンに分解されてしまい、脳内への移行が極めて少量となり(90%は末梢において代謝され、脳内への移行は0.1%に過ぎない)。要するに、ほとんど脳に届かず、その効果が期待できない。そこで、脳内への十分な移行を得るため、末梢でのドーパミンへの変換を抑制する薬剤、すなわちドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(DCI、カルビドーパ)とレボドパの合剤を用いる。このDCIは脳血流関門を通過しないので、脳内でのL-ドーパからドーパミンの変換を阻害することはない。

レボドパ製剤 レボドパ、DCI合剤 カルビドパで10:1。
ネオドパストンなど。

ドーパミン製剤の長期投与における問題点

L-ドーパ製剤は長期間服用しているうちに効かなくなり、副作用も現れることが多い。
日内変動(wearing off現象)、on-off現象、すくみ足、ジスキネジア(異常運動)など。
Wearing off現象L-ドーパを飲んでも数時間たつと薬効が消えてしまう現象。
On-off現象:L-ドーパの服用時間に関係なく、症状が改善したり、悪化したりする現象、on時にはジスキネジアを伴うことが多い。

このため、日本のパーキンソン病治療ガイドラインでは、初期治療にはドーパミンと同じ作用を持つドパミンアゴニストを服用し、改善が不十分な場合に初めてL-ドーパ剤を追加する治療法が推奨されている。なお、年配の方への初期投与はドーパミン製剤から開始することとされている。

ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体D2刺激剤)
ドーパミン受容体を刺激して抗パーキンソン作用を示す。最近では、ドーパミンアゴニストで治療を開始し、L-ドーパの使用をできるだけ遅らせる方向にある。病気が進行してくるとドーパミンアゴニストだけでは症状を抑えることは困難になり、L-ドーパの併用が必要になってくる。しかしドーパミンアゴニストを併用することにより、L-ドーパの量を減らすことができる。

麦角系パーロデル(ブロモクリプチン)嘔気の副作用
カバサール(カベルゴリン)
ペルマックス(ペルゴリド)

しかし、麦角系には心臓弁膜症、心肺後腹膜線維症などの副作用があることが分かった。そこで、カベルゴリン、ペルゴリドは原則として第一選択薬とはせず、その他のアゴニストで治療を開始する。しかし、それらでは治療効果が不十分と考えられる場合にのみ使用する。もし、麦角系を使用する場合には、副作用の可能性を説明し、了解をとった上で投与を行うこと。そして、心臓エコーなどを含む定期チエックを6ヶ月〜1年ごとに実施することとされている。

非麦角系レキップ(ロピニロール)現在、主流の薬

抗コリン薬
アーテン
線状体内におけるドーパミンとアセチルコリンの不均衡を是正。
主に振戦に対する効果を期待して使用されることが多い。
抗コリン作用による副作用 便秘、口渇。

シンメトレル(塩酸アマンタジン)
ドーパミンの放出促進、再取り込み抑制、合成促進によるドーパミン作動ニューロンの活性を高める。意欲の改善などの効果もある。
A型インフルエンザ治療薬としても使用される。
副作用 幻覚、錯乱。

抗パーキンソン剤の急激な中止は悪性症候群を招来することがあり注意が必要。

ドプス(ドロキシドパ) ノルアドレナリンの減少を補い、ドーパミンを増加させ、すくみ足や歩行障害の改善効果がある。しかし、ドプスは主に、パーキンソン病にみられる起立性低血圧の改善の目的で使用されることが多い。

ジスキネジアに対する薬物
チアプリド(グラマリール) ドーパミン受容体遮断作用。
リスペリドン 錐体外路系副作用が少ない、抗ドーパミン、抗セロトニン作用。

認知症のお薬

アリセプト(塩酸ドネペジル)
アルツハイマー病患者の脳では、神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンが減少していることが知られています。アリセプトは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬という薬で、脳内にあるアセチルコリンの分解を抑制する薬です。その結果、脳内アセチルコリン濃度の上昇、すなわちアセチルコリンを増やして認知機能低下を改善します。アルツハイマー病の「根本的な治療薬」は現在のところありません。アリセプトは、認知症を治すのではなく、認知症の進行を遅らせる薬です。現在(2008年2月)、認知症に使える薬で唯一の薬です。

アリセプトを使用する際には、アセチルコリン阻害による末梢での嘔気、嘔吐、下痢などの副作用を避けるため少量、すなわち1日1回 3mgから投与を開始し、常用量5mgで使用します。重度の認知症には10mgまで使用できます。レビー小体型認知症ではアリセプトの効果が高いので、さらに少量から開始します。

抑肝散(漢方薬)
認知症の方にみられる記憶障害、見当識障害などを中核症状と言います。それ以外に、認知症の方には、幻覚、妄想、抑うつ、せん妄、興奮、攻撃的言動、徘徊などの多彩な精神症状や行動障害が認められることが多く、このような症状を周辺症状と言います。そして、この周辺症状である精神症状や行動障害をBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼びます。在宅の認知症高齢者の方の約80%には、何らかのBPSDがみられるとされ、認知症の程度が進行するにつれBPSDが多く出現するようになります。このBPSDは、家族を含めた介護者にとっては、しばしば大きな負担となり、ときには精神的あるいは肉体的にも疲れきってしまうしまうケースがよくみられます。このようなBPSDを抑える働きが注目されているのが、漢方薬の抑肝散で、特に、レビー小体型で著明な効果が報告されています。

抑肝散は、「GABAやセロトニンの低下によって引き起こされるBPSDに対して、セロトニンの合成促進あるいは遊離促進に働き、BPSDの発現を抑制していると考えられています。特に、漢方薬(抑肝散)は精神症状を抑えながら、しかも身体機能を上向きにするという特長があり、抗精神病薬とは異なる有用な効果が認められと言います。

レビー小体型認知症の治療には、アリセプトが使用されます。その際に、幻覚などの症状が改善しない場合がしばしばみられます。一方、レビー小体型では、抗精神病薬の使用は、症状の増悪、例えば、手足の震えなどを招く恐れがあり使えませんでした。東北大学の調査では、抑肝散を4週間服用したレビー小体型の患者15人のうち、12人の幻視が消失したと報告されています。また、重度のアルツハイマー病で起こる妄想や徘徊(はいかい)、暴力などの抑制にも、抑肝散の効果が注目されています。抑肝散には、大きな副作用はありませんが、漢方薬一般の副作用として、服用中に血中のカリウムが減少することがあり、定期的に血液検査を受けチエックしておく必要があります。 なお、漢方薬特有のにおいなどを嫌がったり、飲みにくい時は、とろみのある食べ物に混ぜたりすると服用しやすくなるようです。

その他、BPSDに使用される薬

せん妄グラマリール、リスパダール、セレネース、セロクエル(副作用 高血糖、糖尿病 禁忌)
暴力テグレトール デパケンR

グラマリール(塩酸チアブリド)
脳の中枢に働きかけ、精神症状や異常行動を抑える薬です。具体的には、攻撃的行為、精神興奮、徘徊(はいかい)、せん妄(せんもう)などの症状の改善の目的で使用されます。また、手足の震えや、口周辺の異常運動など、身体の異常な動きを抑えるためにも使用されます。副作用として、ジスキネジア(異常運動症)、パーキンソン症状が出現することがあります。

イチョウ葉エキスイチョウの葉にはフラボン、カテキンなど20種類以上の成分が含まれている。なかでもイチョウの葉に特有のギンコライドは、活性酸素の発生を抑え、脳虚血を防ぎ、神経細胞の死滅を防ぐ作用がある。認知症状を改善するとの臨床成績がドイツで多数得られている。

スタチン系薬剤(高脂血症治療剤)の服用は、アルツハイマー病の発症リスクを下げるとの報告がある。米国ロヨラ大学の研究では、スタチン系コレステロール低下剤を服用している患者のグループは、服用していないグループに比べ、アルツハイマー病にかかる確率が60〜70%低いことが分かったと報告している。

リウマチなどで抗炎症剤(非ステロイド系消炎鎮痛剤)を長期服用している人にアルツハイマー病が少ないという事実があり、炎症を抑える薬がアルツハイマー病の発病を予防する可能性がある。ドイツでの臨床試験では、これらの薬剤を2年以上、服用した場合、アルツハイマー病の発病率が最大80%減少するとの結果が報告されている。

めまい、ふらふら感の薬

脳循環改善剤
セロクラール(石酸イフェンプロジル)
主に脳血流改善作用を期待して用いられる薬剤であり、なかでも、後頭蓋窩(椎骨脳底動脈)領域の血流改善作用が顕著であることが証明されている。そこで、いわゆる椎骨脳底動脈血行不全あるいは慢性脳循環不全時における脳血流改善作用を期待して用いられる。また、併せて抗血小板作用を持つことが証明されており、抗血小板薬に劣らない脳梗塞の再発予防効果を有する。健康保険上は「脳梗塞後遺症によるめまい」となっているが、これは脳梗塞後の患者に起こる慢性脳循環不全症状、すなわちふらつき感を改善する薬剤である。

ケタス(イブジラスト)
プロスタサイクリン作用増強により脳循環を改善させる。抗血小板作用を併せ持つ薬剤。気管支喘息の適応も持っている。
低血圧、起立性血圧調節障害が関与している場合に使用される薬剤。

リズミック  ノルアドレナリンと競合して末梢の神経終末に取り込まれ、ノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制するとともに、神経終末においてノルアドレナリンの不活性化を抑制し、交感神経機能を亢進させ血圧を上昇させる。本態性低血圧、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善に使用される。

メトリジン選択的交感神経α1受容体直接刺激作用により心臓および脳血管系に作用することなく末梢血管を緊張・収縮させ、血圧上昇作用を示し、起立時の血圧低下を抑制。中枢への影響はなく、また正常血圧に影響を及ぼさない。本態性低血圧、起立性低血圧の治療に用いられる。

その他、ドプス(パーキンソン病の薬の項参照)、エホチール、フロリネフ(重症低血圧の場合)が使用される。

めまいの薬
二重盲検法で有効性が証明されている薬剤メリスロン、セファドール
めまいの治療に、以上の2剤が最もよく使われている。いずれも、椎骨動脈や内耳動脈の血流を改善させる効果のある薬剤である。

興味深いことに、耳性 めまいの治療に もっともよく使われるのは循環改善薬で、実際に有効な場合が多い。内耳に血液を供給している動脈は、脳 (小脳、脳幹) に血液を運ぶ動脈から枝分かれしたものであり、内耳の血流を改善することが、めまいの改善につながっている可能性が示唆される。また、これまで抗めまい剤として数多くの薬剤が発売されてきたが、そのなかで、効果があるとして残ってきた薬剤、すなわち現在、最もよく使用されている抗めまい剤は、いずれも循環改善作用を持つ薬剤であることを考えると、さらに興味深い。

メリスロン
メリスロンは内耳血管の血流増加・内リンパ水腫改善・内頸動脈の血流量増加の作用があり、めまいを改善する。

セファドール
迷路機能のアンバランスの改善・椎骨脳底動脈の血流量増加の作用があり、めまいを改善する。

ドグマチール(スルピリド)
一般に、うつ病の薬と認識されている薬剤であるが、もともと、フランスで1967年胃微小循環改善させる胃潰瘍治療剤として開発された経緯がある。成書をひもとくと、当時、京大 二木先生のところに藤沢製薬から、この薬は、フランスでは抗めまい剤として一番の売れ筋なので、とのことにて、めまいに対する治験の依頼があったとの記載がある。その後、胃薬として売り出された。そもそも海外では「抗めまい剤」として使われているので、なんらかの中枢性の効めまい作用があるものと推測される。
副作用:プロラクチン濃度の上昇、生理不順、乳汁分泌、パーキンソン症状
なぜか添付文書の副作用欄に「めまいがでることがある」なんて書いてあるが、そんなことはない。

イチョウ葉エキス
成書をひもとくと、ずいぶん以前のことであるが、東京医大 高橋教授によると、老人の頑固なふらつきに効くとのことにて、二木先生が試しに使用してみたところ、ふらつきの改善率は53%とかなりの効果がみられたとの記載がある。ドイツでは認知症改善薬として健康保険適応とのこと。日本では健康保険が使えない薬。

メイロン(7%重曹)注射剤
赤血球凝集抑制、血液粘調度の低下、CO²による血管拡張作用により血流増加作用。内耳血流増加作用があり、よく使われている。

アデホス(ATP)
脳や内耳の血流量を増やし、エネルギー代謝を活発にします。メニエール病や内耳障害によるめまいに使用される。副作用は、ほとんどない。

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